SONGS & FRIENDS 佐野元春 Café Bohemia 渋谷公会堂 2020.02.08.
終盤で登場した佐野元春がこの夜を指して、独立したミュージシャンがひとつのテーマのもとに連携することが素敵だと説き、そしてそれを自分が思い描いたカフェ・ボヘミアの世界であると言わなければ、SONGS and FRIENDS 佐野元春『Café Bohemia』を冠したライヴであることを、その時点の僕は忘れていたように思う。それほど僕にとってはひとつのアルバム再現ライヴを超えた時間だったのだろう。
荒井由実『ひこうき雲』、小坂忠『ほうろう』に続いて、武部聡志が取りあげたのが佐野元春、しかも『Café Bohemia』。正直、意外なチョイスだったが、前回の『ほうろう』ライヴを振り返れば、期待していて間違いないだろう…の思いは当たった。
オープニングのGLIM SPANKYが「STRANGE DAYS -奇妙な日々-」。そして「Happy Man」を続けた瞬間、楽しい夜になることを確信。『Café Bohemia』以外の曲もカヴァーされることがわかったからだ。これで一気に期待が高まったのは言うまでもない。
基本的な構成は『Café Bohemia』収録曲ともう1曲を出演者ごとに演奏する。その選曲は元春自身が各々にリクエストしたように伝えられているが、結果的に選ばれた曲はバラエティに富み、ややマニアックな佐野元春ベスト盤的セット・リストになっていた。
HOBO KING BANDに武部聡が加わったハウス・バンドは、カフェ・ボヘミア・グランド・ロッケストラと名付けられたらしい。このバンドによるオリジナルに沿ったアレンジをもとに、各出演者の個性が反映された演奏は、元春のオリジナル・ヴァージョンの素晴らしさを引き出していたと同時に、出演者各々の魅力もしっかりと伝わってきて素晴らしいと思った。
そんな中、ファンとしての気持ちを隠さずに、ステージに立つ喜びを全開にしていた山中さわおのロックン・ロールと、対照的に独自性が光る演奏の山口洋、LOVE PSYCHEDELICOが印象的だったが、この夜の白眉はRHYMESTERだっただろう。バンドではなく彼らだけでプレイされた「COMPLICATION SHAKEDOWN」。あのリフに乗って放たれるあの言葉たちは、レコードやCDでしか聴けないと思っていたが、こうしてライヴで体験できるとは!
気分があがった…とか、興奮させられた…とか陳腐な形容しかできないが、これが僕からの最大限の称賛だ。曲の瑞々しさは変わらず、2020年の今でも新しく思えることに感動した。同時に、この曲に感じたこの思いこそ、あの夜に僕が感じたことのような気がする。
瑞々しさは変わらず、今でも新しい。
これが佐野元春なのかもしれない。<2020-02-11 記>
<2020.2.8 「SONGS & FRIENDS 佐野元春 Café Bohemia」セットリスト>
ストレンジ・デイズ -GLIM SPANKY
ハッピーマン -GLIM SPANKY
月と専制君主 -田中和将(GRAPEVINE)
ジャスミンガール -田中和将(GRAPEVINE)
ワイルド・ハーツ -山中さわお(the pillows)
スターダスト・キッズ -山中さわお(the pillows)
コンプリケーション・シェイクダウン -RHYMESTER
ロックンロール・ハート -小坂忠
君を連れてゆく -山口洋 & 小坂忠
ニュー・エイジ -山口洋
彼女が自由におどる時 -LOVE PSYCHEDELICO
虹をおいかけて -LOVE PSYCHEDELICO
シーズン・イン・ザ・サン -堂島孝平
レインボウ・イン・マイ・ソウル -堂島孝平
ガラスのジェネレーション -中村一義
クリスマス・タイム・イン・ブルー -中村一義
99ブルース -佐野元春
インディビデュアリスト -佐野元春
ヤングブラッズ -佐野元春
カフェ・ボヘミアのテーマ -カフェ・ボヘミア・グランド・ロッケストラ
(アンコール)
約束の橋 -佐野元春 & ALL CAST
◆オフィシャルサイトから引用
100年後も聴き続けてほしいアルバムを完全再現する
一夜限りのプレミアムコンサート待望の第3弾
名作よ、世代も時代も、超えてゆけ。武部聡志がプロデュースする一夜限りのコンサート「SONGS&FRIENDS」。今も愛され続ける数々の音楽の名盤は、まさに「100年後も聴き続けてほしいアルバム」。その音楽の“遺伝子”を受け継ぐ様々なアーティストたちが、世代も時代もこえて、それぞれの解釈で名盤を完全再現するプレミアムコンサートです。待望の第3弾としてフィーチャーするアルバムは、1986年発売 佐野元春の名盤『Café Bohemia』。ロックスターとして長きにわたり愛され続け、2020年に活動40周年を迎える佐野元春と、彼にルーツを持つ様々なアーティストが集います。
Artist
佐野元春
GLIM SPANKY
小坂忠
田中和将(GRAPEVINE)
堂島孝平
中村一義
山口洋(HEATWAVE)
山中さわお(the pillows)
RHYMESTER
LOVE PSYCHEDELICO ※50音順
THE HOBO KING BAND
古田たかし(Dr) / 井上富雄(B)/ Dr.kyOn(Key)/ 長田進(G)/
山本拓夫(Sax)/ 西村浩二(Trp)/ 佐々木久美(Cho)/ TIGER(Cho)
サウンドプロデュース
Dr.kyOn
演出・プロデュース
松任谷正隆
武部聡志
Comment
SONGS&FRIENDS、第3弾は佐野元春『Café Bohemia』です。この企画は日本のPops史を語る上で欠かせない、それ以降の音楽を変えたであろうと思われるアルバムをピックアップして、その収録曲の全曲を本人のパフォーマンスやベストアーティストの解釈によりお送りする夢のようなショーです。今回の『Café Bohemia』がリリースされた1986年当時、僕自身は佐野さんとは出会っていませんでしたが、アルバム毎に実験、冒険を繰り返している彼からとても刺激を受けていた事を思い出します。このアルバムは世界的な音楽的傾向を取り入れつつ、常に問題意識をメッセージとして発信している佐野元春が、それまで以上に、のびのびとパフォーマンスしている作品だと感じています。特にこのアルバムでは、バックバンドであったHEARTLANDが演奏を担当しており、彼らが敬愛するソウルミュージック、R&B、ロックンロールなど多彩なサウンドが楽しめ、佐野元春をボーカリストとしたバンドの作品の様な仕上がりです。今回このショーのバッキングを努めるのは、佐野元春の盟友でもあるTHE HOBO KING BAND。佐野元春に影響を受け、リスペクトしている音楽のジャンルや世代を越えたアーティストが集い、一夜限りの奇跡のセッションが行われます。“Café Bohemia”という架空の空間が渋谷に姿を現すのを楽しみにしています。
武部聡志
日 時 2020年2月8日(土) 開場17:15 / 開演18:00
会 場 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
チケットSS席 12,000円 / S席 9,000円 / 学生席 5,000円 (全席指定・税込)
問い合わせ DISK GARAGE 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)
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