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WE WILL ROCK YOU / THE MUSICAL by QUEEN and Ben Elton 新宿コマ劇場 2005.07.09.

例えブライアン・メイとロジャー・テイラーが全面的に監修したロック・ミュージカルであっても、例えロバート・デ・ニーロのトライベッカ社が出資していても、例えステージのデザインがローリング・ストーンズの巨大セットで有名なマーク・フィッシャーであっても、ミュージカルというものを観に行く僕は素人である。期待はしていたが、それがどういう期待をしているのかも良くわかっていない。

だから、僕はクイーンのライヴを観に行くというモードにした。再結成クイーンではなく、オリジナル・メンバーのクイーンによる2005年ジャパン・ツアーである。このモードが自分にとってはいちばん自然であるから。

さて、5月から新宿コマ劇場で始まった「WE WILL ROCK YOU」であるが、今日が丁度真ん中といった日である。この時期ならキャスト達ももう慣れてきてバッチリなものを観せてくれるだろうと思い、行くならこの時期と決めていた。

歌舞伎町の一帯はこのミュージカルの宣伝で埋め尽くされている。盛り上がる。生憎の雨だったが、いつだって新宿は人でいっぱいだ。土曜日だったしね。夜の部のチケットを取り、開場時間にロビーへ入る。ロビーでは簡単な飲食もでき、グッズやCD販売、そしてフレディの衣装やブライアンのギター、日本盤のシングルや来日公演のチケット等が展示されていた。そこで1時間ほど時間をつぶし、遂にホールの中へ入る。ステージに向かってやや右側の中段席。ここならバッチリだ。

とにかく事前の情報はできるだけアタマに入れずに望んだ。真っ白な状態で観たかったのだ。

遂に開演。まず心配だったのは字幕だ。どうやって見せるのかがわからなかったが、始まってみたら成る程と納得。また、音はすべて生演奏である。ギターが2本、ベース、ドラム、キーボード2台、パーカッションという編成。それに指揮者が一人だった。この指揮者もキーボードを曲によっては弾いていたようだ。特筆すべきは二人のギタリストが使うギターがブライアン・メイ・モデルなのである。細かい。さすがだ。

ストーリーはサイトで確認できるのでここでは記さないが、単純に楽しい。セリフも日本版になっている箇所がいくつかあり、ギャグも寒さ寸前なものもあったが、こういう場では思わず笑ってしまう。そして曲はお馴染みのものばかりだし、各キャストの歌がまたうまいので音楽的には最高である。

それにしても改めて感じたのはクイーンの曲のハードさである。

ハード・ロック・バンドとしてデビューしたが、『オペラ座の夜』があまりにも強烈なため、あのアルバムのクイーンが一般的なイメージであろう。これと対になる『華麗なるレース』も同様だ。

ただ、今日のミュージカルで演奏された80年以降のナンバーのハードさとヘヴィネスはどうだ! 通してみるとクイーンはハード・ロック・バンドであったと言っても過言では無いだろう。実は『オペラ座の夜』と『華麗なるレース』が異質なのである…と感じてしまった。良い悪いではなく、こう思えたことは新鮮だった。彼らの作品を聴く印象がまた変わりそうである。

演奏された曲は、グレイテスト・ヒッツⅠとグレイテスト・ヒッツⅡを丸々といったメニューだった。もちろん全曲を完奏するわけではないが、曲の一部だとしても効果的に使用されており、本当に楽しい。

まず、前半で歌われた「愛にすべてを」でいきなりグッと来てしまった。目に涙が一瞬たまった…。「アイ・ウォント・イット・オール」「愛という名の欲望」では自然に身体が反応してしまう。「RADIO GA GA」は実は好きな曲では無かったが、かなりのポップ・チューンであったのだなぁ…。とにかくクイーンの楽曲の素晴らしさをこれでもかと再確認させられながら舞台は進んでいく。

そして終盤。例の ズンズン チャッ である。ここから一気にクライマックスになだれ込む。「WE WILL ROCK YOU」から「伝説のチャンピオン」は本当にライヴに来ているようであった。もちろん観客全員は総立ちである。

「伝説のチャンピオン」が終わるとステージが暗転するのだが、もちろんもう1曲用意されている。この、ライヴで言えばアンコールにあたる曲のイントロを聴いた途端、涙がバーッと出てきた。ハッキリ言ってもう聴き飽きたとも言って良いほどの曲だ。でも、先に書いたように、ここまでクイーンの楽曲の良さを改めて思い知らされてきたところに、これだ。曲の良さだけが僕を感動させたのである。

素直な心を持って観られるクイーンのファンならば、間違いなく楽しめるミュージカルだと思う。間に休憩を20分挟んでの3時間。僕はチケット代以上のものを観せてもらったし、聴かせてもらったよ。

P.S.
僕の前の席は親子三人連れであった。おそらくお母さん(僕と同世代だろう)がファンのようだ。子供は途中で退屈そうにしているし、お父さんもそんなにのめり込んでいる様子では無い。でも、そのお母さんは身を乗り出しながらステージをずっと観ていた。そして僕がラストで涙を流していたときのこと。ふとこのお母さんを見ると、彼女も泣いていたのである。目を何度も何度もこすりながらステージに向かって拍手をしていた。

会場にはかつてのミュージック・ライフ世代の女の子達…がたくさんいた。彼女達は「ナウ・アイム・ヒア」のイントロをいったいどんな気持ちで聴いたのだろう。<2005-07-10 記>

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