名盤ライヴ SOMEDAY 佐野元春 Zepp DiverCity Tokyo 2013.11.16.
僕は『SOMEDAY』を31年ぶりに聴くというわけではない。今でも普段の生活の中でよく聴くレコード(CD)のうちの1枚だ。だから今回のライヴに、所謂ノスタルジーや懐かしさを求めていたのではない。それを感じたいのならば、そういう気分でレコード(CD)を聴いたほうがいいし、そのほうが間違いない。
それでは何を期待していたのかと言えば、実はよくわからなかった。自分の中ではハッキリと言葉や文章にはできなかった。1曲目の「Sugartime」を聴くまで…いや、「Sugartime」のイントロを聴くまでは。
アルバム『SOMEDAY』の完全再現と言われても、もちろん期待はしていながらも、気持ちの中で " さすがにそんなことはないだろう " と思う自分もいたのも事実。この思いは " できないだろう " ではなく " やらないだろう " に近い。
しかし客電が消え、ステージ後方のスクリーンに『SOMEDAY』のアナログ盤が映り、それをターンテーブルにのせて針を落とす…という映像と同時に、FRONT SIDE1曲目の「Sugartime」のイントロがあの音で鳴った瞬間、それまでアタマの中にあったものがすべて吹き飛んだ。
Dance!Dance!Dance!
素敵さBaby
5小節目から自然と口をついて出る歌詞。これは歌う…という、歌いたい…という、歌おう…という意思ではなかったと思う。何も考えずに歌っていたとしか書けないのだけれど、そんなことだったんだろう。
目の前でオリジナル・レコード通りに収録曲が演奏されていく。元春のMCも最低限だったのも結果的に僕にとってはよかった。良くも悪くも『SOMEDAY』にこびりついている個人的な想いをそこに投影することなく、本当にレコードを生演奏で聴いている時間だったからだ。これはどんなことだったのかというと、ライヴのテーマである " 名盤 " 。これをあらためて実感し、元春とバンドとお客さんで共有したということである。1982年の音を2013年の音で。
楽しかった。実に楽しく、本当に楽しいライヴだった。僕は楽しみたかったのだ、きっと。そして、その通りになったのだ。
音楽だけにしかない素晴らしい体験。それは存在している。信じている。僕は実際に体験しているからわかる。ただし、そう何度もそれを体験できるわけでもない。でも、その数少ない体験にこの日が加わったことは間違いない。素晴らしいライヴをありがとう。<2013-11-17 記>
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