LIVE 中山うり×浜田真理子 at 自由学園明日館 講堂 2023.1.28.
1部は中山うりバンド、2部は浜田真理子、アンコールでセッションというのがこの日の構成だった。
中山うりさんのライヴは初めて。真理子さんのラジオで聴いたライヴ音源などから、好みの音だとわかっていたので楽しみにしていたが、期待を上回る歌、曲、演奏だった。「茶をすする」「石神井川であいましょう」「青春おじいさん」など、曲のタイトルも独特で面白く、本格的に聴いてみたいと思う。
さて、セッションはあるものと思っていたが、驚いたのは浜田真理子のソロパートの、何と半分以上が、中山うりバンドのメンバーそれぞれを招いての共演だったことだ。もちろん、これはネガティヴな感想ではない。すべてにおいて楽曲と楽器のマッチングが素晴らしく、聴き応えがあるものだったからだ。
■浜田真理子 wit 橋本歩
橋本さんは水谷浩章さんのphonolite stringsのメンバーだったので、僕は2015年に新宿PIT INNと島根県民会館で真理子さんとの共演を観ている。でも、こうした二人のガチは初体験。演奏されたのは、そのphonolite stringsをバックにレコーディングされた「ミシン」。妖しさに溢れた作品化テイクとは異なる、一緒に歌っているようなチェロが素敵なヴァージョンだった。これまで様々なアレンジで披露されてきた「ミシン」に、ここに来てまた新たな顔がひとつ加えられたと思う。
■浜田真理子 with 江藤有希
雄弁な江藤さんのヴァイオリンが美しかった「哀しみのソレアード」。何の仕掛けもないど真ん中直球のアレンジとはいえ、だからこそ楽曲と演奏が際立っていたし、初めてのセッションとは思えない二人の音を聴いて、まるでここだけがクラシックのコンサートに来ているような気さえした。
■浜田真理子 with 安宅浩司
安宅さんのペダルスティールをバックに「You don't know me」。ヴォーカルとピアノの中を泳いでいるような響きが実に心地よかった。演奏後、真理子さんの “ 気持ちいい!” は心からの本音だろう。
■浜田真理子 with 中山うり & 中山うりバンド
懐かしい曲なので、皆さん絶対に知っている
本当なら一緒に歌って欲しい
このMCのあとに真理子さんの口から出たタイトルは「黒ネコのタンゴ」。もちろん僕も知っている曲だ。ただ、音楽…楽曲としてよりも先に、皆川おさむの姿と歌声が瞬時に僕のアタマには浮かんだ。お客さんにも同じような方々は少なくなかったに違いない。実際、曲のタイトルが紹介されたときには、客席が笑い声で沸いたし。
しかし、浜田真理子と中山うりバンドは、当たり前だが「黒ネコのタンゴ」をひとつの曲として演奏した。凄かった。僕はこの曲を知っていると思っていたが、実は何にも知らなかったことを思い知らされた。何という名曲なのか。名曲を名曲として提示することができる5人。一緒に歌うどころか、目の前の演奏に引き込まれ、聴き惚れるだけだった。「Chat Noir」というインストをイントロ的につけていたのも真理子さんらしい。これも名曲度を高めるのに効いていて、とてもしゃれていた。
アンコール。
浜田真理子と中山うりの「夢の中で泣いた」をじっくり聴かせ、最後は全員による「生活の柄」で締めくくられた。終わったあとには笑顔しか残らない素敵なライヴだった。
ありがとう、まりうり。<2023-02-07 記>