燕が飛んだら【第1回】
銀色の屋根
パンプスをスニーカーに履き替え、予め必要なものすべてを詰め込んだリュックを担いで私は急いでいる。
休日の渋滞をジリジリと抜け、ようやく到着したシャトルバスを降りると、早歩きで銀色に膨らんだ屋根を目指した。
時刻は13時50分、試合開始まであと10分。
駆け出したい気持ちを抑え、バス乗り場から入場ゲートへ続く通路の途中に建つトイレに入る。誰もいない洗面台の大きな鏡の前で素早く上着を脱ぎ、リュックの中から白地に赤の縦縞が入ったレプリカユニフォームを引っ張り出し、第1、第2ボタンを開けて勢いよく頭からかぶった。鏡に映る自分を見ながら「YS」の白いロゴの刺繍が入ったネイビーのキャップのブリムの角度を直し、前髪の位置をササッと整えて、トイレを飛び出した。
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【エッセイ】燕が飛んだら
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2018年6月17日。歴史的大敗で前年最下位だったチームがタイトルに挑む日の、私的ドキュメント。 遠方だったり家庭の事情だったりと、気軽に…
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