新谷祥子シンガーソング マリンバ 共演/神谷満実子(ソプラノ) スペシャルゲスト/林英哲(太鼓) 六本木STB139 2011.08.30.
楽しみにしていたライヴだった。その理由は、単に僕がファンである新谷祥子のライヴということだけでなく、太鼓の林英哲さんとの共演だったからだ。だって、チャボと新谷さんのデュエットが実現したきっかけが、林さんのライヴを観に行ったチャボが、そこで演奏していた新谷さんにひとめ惚れ…ということなので、それはいったいどういうライヴだったのだろうと、ずっと気になっていたのだ。
ライヴ前の予想は、新谷さんのオリジナルを二人で、または三人のアレンジで聴かせてくれる…だったけれど、結果は、新谷さん自身がこの三人で演りたい曲を思う存分に披露する…というものだった。
ライヴは新谷さんのソロ、弾き語りのパートでスタート。この第一部はサンタナの「哀愁のヨーロッパ」で始まり「レット・イット・ビー」でしめる。オリジナルは「小さき者へ」が演奏されたが、CDとはアレンジが変えられていて新鮮。好きな曲なので、個人的には嬉しかった。
ちなみに、渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」なんて曲も演奏されたのだけれど、新谷さんのライヴの魅力は、こんな選曲にもある。だって、例えばお客さんは何を聴きたいだろう…と考えたとする。そこで「かもめが翔んだ日」は、なかなか出てこないよ(笑)。
要するに、彼女自身がマリンバの弾き語りで歌いたい曲、歌ってみたい曲を選ぶ。その結果、良い意味でジャンルを超えたカヴァー曲が披露されることになる。しかも、彼女は決してマニアックな曲を選ばず、誰もが知っている直球曲が多い。ギターやピアノの弾き語りなら、それらのカヴァーはありふれていて面白く無いだろう。でも、マリンバの弾き語りなのである。だから聴いていて楽しめるし、曲の新しい魅力を発見できたりもするのだ。
さて、最初のゲストはソプラノの神谷満実子さん。過去に武満徹の曲をマリンバの伴奏で歌うコンサートで共演したということだ。今回もそのときに演奏したのだろう曲を披露してくれた。また、今秋に発表される新谷祥子2ndアルバムに収録されている「紅カラス」を二人で。これがまた素敵でカッコ良かった。
それにしても、ソプラノの声という楽器の凄さを目の前で聴いたのは初めて。マリンバに乗った神谷さんの歌が表現する世界は、何とも言えない独特なものだなぁ。
そして休憩を挟み、いよいよ林さんとの共演が始まる。
新谷&林セッションは、「おにあそびのうた」と「冴えた月の下で」でスタート。特に、新谷さんも " この曲を一緒に演りたかった " と話した「おにあそびのうた」は圧巻。本当に凄かった。実際に " この曲を演れたので、後はもういいくらい " とMCしていたほどで、そういった思い入れも演奏にハッキリと出ていたと思う。更に言えば、音はもちろん、二人は視覚的にもカッコ良かった。
林さんのスローでじっくりと聴かせる「太鼓打つ子ら」という曲も聴きものだった。また、おそらく僕は南青山MANDALAでチャボと共演した時以来になる「牧歌~Rainy Day」も、林さんとの演奏で聴けたことも嬉しかった。
とにかく、この三人の組み合わせでは、どんな曲が演奏されても、今まで聴いたことがない音が飛び出してくるし、見た事が無い演奏シーンがステージで繰り広げられるわけで、見応え、聴き応えが抜群のライヴだった。
そして " 叩く " と " 歌う " 。これしか無いのも凄いと思った。これだけなのに、マーシャル三段積みでぶちかまされるエレキ・ギターよりも、パワフルで大きくヘヴィな音だったように思う。マリンバと太鼓の音は、本能的な何かに訴えてくるものがあるような気がする。
チャボが観たライヴとは、もちろん今夜は大きく違っていただろう。でも、こんなものを観たら、そりゃチャボもぶっ飛ぶだろうな…ということが、多少なりとも理解できたように思う。
次は、今夜を経ての秋。2ndアルバム発売に伴うレコ発ライヴだ。これまた今から楽しみである。<2011-08-31 記>
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