「浜田真理子 ふたつの物語」晴れたら空に豆まいて 2016.01.28.~01.29.
第一夜は真理子さんのソロ。第二夜はふちがみとふなとさんとのツーマン。晴れ豆での2daysは、真理子さんのソロ、ふちがみとふなとさんのパート、そしてふちがみとふなととまりこセッションが2日で体験できるという贅沢。そのすべてが聴きごたえがあるものでした。
1日目。僕にとっての2016年の浜田真理子は「森へ行きましょう」で始まりました。歌いだされた瞬間から感じましたが、これまでよりもスローなテンポでオリジナルが披露されます。最初はたまたまなのかとも思いましたが、間違いなくテンポがゆったりでした。これは2日目に至るまで貫かれていましたから、何かしら理由があってのことだと思います。しかし、このことで楽曲の深みが底なしになっていました。
歌詞の最後をわざとぼやかすヴォーカル・スタイル。かすれて消えてゆくフレーズを聴き逃すまいと、聴き手は耳だけでなく身体と心を向けます。これにより真理子さんの世界に引き込まれる…というか、聴き手のほうから中に入っていくというのが真理子さんの魅力のひとつです。これが本当に快感で、いちどこのことを体験したら抜け出すことができません。
もうひとつ、どんな内容の曲であっても浮かぶ、あの独特の笑顔です。不敵にも見えるし、歌うことが楽しいという喜びにも見えます。人間の持つ、あらゆる感情が詰まったような笑顔。これも真理子さんのライヴには欠かせない魅力です。
これらとスローなテンポの相性は抜群でした。おかげでこれまで聴きなれていた「骨董屋」「ミシン」も新鮮で、歌われるストーリーも初めて聴いたように生まれ変わった印象です。まちがいなく深みが増し、名曲度もあがっていました。こうしたことで素晴らしい初日に感動しましたが、2日目の密度がまた尋常ではありませんでした。
晴れ豆は、客席の位置によって照明の効果により真理子さんが、ビートルズのセカンド・アルバム…いわゆるハーフ・シャドウになります。この効果が2日目のセット・リストには恐ろしいくらいハマっていました。特に「うたかた」「しゃれこうべと大砲」と続いたオープニングは最高で、暗さと強さ、光と闇が同居したかのような世界観の説得力と吸引力。目と耳が釘付けで、久しぶりに体験する最上級のハマダマリコでした。2日目の構成ではソロは第一部のみでしたが、フル・ライヴに近い内容で、これだけでお釣りがくるステージでした。
アンコールでのふちがみとふなととまりこセッションにも驚かされました。アバの「チキチータ」というまったくアタマに浮かばない選曲と、さらにそれが何とも素晴らしい出来だったことに更に驚かされました。アバと浜田真理子とふちがみとふなとを足して出てきた音は、まるで初めて聴かされる音楽のようでした。足して一。昨年の同じ時期に、同じここ晴れ豆で真理子さんが放ったこのフレーズ。あぁ、まさに足して一な音楽だったなぁと、今、これを思い出しています。
ラストを締めくくったのは「純愛」。二人のハーモニーにより、聴いたことがない「純愛」になっていました。真理子さんは " 一緒に歌いましょうか " と言っていましたが、あんな「純愛」を一緒に歌えるわけがないじゃないですか。
この2日間を体験することで、やっと僕の2016年のスイッチが入ったように思います。素晴らしい音楽で始められることができた今年は、今後もそんな素晴らしい音楽が待っていてくれるように感じます。そんな風に思わせてくれた真理子さんに感謝。<2016-02-02 記>