ERIC CLAPTON / JEFF BECK さいたまスーパーアリーナ 2009.02.21.
いつものように、そして当たり前のようにさいたまスーパーアリーナに向かったけれど、会場に近づくに連れて緊張が…いやいや期待がガンガン高まってくる。
だってエリック・クラプトンとジェフ・ベックの共演ライヴなのである。このニュースを知った時に受けた感激が薄まっていたようだけれど、さすがに当日ともなると、あらためてその凄さに驚いてしまった。
僕自身としてはジェフ・ベックの熱心なファンとは言えなくて、これまで来日公演を観に行くことは無かったのだが、今回の来日は、最初から行くことを決めていた。どんな理由や思いや想いがあっても、後悔しないように、今は好きなミュージシャンのライヴはできるだけ足を運ぼうとも決めているのだ。そしてNHKホールでの初体験。ウワサに聞いていた変幻自在のギターを目の当たりにして感動だった。よって、さいたまではダイジェストのメニューになるだろうとは言っても、再びあのギターを聴けることを楽しみにしていた。
一方のエリック・クラプトン。彼の来日は何度も体験しているのだけれど、実は今回の来日公演に、何だか僕はあまり必然を感じられなかったんだよね。ただ、幸運なことに日本でのジェフ・ベックとの共演の詳細を事前にキャッチできていたので、E.C.の単独公演はパスし、共演だけに絞っていたという経緯があります。ちなみにこの大ニュースを教えてくれたのは、ジェフ・ベックのNHKホールでグッズ売場に並んでいた知人。やはりこいつは、今回も全公演を観に行ったそうだ。
さて、久しぶりのさいたまスーパーアリーナ。クイーン+ポール・ロジャース以来かな。
会場に入った途端、レッド・ツェッペリンが鳴っていて驚いた。おいおい、ジミー・ペイジを加えての三大ギタリストかー。実際にはBGMはZEPだけということではもちろん無く、単なる偶然だったのだけれど、それでも僕自身が盛り上がったのは言うまでも無い。
ディランの「Tangled Up In Blue」をいい気分で聴いていたら客電が落ちた。
まずはジェフ・ベックだ!
僕が観たNHKホールよりも断然、バンドの音が固まっていたと思う。これまでツアーを続けてきたので当たり前なのだが、それでもこの4ピーセズが出す音には感激してしまった。リストはダイジェスト版だったが、アンコールに応えて「The Peter Gunn」を演奏してくた。このサービス精神は嬉しかった。
そんな中、この日の個人的ハイライトは「A Day In The Life」。本編のラスト・ナンバーとして演奏されるこのビートルズ。素晴らしかったと思う。
あれは一人で出している音じゃ無いよ。ちなみにこの曲のスタジオ・ヴァージョンが収録されているのは、ジョージ・マーティン名義で発表された 『IN MY LIFE』 というビートルズのカヴァー集だ。
アンコールを入れても50分のステージ。でも、まったく空腹感は無し。それどころか、短かったからこそ、E.C.を意識したことも加わってのことか、演奏の完成度はかなり高かったように思う。そうそう、音も僕の席に限ってはまったく問題なしだったし、何より、あのストラトキャスターの音に酔ってしまった。素晴らしい!
この他に特筆すべきシーンとして、Tal Wilkenfeldのベース・ソロを記しておかなければ! 最初は彼女一人で弾いているのだけれど、途中からジェフが加わるのだ。加わるというのは、一本のベースを二人で弾くのである。えーと、ベースを弾く彼女の後ろから忍び寄り…要するに二人羽織りになるんだよ。僕が確認したところ、ジェフが3~4弦の低いポジションを弾き、タルちゃんが1~2弦のハイ・ポジションでソロを奏でる…といった感じだった。これを実際に観ると、カッコイイんだなー。人によってはマヌケに観えるかもしれないが。
さて、こんな素晴らしいライヴの後に、E.C.が控えているわけだ。何だかんだで楽しみにしちゃうゲンキンな自分がいたが、この場ではそんなことは関係無い。
客電が消え、何とエリック一人がステージに現れ、マイクに向かって " コンバンハ! " 。とても発音がよろしい日本語でした。実はジェフ・ベックとE.C.のあいだの時間、休憩中のセッティングの様子から、アコースティック・セットでスタートしそうなことがわかっていたけれど、一人で演るとは! オープニングでいきなりブルースを軽く決めるのはチャボも良くやることなので、自然と比べて観てしまう僕がいたが、いやいやチャボには申し訳ないけれど、あの余裕と深みは、さすがエリック・クラプトンです。ただ、こんな地味に渋く進んじゃうのかなーと思ったのも事実…なんだけれど、二曲目には他のメンバーが加わっての「Layla(Unpulugged)」を演るんだからニクイです。イントロを聴いた瞬間、いきなり客側は持ってかれちゃいましたから。前半のアコースティック・セットでは、他に「Running On Faith」も良かったな。
エレクトリックになっての一発目は、前回の来日でオープニングを飾っていた「Tell The Truth」。ここからラストの「Crossroads」まで、実に安定した演奏を聴かせてくれた。そうそう、ラス前の「Cocaine」では、例のフレーズが来るたびに、僕の周りは皆が " コケイン! " と叫んでいたので気持ちよかったよー。でも、あれだけの年齢層のお客さんなので当たり前かもしれないけれど。
