仲井戸CHABO麗市[THE Duet] 2005.09.07. ティアラこうとう
まずは驚いた。つい二日前に「ストーンズのOUT OF TIMEを演ってほしい」と書いたが、本当に演ってくれたのである。しかも、チャボのあの独特な日本語の歌詞で。「ブライアン・ジョーンズが弾いた楽器、マリンバを聴いたのがこの曲、OUT OF TIME」と歌ってくれた。これだけでチケット代の価値があった。この1曲は、心の底から嬉しかった。
1回目のチェロと2回目のペダル・スティール・ギターとのライヴは事前に何となく想像できたが、今回のマリンバは、どんな感じになるのか、なかなかイメージが沸かなかった。会場に入り、まずステージを見て驚く。ほとんどステージ上をマリンバが専有している。こんなに大きいとは…。
新谷祥子さんというミュージシャン。パーカッショニストとして、主にマリンバ演奏において活動云々という方だ。よく見ると、マリンバの左右にいろいろな楽器がセッティングされている。もう、あれこれ想像してもしょうがない。これはアタマの中を真っ白にしてライヴに臨もうと思った。
オープニング。演奏ではなく、いきなりチャボがしゃべりだす。これは意外だったが、入りとしては良かったと思う。リラックスできた。簡単に新谷さんが紹介されて登場。最初から二人でライヴがスタートした。
印象に残った曲をピックアップしてみる。
1曲目は何とRCサクセション・ナンバー「うぐいす」だった。そして「ホームタウン」と続く。90年に発表されたこの冒頭の2曲の流れはとても素敵だった。「ホームタウン」は新たな解釈で演奏され、印象がかなり変っていた。
前述したロ-リング・ストーンズの「OUT OF TIME」。ブライアン・ジョーンズが叩いたあのフレーズ。チャボは高校当時、ギターで奏でていたようだが「本物のマリンバで演れた!」と嬉しそうだった。この曲のリハは本当に楽しかっただろうなぁ。目に浮かぶ。
久々に演ってくれた「L・O・V・E」と「特別な夏」。こういった曲にはマリンバの音色がとても合う。ちなみに、「L・O・V・E」は新谷さんのお子さん(ジュリアスという名前で10月9日生まれ!)に捧げていた。「特別な夏」は前回の夏をイメージしたライヴで聴きたかった曲なので、嬉しかった。
恒例のポエトリー・リーディング。今回も「だんだんわかった」からのチョイス、歌詞、新たに作ったもの、の三つのパターンだった。白眉だったのは「STONE」。これを朗読するときのチャボはいつも独特なのだが、激しいパーカッションだけでバックをつけた新谷さんが最高だった。ブライアン・ジョーンズに聴かせたい。
それにしても新谷さんは素晴らしかった。巧みにマリンバを叩き、パーカッションを操る。優しさと強さ、その表現力、数曲で披露したヴォイス…。完全に目と耳を奪われる。演奏中の彼女はワイルドであるが、美しい。視覚的にもとても素敵なミュージシャンである。カッコよかった。しかも、曲が終わるたびに見せてくれた笑顔がとてもチャーミングで、そのギャップがまた良かった。
ステージでは「静の仲井戸麗市、動の新谷祥子」であり、曲によってはチャボ、完全に食われていたよ。
僕は、今回のDuetがいちばん良かったと思う。音楽的にも楽器的にも、そしてミュージシャン同士の相性としても、おそらくベスト・マッチだったのだろう。チャボも新谷さんも、お互いが主張するところはもちろんあるのだが、それのバランスが良かった。チャボが押すと新谷さんが引き、新谷さんが走るとチャボが止まるのである。しかも、それが自然な感じであった。
これでTHE Duetは一段落だが、とても良い企画だった。是非、続けて欲しい。僕は3回とも初日に行った。今日チャボは「初日は嫌い」と言っていたが、僕は好きである。前日のやり直しと言うことが無いので、まさに一発勝負。緊張感があると思うからだ。例え出来がよくなかったとしても、それを込みで楽しんでいる。
10月には三人のミュージシャンとの共演が再び観られるぞ。楽しみだ。
<2005-09-08 記>