L'ULTIMO BACIO Anno13 10th Anniversary 佐野元春 and THE COYOTE BAND 恵比寿ザ・ガーデンホール 2013.12.17.
今夜はどんなメニューなんだろう?
開演前はこんな風に気楽に構えていた。客電が消え、特に演出もなくメンバーがステージに現れる。佐野元春に至っては演奏前に軽く挨拶までしてくれた。不意を突かれて一瞬、気が緩んだそのとき。これまでいったい何回聴いたのだろうかという曲のイントロが鳴った。
『Moto Singles 1980-1989』のライナーにある曲解説にはこう書かれていた。
初期のステージでは
この曲が必ずトップナンバーとして演奏され
楽しい雰囲気を作っていた
まさにその曲がトップ・ナンバーとして演奏されたのである。その曲、「Night Life」を聴いて一気に盛り上がる。盛り上がるというのは、もちろん興奮しているわけであるが、単にそれだけではない感情が頭に浮かび、身体を包んでいた。音楽でしか味わうことができない感動。これはこのようにしか言葉や文章で表すことができないものである。なかなか体験できないものでもあるが、今夜はそれがあった。素敵な夜だった。
『ZOOEY』からのナンバーと初期の代表曲によるセット・リストは、コヨーテ・バンドの音を気に入っている僕にとっては最高。ただし今回はドラムが古田たかしだったので、リズムは重め。しーたかの良さもあるけれど、個人的には小松シゲルのドラムがとても好みなので、やや残念な気もした。
お気に入りの「ポーラスタア」は、何故だかアレンジを変えて演奏された。動機は不明だが、アレンジを変えて云々するには、あまりにも生まれたばかりの曲であり、まだそんな必要もないし、必然性も感じられなかったというのが正直なところ。だってオリジナル・ヴァージョンでまったくじゅうぶんに素晴らしいではないか。
今夜の目玉であっただろう新曲のクリスマス・ソング「みんなの願いかなう日まで」。「クリスマス・タイム・イン・ブルー」という名曲があるのに、また何故…と思ったし、実際にラジオで聴いた印象も今ひとつ薄かったのだけれど、ライヴで聴くと印象はガラッと変わってしまったので、あらためてチェックしなおしてみたい。
本編は「悲しきレイディオ」で、アンコールは「アンジェリーナ」で締めた。怒涛の演奏だった。もちろんこれでおしまい…だったのだけれど、最後の挨拶で元春の " L'ULTIMO(のスタッフ?)に何か言いたいことは? " に対し、ひとりのファンから " もう1曲! " の声がかかった。客席は大いに盛り上がったのはもちろんだが、それが見事に元春に伝染したのだ。ステージでメンバーと軽く打ち合わせをし、" 負けたよ " とひとこと。そして " リプリーズ! Night Life! " で、再び「Night Life」が演奏されたのだ。
こうしたサプライズに出会う確率は本当に低いと思うし、それが自分の好きな何かである確率はさらに低くなるだろう。この夜は、その両方があったのである。
ここ数年、あまりクリスマスめいた気分になることはなかったけれど、久しぶりにココロから思うことができた。素敵なクリスマス・プレゼントももらえたなぁ…って。<2013-12-18 記>
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