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風よはこべ 新谷祥子マリンバ弾き語り 2nd Album発売記念ライヴ 南青山MANDALA 2011.11.19.

新谷祥子のこれまでのライヴはと言えば、オリジナルとカヴァーがだいたい半々の割合で演奏されている。そのオリジナルも、実は同じ曲が続けて演奏されたライヴは少なく、ライヴの度に新曲が披露されることが多かった。

今夜は2ndアルバムのレコ発ライヴである。しかもアルバムにも参加している仲井戸麗市をゲストに迎える。となれば、もちろん2ndアルバム収録曲が中心になることは予想がついたし、1stアルバムのオリジナルも、もしかしたらチャボとの共演で披露されるかも…。ということで、とても楽しみにしていたライヴだった。僕自身、新谷さんのオリジナル曲をじっくりと楽しみたかったのだ。

オープニングは1stアルバムから「静かな少女」。この選曲で、今夜のライヴは僕の期待通りのものになるという予感がした。結果としては2ndアルバムから7曲。1stアルバムから2曲。そしてチャボの曲を含むいくつかのカヴァーというメニューだった。

ギターやピアノの弾き語りでは無いし、マリンバという楽器の大きさと新谷さんのアクションもあるからか、彼女のライヴを初めて聴く人は、その歌のメロディがなかなか掴めないのではないだろうか。僕も最初はそうだった。
ただ、何度かライヴに足を運び、発表されたCDを聴き、彼女の曲のしっかりとした、そしてPOPで切なく、かつ親しみやすく覚えやすいメロディの魅力に惹かれた。ソングライターとしても素晴らしい人だと思う。

この日も、そんな彼女の曲の魅力が爆発していた。マリンバの弾き語りはもちろんだが、そこにチャボのギターが加わると、曲の表情がとても豊かになり、クッキリとその姿も浮かんでくる。初めての人にも、彼女の曲の素晴らしさは伝わったのではないか。

過去のライヴでも、ウッドベースやファゴットとのコラボでも同じように感じた。マリンバに他の楽器が加わると、曲の姿かたちが変わるのだ。いつかはギターにベース、そして他の楽器を加えた、3~4人編成のバンド形態でのライヴも聴いてみたいと思う。

さて、チャボの登場は、新谷さん自らがプレイした「9月の素描」の後だった。ゲストの曲を演奏して迎えるなんて、実に彼女らしい演出だ。共演1発目は「アトムの飛んだ空」。そして「紅カラス」と続く。CDで聴けたチャボの独特なギターが楽しみだったが、ライヴで聴くそれは、CD以上に表情豊かであり、見応え聴き応えがあった。CDと同じく決して派手で主張するプレイではなかったが、やはり生で観て聴くと違う。めちゃくちゃカッコよかった。そして演るかな…とは思ってはいたが、チャボの曲も2曲、「BLUE MOON」と「ガルシアの風」が演奏された。

チャボはゲストなわけだから、やはり普段とは雰囲気も違う。何度も共演している二人とはいえ、良い意味での緊張感があっただろう。そのおかげか、プレイにも集中していたようで、ミスもなくバッチリだった。こういうギターは、なかなか聴くことができないよ。

ライヴのハイライトは、本編ラストの「風よはこべ」。CDを聴いたときも絶対に核になっている曲だと思ったし、今回のライヴのタイトルになっていることからも、僕が感じたことは間違いでは無いと思う。

この曲の演奏前、2011年がどんな年だったか…に触れたとき、涙で言葉に詰まった瞬間があった。彼女は東北出身である。もちろんそれを観た僕自身も3.11とその日以降について何かを感じて思ったが、同時に音楽の素晴らしさも感じ、音楽の素晴らしさを思った。それは彼女の音楽がそう感じさせ、思わせてくれたのだ。

新谷祥子。僕は素晴らしいミュージシャン、アーティストに出会えたのだなと、今夜あらためて思った…いや、確信した。<2011-11-19 記>

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