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PATTI SMITH AND HER BAND JAPAN TOUR 2013 SHIBUYA-AX 2013.01.23.

この日の3日前にトーク&サイン会を体験していたとはいえ、やはりライヴとなるとわけが違う。朝からドキドキで、仕事どころではなかったというのが本音だ。

まずは開演前にロビーでグッズを購入。Tシャツを2種類入手した。そして募金。一口250円で何口でも可。募金すると番号がもらえ、何と抽選でサイン入りのドラムスキンがもらえる。

おそらく当日券がかなり伸びたのだと思う。SHIBUYA-AXはたくさんのお客さんで埋まった。開演前BGMのレゲエが心地よい。赤の照明で照らされたステージを眺めているだけでわくわくしてくる。ほぼ定刻で開演。

何の演出も無く、ふらっとメンバーがステージに登場する。『BANGA』 からの「April」で軽やかに僕のパティ・スミスは始まった。

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3枚のアルバムの話をする。まずは最新作である 『BANGA』 。もちろん彼女のアルバム中、今はいちばんよく聴いているのがこれだ。これは本当に素晴らしい作品で、2012年個人的ベスト1になっている。「Fuji-san」の力強い迫力の演奏と「This Is The Girl」の美しさは、『BANGA』のツアーであることを強烈に印象づける。

次に、いちばんのお気に入りである 『TRAMPIN'』 。個人的に、とても愛を感じるアルバムだ。トーク&サイン会で歌ってくれた「My Blakean Year」は嬉しかったし、今回のツアーでは「Mother Rose」や「Peaceable Kingdom」を聴きたいと思った。実際にこの日は「Peaceable Kingdom」を演ってくれた。何という美しい演奏と歌だっただろう。

最後に、好き嫌いをこえていちばん思い入れがあるアルバム。僕がパティ・スミスを知り、興味を持ち、初めて手に入れたレコードであり、間違いなく彼女のアルバムで聴いた回数はいちばんだろう 『EASTER』 がそれだ。ただし、今はアルバム単位で聴くことはほとんどない。飽きたということでは、もちろんない。わざわざ聴かなくてもアタマの中で鳴らすことができるということもあるし、変な表現になるが、色々な意味で自分はもう『EASTER』を卒業しているのだと思う。「Because The Night」も、聴くだけでなくバンドでも演ったし、イントロは俯くほど泣けるし、ギター・ソロは震えるほど大好きだし…なのだが、今の僕は、特に必要としている曲ではなくなっている。あぁ、それなのに…。

中盤で「Ghost Dance」が歌われた。イントロのギターから持っていかれた。泣かすような、泣けるような曲ではないのだが…泣いた。35年間が経過した今の自分にある何かと、35年前に自分にあった何かが弾けたのだろう。We Shall Live Againのリフレインが今も頭を離れない。

そしてそして…あの哀しいイントロのピアノが聴こえた瞬間に、またもや頭の中が混乱する。自分の中のパティ・スミスが何かをわかっていたつもりだったが、それは自分が思っていたものとは違っていたようだ。「Because The Night」はとても大切な曲だったのである。ちなみに今のライヴ・アレンジは、最初のサビの後に4小節のブレイクがあるのだが、これがとてもいい。これがあるだけで曲の感動が何倍にもなる。

実に感動的なライヴであったと思うが、それに加え、僕にとっては個人的な想いをあらためて知ることができたライヴでもあった。

2013年の今、日本に来てメッセージを発し、優しく、そして力強く励まし、素晴らしい新曲と、素晴らしい過去の名曲をもって楽しませ、喜ばし、感動させてくれる。そんな彼女の音楽と、自分の35年間の想いを重ね合わせることができた。本当に幸せな渋谷の2時間だった。<2013-01-26 記>

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