新谷祥子 Marimba Theater 2013 Echo From North 寺山修司没後30年トリビュート 明大前キッド・アイラック・アート・ホール 2013.09.17.
Marimba Theaterと題され、テーマはEcho From North。そして寺山修司没後30年トリビュート。ゲストにヴィブラフォンの山本祐介を迎え、会場は明大前のキッド・アイラック・アート・ホール。この事前情報だけで勝手にイメージがぶわーっと広がった。
新谷さんは青森出身。彼女が寺山修司について書いた言葉をいくつか拾ってみる。
生い立ちと作品という部分で、
どこか全然違うところにいる人というふうに感じない
作品の成り立ちを見ていても、これは以前、
現実的にどこかで感じた風景、のように錯覚する
作詞が寺山修司となっている「歌」の魅力
どうして楽曲になっている歌詞だけがこうも優しく、
どぎつい感じがしないのか
こんな彼女が故郷、そして寺山修司没後30年トリビュートの選曲で行うライヴだ。とても楽しみにしていた。
ライヴは二部構成。第一部は寺山修司の短いポエムを読み、演奏する。その繰り返し。オリジナル曲が中心のメニューだったが、寺山修司のポエムに無理矢理こじつけたといって歌ったそれは、
" 全然違うところにいる人というふうに感じない "
" 作品の成り立ちを見ていても、これは以前、
現実的にどこかで感じた風景、のように錯覚する "
新谷さん自身が言う、まさにこれだった。
特に『田園に死す』にだぶらせた「冬の線路」。新谷祥子が見て歌う線路は、寺山修司も見た線路なのだろう。個人的に好きな曲ということもあるけれど、曲が聴こえるだけでなく、絵が見える。風景が浮かぶ。風とにおいを感じる。この曲はMarimba Theaterに相応しい演奏だったと思う。
第二部は、寺山作詞の名曲が中心に披露される。いきなり浅川マキの「ふしあわせという名の猫」。思い切り暗い歌詞だけれど、オリジナルはマキさんの歌がそれを感じさせない、何だか不思議な曲だなぁと常々思っている。そんな強烈なオリジナルを、マリンバとヴィブラフォンによる、洗練(と、あえて表現)されたアレンジで聴かせてくれた。
カルメン・マキの「時には母のない子のように」は、確か以前もライヴで歌ってくれたと思うが、この日は本編とアンコールで二度、しかも別アレンジで演奏。寺山の作詞はもちろんだが、作曲が田中未知ということでも、おそらく新谷さんの思い入れは強い曲なのだろう。
テーマからして重めな内容を想像していたが、まったくそんなことはなく、新谷さんの人柄が前面に出て、独特な寺山ワールドになっていたと思う。二部ではゲストの山本さんのソロ・コーナーがあり、そこでは「あしたのジョー」をヴィブラフォンのインストで演奏するという、オマケ的だけど聴きごたえがあるコーナーもあった。こんなことからも、振り返ってみれば、とても楽しめたライヴだった。
Marimba Theaterと題し、劇場で行う…ことになっていくのだろうライヴ。今後はどんなテーマで行われるのか、今から楽しみだ。<2013-09-19 記>