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沢田研二コンサート 生きてたらシアワセ 渋谷C.C.Lemonホール 2007.08.04.

客電が落ちてメンバーがステージに現れる。中央にスポットが当たると、既にジュリーが立っている。神妙な顔つきで話し出す。

  8月1日、阿久悠さんが亡くなりました

先日亡くなった阿久悠についてのコメントがジュリーから出るとは思っていたが…。

  ご唱和お願いします

客席にこう言って始まったのは「時の過ぎゆくままに」。左腕には喪章をつけている。歌の途中で感極まったのか涙声になり、所々でとぎれそうになったが最後まで歌いきった。このオープニングのセレモニー。ジュリーの阿久悠に対する思いの大きさがわかり、感動的だった。

決して過去のヒット曲満載なステージではなく、毎回新作を中心としたメニューと知っていたので、実際に初めて聴く曲が大半だった。それでもまったく退屈することなく楽しめた。ジュリーをずっと聴き続けてきたファンには当たり前なのだろうが、TVに出なくなってからは映画でしか観ることができなかった僕は、実に現役感バリバリの今日のジュリーには驚いてしまった。ヴォーカリストとしてのパワーと歌唱力はまったく衰えていない。70~80年代に聴いていたあの声である。また、アップテンポの曲では、その曲が演奏されるあいだ、ステージの右から左まで動きっぱなしなのである。59歳。すごい。負けてられねぇぞ、清志郎。

バックを担当するのはキーボードに泰輝。ドラムスにGRACE。ギターには長い付き合いの柴山和彦。そして下山淳の4人。何とベース・レスのバンドなのである。ちなみに僕は女性のドラマーは大好きなのだが、今回初めて観ることとなったGRACE。とても魅力的なドラマーでした。彼女は麝香猫のドラマーだったのですね。黒のワンピースでドラムを叩く姿は最高にイカシてました。

ギタリストは、やはり柴山和彦がメインだったかな。楽しみにしていた下山淳は、たまにソロを弾く場面もあったが、ほとんどサイド・ギタリスト担当だった。ROOSTERZやROCK'N'ROLL GYPSIESを期待していたわけではないけれど、最後まで下山らしいプレイは聴けなかったなぁ。ただ、物足りなさを感じたけれど、日本最強のシューゲイザー・ギタリストに徹していた下山の姿は美しかったと思う。

客席は静かな熱さを帯びており、その分ここぞという曲でのヒート・アップは凄い。しかし、それがとても自然な感じなのだ。キメの振りなんかもあるのだけれど、僕のような新参者が疎外されるような雰囲気は無く、一緒に気持ちよく盛り上がれる。これは嬉しかった。

本編の終盤。いきなり「ダーリング」が演奏された。間奏でのアクションなんかが、僕が中学のときに観ていた頃のままで、広島球場をバックにこの曲を歌ったザ・ベストテンの中継を思い出してしまった。続けて柴山和彦があのイントロをぶちかます。「TOKIO」だ! この二連発は、さすがに盛り上がりました。二曲ともギター・バンドなアレンジで、ロック・シンガー沢田研二の魅力を目いっぱい堪能できた。

さて、MCは「サンキュー!」「ありがとう!」のみ。とにかく立て続けに曲が演奏されていくのだ。MCがアクセントにならないので、まさに演奏と歌だけでステージを作り上げていく。まるでストリート・スライダーズである。ただ、アンコールで出てきたときだけは、長いMCをしていた。安井かずみの追悼コンサートのときに「次は阿久さんだ」と冗談で言っていたことなど、ここでいくつか笑わせる話を持ってきたのも良かった。

そしてアンコールの一発目には、何と「気になるお前」が! シングル「胸いっぱいの悲しみ」のB面に収録されていた大好きなロック・ナンバーだ。エキゾティクスをバックに従えていた時代。大晦日のニュー・イヤー・ロック・フェスに出演したジュリーは、「紅白はかったるかったぜ!」と言ってこの曲を演奏したのだ。最高にカッコ良かった。僕は自分のバンドでも演った。この曲を聴けただけで満足だ。嬉しい!

更に「AMAPOLA」をしっとりと聴かせてくれる。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を観たくなった。

時間にして二時間強。沢田研二のライヴ…というよりもコンサートと呼ぶほうが相応しい…の初体験。とてもいいコンサートでした。<2007-08-05 記>

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