PATTI SMITH AND HER BAND JAPAN TOUR 2013 Bunkamuraオーチャードホール 2013.01.24.
前日のSHIBUYA-AXから一転してホールでのライヴ。AXではライヴハウスならではの開放的な空間でパティとバンドの音に包まれたわけだが、会場の割には、所謂ロック色は決して強くはないものだった。それを物足りなく感じたかというとそんなことはなかったが…。
オープニングが「April」というのは、おそらくJAPAN TOUR共通だろう。その軽やかな演奏と彼女のステップはオーチャードホールに似合っていた。これだけのホールを包み込む音楽を奏でるのに 『BANGA』 の曲は実に相応しい。
※追記
何と1/24の名古屋、1曲目は「Ask The Angels」だって! つい先日、この曲をライヴで聴きたいなぁ…とツイートしたばかり! 名古屋のファンが羨ましい!
ところで、初日の仙台公演のセット・リストも確認できたのだが、これまでの3日間ともメニューを変えている。それぞれの日のみの演奏というのが、本編で最低でも1曲ある。仙台のみは「Distant Fingers」と「We Three」。
AXのみは「Free Money」。オーチャードホールのみは「Kimberly」「Mosaic」「My Blakean Year」。こんな具合だから、今後も変えてくるだろう。どんな曲が選ばれるのかが楽しみである。
前半から中盤までに演奏された曲にアップ・テンポはほとんどなく、それに伴いシャウト系やアジ系のヴォーカル曲もない。AXのメニューとガラッと変えてきたこともあり、「Fuji-san」さえも、前日の迫力とは違いじっくりと聴かせる演奏に感じたほど。特に印象的だったのが「My Blakean Year」だ。おそらく即興で曲にしたであろうマイナーのワンコードで、仙台への想いを弾き語った後にこの曲に繋げた。ここは個人的ハイライトだった。こういったことも、ホールという会場に合わせたのだろうか、“ 祈り・慈愛 “ というテーマを強く感じた本編だった。
だからといってこの展開を物足りないなんてことは思わず、それどころか僕自身は圧倒されていた。大きな音量や曲調や演奏や速いテンポなどだけが、激しさや強さを感じさせるわけではないのだ。
AXではアンコールだった「Banga」から「People Have The Power」。この流れが本編で出てきた時点で、ライヴの終了が近いということを理解しながらも、そして目の前で展開されているシーンを楽しみながらも、僕のココロは新たな期待に満たされていた。
この後に何が来るのか…を想像すると自然に顔がほころぶし、この後に何が来ても…を思えば自然と身体が熱くなってくる。はたして…。
終了後に確認できたセット・リストには「Land」とあったが、実際に演奏されたのは「Rock’n’Roll Nigger」だった。
どういうことだったのだろう。その場で急遽、変更したのだろうか。いやいや、理由なんてわからなくてもいい。結果としてこの曲からメドレー。「Gloria」に繋げるという大興奮のアンコールとなった。さっきまでの本編のあの雰囲気は、いったい何だったのだ。まるで違う2ステージを観ているかのようだった。
アンコールでの演奏前、演奏中、演奏後に彼女がどんなことを叫んでいたのかは、僕は後から知ることになったのだが、それは個人的にはあまり重要ではない。実際のその場での僕は、強烈にアジテートする彼女の姿にココロが震えていた。黒のストラトキャスターを背負いストロークする彼女の姿に熱く興奮していた。そして何よりパティ・スミス・バンドと一緒に、ライヴで “ Outside of society! “ と歌い叫べたことの、実にロック的な高揚感は、理屈抜きで最高の個人的体験となった。
途中でアンプのトラブルがあったのだけれど、それもパンクらしいとも言え、ラフなセッションの演出のひとつになっていたと思う。しかし、「Gloria」の後に一瞬「My Generation」になだれ込むんじゃないかと錯覚したよ。そうなったら凄かったのに…。
クライマックスは、ストラトの弦を1本ずつ引きちぎっていくシーン。このパフォーマンスは以前の来日公演でも見せたようだ。その際には「この1本は平和のため、この1本は恐怖に打ち勝つため」とメッセージしたそうだが、この日も同じだったのかもしれない。初めて目の当たりにしたそのシーンは強烈でインパクト十分であり、しかも目の前でやっているのがパティ・スミスであるという事実に感動した。
軽やかに始まり、激しく締めくくられた僕のパティ・スミスが終わった。2013年1月の、東京は渋谷での2日間は忘れることはないだろう。ありがとう。<2013-01-26 記>
p.s.
ライヴ中、ステージ上のパティと握手。そしてレニー・ケイにピックをもらった(終了後にも違うピックも!)。記念になるし、もちろん宝物だ。
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