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夜会 工場 VOL.2 中島みゆき Bunkamura オーチャードホール 2018.01.30.
簡単に言えばこれまで行われた夜会のダイジェストである。ファンは実際に観たシーン、観たかったシーンの両方を線でなく点で体験できる。当然、特定のテーマのもとで行なわれないので、まとまりには欠ける。しかし、目の前で披露されるのは夜会の代表的な場面である。それらをチョイスして構成されるコンサートが、見応えのないものなわけがない。
それぞれのシーンは、もちろん当時のものではない。今の中島みゆきを通すことで、新しく生まれ変わっている。それらがひとつになって、新しい夜会となって提示される。タイトルにある " 工場 " とはうまく言ったものだ。まさに夜会を作りあげる工場である。
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全体を通して線で追う必要がないので、ストーリーに沿っての楽曲ではなく、単に曲そのものを堪能できるのがいい。夜会の曲ではあるが、そこを離れて響くそれらの表情はまた違ったものである。後に作品として発表され、アルバムの中の曲として聴くのも味わいがあって好きであるが、こうしたステージで触れるのも、やはりいいものである。楽曲の持つ魅力をあらためて感じさせてくれるのも、夜会工場ならではだろう。
VOL.1では「さよならの鐘」と「泣かないでアマテラス」に心ふるわされた。今回のVOL.2でも、やはり同様に心うごかされた曲があった。第2幕の第6場。今回の実質的なクライマックスに歌われたこともあったのか、あらためて心に沁み入るメロディであると認識。恥ずかしながら、その場では号泣に近かった。しかし、最高に心地よい体験であったのも事実である。
VOL.1の反省点を活かしたというわかりやすくなった構成も見事。いつの夜会のシーンがステージで披露されているのかを把握できるということだけで、こんなにも集中して入り込めるとは思わなかった。お客さん目線で考えられたこの仕掛けは素晴らしいと思う。
夜会工場は、夜会の凄さをあらためて考える機会になっているのは間違いない。しかし、まずは何よりも彼女の音楽である。数々の名曲たちは、実にカッコよく、瑞々しく、澄んでいて美しい。<2018-02-04 記>