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新谷祥子 マリンバ弾きがたり 「Rock Marimba」 南青山MANDALA 2009.07.31.

彼女のヴォーカルは不思議だ。僕が初めて観たチャボとの共演での印象を書いた事がある。

それにしても新谷さんは素晴らしかった。巧みにマリンバを叩き、パーカッションを操る。優しさと強さ、その表現力、数曲で披露したヴォイス…。完全に目と耳を奪われる。演奏中の彼女はワイルドであるが、美しい。視覚的にもとても素敵なミュージシャンである。カッコよかった。しかも、曲が終わるたびに見せてくれた笑顔がとてもチャーミングで、そのギャップがまた良かった。

この時は歌を披露するというよりもヴォイスという感じだったので、強く印象に残ったということは無かったけれど、その後の共演で彼女自身の歌を聴かせてくれるに従い、そのヴォーカルが気になりだし、だんだんとハマッてしまった。歌い方や声質は、一聴すると線の細い…人によっては弱々しい歌に聴こえるかもしれない。でも、まったくそんなことは無い。これは彼女の " ヴォーカル・スタイル " なのだと思う。更に言えば、僕の想像では意識しているのではなく、自然にそうなっているのだと思う。だから時々見せる…そして所々で聴ける力強い声がやたらと刺激的かつ魅力的である。彼女の声には何かがあると思う。

そんな彼女の、歌を中心としたソロ・ライヴ。過去にその一部だけ(チャボがゲストで出たので)を赤坂で観ているとはいえ、今回はライヴを通して彼女だけだ。どんなライヴなんだろう…と期待して出かけた。

会場はチャボのMonthlyでお馴染みの南青山MANDALA。ステージには向かって左にピアノ、中央にマリンバ、右にはヴィブラフォン。それぞれの楽器が大きいのでステージは窮屈そうだったけれど、それらを眺めているだけで楽しい。

MCで彼女が言っていたように、この日は新曲がかなりの数で披露されたようだ。そんなオリジナル曲の合間に色々なカヴァー曲が挟まるという構成。取り上げられるカヴァーは、例えば直球ど真ん中のジョン・レノン「イマジン」から、「リンゴの唄」、「時には母のない子のように」など多岐にわたるジャンルだったのも良かった。ただ、曲は直球でもアレンジは変化球である。しかも楽器はマリンバなわけで、今まで観たことも無い変化球だった。

オリジナル曲は、僕にとってはチャボとの共演により聴きなれた「冴えた月の下で」、そして名古屋で聴いて感動した「ピクニック・ボーイ」が歌われたので嬉しかった。目の前では新谷さん一人が演奏し歌っているのだが、この二曲だけは僕の脳内でチャボのギターとコーラスが鳴ったりして、おかげで独特の楽しみ方(笑)ができたように思う。ちなみに「冴えた月の下で」のとき、会場にもキレイな月が出ていた。素晴らしい照明だった。

そしてもう1曲、チャボとの共演で印象的だった曲が歌われた。しかもそれはチャボの曲のカヴァーだ。でも、そんな曲なのに僕の脳内でチャボのギターや歌が再生されることは無かった。ピアノで弾き語る彼女の解釈が素晴らしいからだ。

「ガルシアの風」。この曲の新谷祥子ヴァージョンを聴くのは三回目だが、この日も含めてそのすべてが違うアレンジであり、すべてが感動的だった。

ところで「ガルシアの風」の前、チャボとの共演についてのMCがあった。初共演にあたっては、チャボの曲はもちろん、RCサクセションを含むすべてを聴き込み、何の曲が来てもOKという状態で待っていたそうである。

ライヴ終了後に会場で会った友達と、このあいだの福岡で「キモちE」をチャボと新谷さんが二人で演奏した話になった。僕自身 " 聴きたかったなー " という思いと同時に、" いったいどんな「キモちE」だったんだー " と想像できなかったけれど、彼女のこの話を聞いたら納得できるよね。どんな曲でも演奏できるイメージが彼女の中にはあるのだろうなぁ。きっと「チャンスは今夜」でも大丈夫だな…というか、それを聴きたいけれど(笑)。

そういえば「リンゴの唄」のときも、この曲を取り上げたきっかけは、梅津和時が吹いていたのを聴いたこと…のような話をしていたけれど、チャボや梅津さんがでてくるこんなMCを理解できていたお客さんは、いったいあの場に何人いたのだろうか(笑)。

とても素敵なライヴだった。僕の身体に残っているのは、間違いなく彼女の歌だ。初めて披露されたという曲の中にも、もう一度聴きたいと思うものがある。今後はライヴはもちろんだが、彼女の歌を中心にした作品を是非、CDで発表して欲しいと思う。<2009-08-01 記>

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