ところで今回のE.C.は、ギターが結構歪んでいるな…って感じたんだけれど、どうかな? 曲単位でなく、通しての音を聴いても、やはりこれまでよりも若干歪んでいたように思う。これは会場の影響なのか、自身の気持ちなのかはわからないけれど、僕としてはジェフ・ベックを意識していての…と勝手に理解することにする。そのほうが盛り上がるからさ。
ライヴ全編としては、これまで観たE.C.との違いはあまり感じられなかったのが正直なところ。でも、ギター・ソロは気合いが入っていたように思うな。これはジェフとの共演を意識すれば当たり前なのだと思うが、ただ、気合いが入れば入るほど、二人のギターの違いがハッキリしてしまうということにもなるわけだ。
僕自身の捉え方になるけれど、ジェフは完全に独自が持つ音とフレーズをかますので、特に通常のフォーマットをバックにすると彼のソロは際立って聴こえるが、エリックは、あくまでも自分の持つ決まったプレイの中で速く激しく…みたいになる。ジェフの場合はどんなギターが聴けるのかわからない楽しみと期待があるが、エリックの場合は今日の調子が良いか悪いかといった不安と期待がある。良いか悪いかではなく、僕なりの二人のスタイルの違いなんだけれど、そんな感じだ。
それが如実にあらわれていたのが第三部の共演。ブルースが演奏されるとスタイルの違いは明らかで、その点が凄く楽しめた。ジェフのギターはオリジナルだけれど、はみ出す寸前で止まっていたし、エリックはマイペースな中でも、激しく弾く瞬間が多かったように思う。
まぁ、何だかんだ言っても、二人が並んでステージに出てきた瞬間で、もう感激だったし、向かい合って、顔を見合わせて、しかも笑顔で演奏する二人を観ることができて幸せだ。
僕は、最近の二人の共演の映像を観ることなく臨んだので、共演全てが新鮮だった。そして、共演であり、かつ競演にもなっていたことが素晴らしい。
終わってみても、このライヴがどれくらい凄いものなのかが良くわかっていないけれど、ウドーが言っていた " 「日本に暮らすロック・ファンでよかった」と心の底から思うだろう " は、今では僕もそう思う。<2009-02-22 記>
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※UDOニュースよりセット・リストを転用
エリック・クラプトン/ジェフ・ベック 奇跡のジョイント・公演!
多くのロックファンが待ちに待った、
ロック史に新たなページを刻む記念すべき日が遂にやってきました。
2月21日(土)さいたまスーパーアリーナで、偉大なロック・レジェンド、
エリック・クラプトンとジェフ・ベックの共演が実現したのです。
1960年代にザ・ヤードバーズのギタリストとしてプロのキャリアをスタートさせた2人。フェスティバルや飛び入り参加で同じステージに立ったことはありますが、2人の正式なジョイント・コンサートは今公演が初めて。しかもここ日本だけで実現した特別なイベントとなりました。
公演は第1部ジェフ・ベック、第2部エリック・クラプトン、第3部がエリック・クラプトン&ジェフ・ベックの3部構成。第1部はジェフ・ベックの代表曲を約50分のステージに濃縮した、まさにスーパー・ベスト・ライヴ。緊張感漂う演奏に観客は息を呑みます。第2部はアコースティック・ギター1本だけの演奏からスタート。単独公演では聞けなかったアコースティック・ヴァージョンの「レイラ」も披露し観客を沸かせます。そして第3部で遂に2人が同じステージに立ちました。昨年のジェフ・ベック公演にエリックが飛び入りした際にも演奏したマディ・ウォーターズの「ユー・ニード・ラヴ」「ブラウン・バード」を含む全7曲を演奏。2人の強い個性を打ち出した最高のステージとなりました。
各パートで演奏された曲は下記の通りです。
2月21日(土)@さいたまスーパーアリーナ セットリスト
第1部:ジェフ・ベック
THE PUMP
YOU NEVER KNOW
CAUSE WE'VE ENDED AS LOVERS
STRATUS
ANGEL
LED BOOTS
GOODBYE PORK PIE HAT / BRUSH WITH THE BLUES
JEFF & TAL SOLO
BLUE WIND
A DAY IN THE LIFE
PETER GUNN
第2部:エリック・クラプトン
DRIFTIN
LAYLA
MOTHERLESS CHILD
RUNNING ON FAITH
TELL THE TRUTH
QUEEN OF SPADE
BEFORE YOU ACCUSES ME
COCAINE
CROSSROADS
第3部:エリック・クラプトン&ジェフ・ベック
YOU NEED LOVE
LISTEN HERE - COMPARED TO WHAT
HERE BUT I'M GONE
OUTSIDE WOMAN
BROWN BIRD
WEE WEE BABY
WANT TO TAKE YOU HIGHER
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