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林静一展 上映会&ライヴ 2008.01.25. いちょうホール

八王子市夢美術館で『林静一展 1967-2007』が開催されている。デビュー40周年を記念したものだ。作品の展示とは別に、期間中はサイン会やトークショーなどの関連したEventも開催されているのだが、今回はそのうちのひとつが僕の目当てであった。

1月25日。『上映会&ライヴ』と題されたそれに行ってきた。場所はいちょうホール。作品が展示されている美術館とは別会場になる。平日のため、時間の関係で美術館に足を運べず、作品を観ることができなかったことはとても残念だったけれど…。

まず、第一部として、林静一の映像作品の上映である。最初に上映されたのは、個人として初めて制作したアニメーション作品だという「かげ」。たった4分の短い作品なのだが、これを観たほとんどの人が原爆をテーマにした作品…と思ったのではないだろうか。

「かげ」の上映後、林さんがステージに登場し、挨拶があった。そこでは、この「かげ」についてご自身の解説があった。やはり広島の原爆をモチーフにした実験アニメということだ。原爆の熱線により銀行の入口の階段に残った人の影…というものが実際にあるのだが、林さんは「この人は原爆が無ければ銀行に行ったあとにどういう生活だったんだろう」と思い、その後を想像したLOVE STORYとして作品化したそうである。林さん、25歳のときの作品。これは、紀伊国屋書店から出ている『日本アートアニメーション映画選集』で観ることができるようだ。ただし、DVD全12巻のとんでもないコレクション(価格もとんでもない!)です。

次はロッテのキャンディ「小梅」のCM集。74年からの全作品(?)が上映されたのだが、これは面白かった。74年からということは、僕自身はすべてTVで観ていたはずだし、もちろんCM自体の記憶はある。しかし、その内容については、まったくアタマの中から飛んでいる。よって、懐かしいという思いは無かったのだが、CMというより作品として鑑賞…、しかもまとめて観ることになるので、時代によるその絵や色の変化は素人の僕にもわかるし、CMソングのアレンジの変化も面白かった。特に80年代になってからは、時代なのか少々ニューウェイヴ的な音の感触もあったりして楽しめた。上映時間は7分。なかなか貴重なものを観ることができたと思う。

第一部の最後は、画ニメ作品『赤色エレジー』の上映。既にDVDを購入し、何度か観ていたのでどうかなぁ…なんて思っていたが、いやいや感動してしまった。本気で。そもそもこのDVDを入手したのは、作品への興味よりも音楽にあったので、家での鑑賞の仕方は間違っていたのかもしれない。当時の原作漫画とはかけ離れているものだと思うが、現代の「赤色エレジー」として観れば、また違った良さがあるのではないだろうか。

さて、林静一展であるからして、ここまでがメインなのだろうが、僕にとってはこのあとがメインなのだ。ここまで名前を出さずに引っ張ってきたが、『上映会&ライヴ』のライヴというのは、浜田真理子のライヴなのだから。

セッティングのために下ろされた幕が開くと、ステージ中央にはSteinway & Sonsのピアノが置かれているだけだった。いつもの光景だが、これを観ただけで胸が期待で膨らむ。

ライヴは神奈川県立音楽堂で初めて聴いた「愛の風」で始まった。おそらく、この一曲だけで、会場にいる浜田真理子を初めて観た・聴いた林静一ファンの人の心をキャッチしたのではないだろうか。僕があの時そうだったように。

一曲を歌い終わると、林さんがステージに現れ、しばらくお二人のトークとなった。アルバム『夜も昼も』のジャケットを手掛けたことが付き合いの始まりのようだが、そのジャケットの原画(だろうか?)もステージに登場。欲しい…。

再びライヴへ。いきなり「爪紅のワルツ」だ。最初のピアノの音が鳴った瞬間に心がどこかに飛ばされる…と言ったら大袈裟だろうが、そんな感じになるのは事実。ライヴでは、その破壊力は数倍にもなる。何度聴いても凄い曲だ。

ライヴ前に八王子の雪についてのニュースを聞いた…というMCがあった。それならばと曲を差し替えたそうで、歌われたのは「雪が降る」のカヴァー。この日の八王子は雪では無かったが、素敵だった。この手のスタンダードも、彼女が歌うととても新鮮に聴こえる。

さて、ライヴで楽しみにしていたのが、演らないわけは無いだろうの「赤色エレジー」だった。DVDでは<収録されていないと言ってもいいくらい>の扱いだったので、どうしてもこのカヴァーの全豹を知りたかったのだ。

その「赤色エレジー」は、何のMCも無く中盤で歌われた。もちろん、ある程度の想像はしていたのだけれど…。聴き終えたときはあまりの美しさに言葉を無くしてしまった。今、あの時の僕の気持ちを表す形容詞を見つけることはできない。単なる拍手だけしか送ることができないことがもどかしかった。本当に素晴らしかった。

ライヴはコンパクトなものだったが、いくつかの新曲も披露されたし、かなり充実したメニューだったと思う。もし、僕がこのライヴに点数をつけることができるとしたら、満点をつけたい。それほど、僕にとってはこの日の彼女の歌とピアノは最高だった。

P.S.
そういえば、宮城県仙台土産として有名な「萩の月」。このお菓子のイラストを手掛けているのも林静一なのだが、その「萩の月」のCMソングを浜田真理子に依頼したそうなのだ。製造元の菓匠三全ホームページによれば、

“ 2008年初春に「萩の月」のCMが宮城県内にて放映中。
林静一画伯の描きおろしのアニメーションが展開する、美しくも豊かな時の流れ。
どうぞご覧くださいませ! ”

とある。CMはもう流れているのだろうか。観ることができる方々が羨ましい。<2008-01-26 記>

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