Marimba Theater / 新谷祥子 -2014-
音楽スタジオではない場所での一発録音と言う3rdアルバム。どんな音に仕上がっているのかが楽しみでしたが、その感触は…。
新谷祥子そのものでした。
これまでのライヴやレコーディングから、マリンバ弾き語りという自身のスタイルをモノにし、思い通りに表現できるところまで達しているように思います。もはやレコーディングの場所・環境に関わらず独自の音を出せるのではないでしょうか。ただし、あくまでもこれは音を聴いた感触のみの印象です。音の色あいは、やはり2014年の最新型・新谷祥子となっています。
1stアルバムではベーシスト吉野弘志、2ndアルバムではギタリスト仲井戸麗市をゲストに迎えていました。特に2ndアルバムはギターに加え、自身でも様々な楽器を使い、バラエティにとんだ分厚い音を聴かせてくれました。
しかし、今回は実にシンプル。その理由は、迎えられたゲストがヴィブラフォン(山本祐介)ということもあるでしょう。しかし、シンプルな分、楽器同士の調和する美しさは格別です。マリンバの音にヴィブラフォンが重なる心地良さ。かつ、その音が喚起させてくれるものは絵であり画であり映像でもあります。まさにアルバムのタイトル『マリンバシアター』そのものです。
個人的なベストは「なまえのない子守唄」。マリンバのフレーズ、歌のメロディなど、聴きやすくPOPなのに緊張感が溢れるという新谷さん独特のもの。大好きな世界です。
アルバムのクレジットによれば、レコーディングは5月。新谷さん自身が撮影した故郷の雪景色の写真。冒頭を飾る曲は「バイバイ オータム」。リリースは真夏。このように見事に四季が詰まった作品ですが、あり得ない五つ目の季節を感じさせてくれる作品でもあります。
マリンバを聴く、曲を聴く、歌を聴く。そして新谷祥子を聴く。そんなアルバムです。<2014-08-20 記>
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