お寺でSinger Song Marimba 新谷祥子 Fly Me To The Moon 八王子市龍見寺 2018.07.01.
この時期に龍見寺に来ると、夏が始まったなぁと感じる。今年で4回目。僕にとって夏の入口になる恒例のライヴになった。
バス停からお寺までの道に感じる灼熱の暑さも、いざ会場に着くと心地よくなるような気がする。それだけ僕の中の期待が高まっているのだろうし、毎年、新谷さんはそれに応えてくれているのだが、今年は期待以上と言うことを超えて、もう去年までとはまったく違うものを体験させてくれた。
こんにちは~と扉を開けて入る。受付を済ますと、冷房が効いた畳の広間に通される。テーブルと座布団。用意された飲み物でライヴ前とは思えない寛ぎの時間を過ごす。そして開場時間になるとお寺のステージへ。どどーんとマリンバが中央に置かれているのはお馴染みだが、今年はパーカッションのセットも並ぶので、迫力が違う。これだけでいやがうえにも期待が高まった。さっきまでのリラックスした感覚から、気が引き締まる瞬間だ。こうした開演前とまるで異なる雰囲気を楽しめるのもここならではである。
更に、昨年に続いて山寺紀康さんがPAを務めるので、お寺であることを忘れる音響で楽しむことが出来た。加工され特別に作られた音ではなく、自然に鳴っていたのが素晴らしい。1年前とまた同じことを書く。下手なライヴハウスよりもいい音だった。
今年のテーマは月。夏の昼間には似合わないが、かえってそれが独特の魅力を醸し出す。演奏されたのはオリジナルはもちろん、クラシックやロック、唱歌などのカヴァー。ごちゃまぜのジャンルだが、新谷さんのマリンバ弾き歌いを通すことで統一感を持ち、新谷祥子と言う一本の柱となって僕たちの耳に届けられる。さらに今回はクリストファーハーディのパーカッションと、君塚仁子のオカリナが色を添えるのである。無敵だろう。
三人の演奏は、屋内なのだがまるで野外で聴いているような解放感があった。その理由は、各々のミュージシャンとしての力量は当然なのだが、新谷さん、そしてハーディさんと君塚さんに共通する笑顔である。
音楽と笑顔って、何でこんなに似あうんだろう
あの場にあったあらゆるモノを楽しんでいたであろう三人をみれば、誰だって幸せな気持ちになると思うし、実際に幸福感に満たされた時間だった。休憩を挟んで2時間ほどの短い時間だったけれど、音楽を聴くことの素敵さを存分に味わうことが出来た。
マリンバとオカリナのデュオで演ったベートーヴェンの「月光」では、二つの楽器音が途切れた瞬間を待っていたかのように鳥が鳴いた。都会の月をイメージしたという仲井戸麗市「月夜のハイウェイドライブ」は、マリンバでの弾き語りに実に似合う名曲になった。月は出てこないけれど…と歌われたRCサクセションの「スローバラード」は、ハーディさんのパーカッションが加わったことで、シンプルながらも、きっと月が出ていたであろう情景が浮かぶ演奏が素晴らしかった。井上陽水の「東へ西へ」は唯一ハードなモードで聴きごたえ抜群。かっこいい。
龍見寺ならではのライヴだったと思う。でも、僕はこの三人をまた観たい。そして、今回の限られた人たちだけでなく、もっとたくさんの人に体験してもらいたいと思った。ぜひ、またどこかで。<2018-07-03 記>
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