二人のJammin’ 2007 吉祥寺Planet K 2007.12.09.
" 日本の好きなギタリストは? " と尋ねられたら、間違いなく仲井戸麗市と下山淳の名を挙げる。" 他には? " と訊かれたら、迷わず田中一郎と答える。
必死でそのプレイをコピーしたギタリストは洋邦問わずたくさんいるけれど、バンド単位で言えば、おそらくRCサクセションやROOSTERZを抑えるのがARBになるだろう。一時期、一郎のギターを本当に練習したものだ。
デビューから1983年までの初期(というか、個人的にはARB全盛期)に在籍したギタリストであり、コンポーザーであり、音楽的なリーダーでもあったのが、田中一郎だ。今では元ARBよりも、もしかしたら甲斐バンドの元メンバーと言ったほうが知られているかもしれない。あと、元イカ天の審査員だな。
ARB脱退後に甲斐バンドでギターを弾く一郎もカッコ良かったが、やはりARBでの姿がそのプレイも含めて強烈。80年代から今日まで彼が日本のロック界に残したものは決して小さいものでは無いだろうし、間違いなく日本を代表するロック・ギタリストだと思っている。
そうは言っても僕自身はARBと甲斐バンドでギターを弾く彼しか観ておらず、ソロになってからは一度もライヴに足を運んだ事はなかった。現在の一郎は、元スライダーズのジェームスをベースに迎えた3ピース・バンドで活動している。一郎とジェームスが一緒にバンドを組む…しかもARBナンバーを演るなんて! そんなこともあって、ここ最近は観たい聴きたい気持ちが盛り上がってきていた。
武道館での清志郎の感動が冷めぬままの12月9日。吉祥寺へ向かった。Planet Kというライヴハウス。今日はここで田中一郎バンドと斎藤光浩バンドの共演があるのだ。実はこのライヴ、一郎を観たいと盛り上がってきた僕にとっては最高のカップリングなのです。
斎藤光浩。在籍期間は短かったが、田中一郎が脱退した後のARBでギタリストを務めたのが彼だ。ARB以前はBOW WOWのメンバーというハードロック畑のギタリストであったため、加入時はファンとして不安な気持ちが先行したが、いやいやどうして彼がいた頃のARBも素晴らしかった。ハードロックと言うよりもロックン・ロール寄りであり、ロックン・ロールと言うよりもハードロック寄りである…という光浩のギターを武器にしたARBを言葉で表現すれば、「ただ突っ走るだけでなく緩急がつき、モノクロームなだけでなく色が着き…」といった風だっただろうか。もちろん光浩期のARBの曲も、たくさんコピーしたのは言うまでも無い。
ARBを支えた二人の大好きなギタリストの共演となれば、これは観に行くしか無いだろう。ただ、最近の活動は知っていても、その作品を聴くまでには至っていないので、とにかく今の二人の音を肌で感じてこようと思った。
会場に入る。狭いステージには3ピース用のセッティング。最初に出るのは一郎バンドみたいだ。立てかけてあるギターはICHIRO MODEL GUITAR 2007が二本とストラト。アンプはオレンジ。楽器を観ているだけで盛り上がる。あぁ、ここに一郎とジェームスが立つのか…と思って開演前はドキドキわくわくだった。
ところで、このライヴは17:30開場、18:00開演だった。僕は常々開場から開演までの時間が長すぎると思っているので、30分という時間は丁度良かったし、個人的にもこれで十分だと思う。1時間なんてあまりにも長すぎませんか? 特にスタンディングのライヴハウスの場合、何もせず1時間も立っているだけなんて苦痛以外の何物でもない。お客さんの立場になってほしいよ、ホントに。
遂に開演。ステージに一郎バンドが現れる。おおっ!一郎だぁ!ジェームスだぁ!すげぇメンツだぁ! ちなみにドラマーの西川貴博という人ですが、奥さんは浅香唯だそうです。
何年かぶりに観る一郎なのに、不思議なことに今までずーっと観続けてきたような感覚になる。何の違和感もなく “イチローッ!” と声が出てしまった。
演奏が始まる。今の一郎が持つと何だかミニ・ギターみたいに見えてしまうが、ICHIRO MODEL、いい音してるじゃん。
さて、初めて観るソロ・ライヴだというのに一曲目でいきなり引き込まれた。一郎は、やたらと演奏するのが楽しくて仕方が無いというような感じだ。
一曲目が終り、今日はARBナンバーを演ってくれるかなぁ…なんて思って油断した瞬間、いきなり二曲目に「R&R AIR MAIL」だ! 一瞬でPlanet Kが新宿LOFTになった。
もちろんARBナンバーは石橋凌の色が濃いけれど、実際はほとんどが一郎の作曲なのである。だから、今回ヴォーカルをとるのは一郎だが、迷いなんて一切感じられない。しかもARBナンバーでギターを弾くのは、ARBでギターを弾いていた一郎なのである。イェーイ!
ソロ・ナンバーは初めて聴く曲ばかりだったが、そんなことは全く関係ない。一郎のギターを目の前で観ているだけで最高の気分だ。そして中盤ではあのイントロが! 「エデンで1、2」! もう気分は81年の高校生だぁ!
ところで、ジェームスのベース。3ピースということもあるけれど、音がクッキリとしているし、安定感も抜群だし、グルーヴもバッチリだった。さすが。
そうそう、このバンドで何とジミヘンの「Purple Haze」をストレートにカヴァーしたのは驚いた。カッコイイったらありゃしない。
MCもこれがまた面白いんだよ。光浩のことはもちろん、やはり歴代ARBのギタリストである白浜久や、うじきつよし、北島健二、織田哲郎、甲本ヒロトなどのミュージシャンや、ギンザNOWとかドリフの番組とか固有名詞がガンガン出てくるのも個人的には楽しかった。
そんなこんなでラスト・ナンバーは「ウィスキー&ウォッカ」! さすがに燃えたね、これは。もう気分は82年の高校生だぁ!
とにかく熱く、楽しく、実にロックな1時間でした。
続く光浩バンドは、一郎と同じようにARBテイストなロックン・ロールではなく、ひたすらハードロックで押しまくるメニュー。途中でARB時代に唯一残した自身のヴォーカル曲「黒いギター」を歌ったけれど、全編、耳がキンキンする轟音ライヴだった。僕自身はBOW WOWを真剣に聴いていたわけでは無い。その昔、BOW WOWのコピー・バンドと知り合いで、そいつらを通じて数曲を知っていた程度。そんな中で印象に残っていた「Don’t Cry Baby」を演ってくれたので、ちょっと懐かしくなって、あいつらに聴かせたいなぁ…なんて思った。
アンコールは光浩バンドに一郎が加わって数曲のセッション。今時のアマチュア・バンドは絶対に演らない(笑)ような曲…、ストーンズ「Satisfaction」をかましてくれた。ライヴのタイトルになった「二人のJammin’」は光浩の1stアルバム収録の一郎との共作で、この曲もここで演奏された。
まさにARBとBOW WOWのジョイント・ライヴみたいで、お腹いっぱいになりました。
一郎バンド。もっと早くから観に来ていれば良かったなぁ…なんてちょっと後悔した。自身のブログのプロフィールには、目指すは永遠のGuitar boyと書いてあるので、まだまだこれからも演ってくれるだろう。来年以降も楽しみにしていよう。<2007-12-12 記>
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?