佐野元春30周年アニヴァーサリー・ツアー・ファイナル All Flowers In Time TOKYO 国際フォーラム 2011.06.19.

3.11の影響で延期になった30周年を記念したツアーのファイナル。もちろん中止ではなく延期開催であったことは喜ぶべきことだけれど、そのもとになっている本来開催されるはずだった3月13日は、本人にとってもファンにとっても、おそらく絶対にその日でなければ…という日だったのではないか。理由は、その日が佐野元春のBirthdayだったからである。

そんなこともあり、昨日と今日と国際フォーラムで行われた2Daysには、特別な思いを持って足を運んだファンは多かっただろうと思う。

更に言えば、「警告どおり 計画どおり」を歌った人である。3.11後に何を語るのか、何を歌うのか…にも注目していた人も少なくなかったに違いない。さすがにこの曲が演奏されるとは思っていなかったけれど、僕も何かしらの言葉が聞けるのかな…なんてことは思っていた。

蓋を開けてみれば、3時間通してMCは最低限であり、曲がぶっ通しで演奏された。震災に関する話と言えば、本編ラストの「悲しきRADIO」の前にチラッと触れられただけ。それもネガティヴなものではなく、まったくポジティヴなものだった。

演奏された曲自体も聴いて前を向けそうなものばかり。決してその歌われている内容云々でそう感じるのではなく、ファンのそれらの曲に対しての特別な思いを受け止めているかのような演奏なのだ。そんな特別な思いを特別に受け止め特別に出されるのだから、そりゃぁもう…だ。しかも、アンコールはスピード感が凄まじかった「アンジェリーナ」1曲のみという、全体的にも、実に清々しい構成だった。

僕のようなライヴに頻繁に足を運んでいないファンでも十分に…いや、十分どころか完璧に楽しめるセット・リスト。いきなり「君を探している」「HAPPY MAN」「ガラスのジェネレーション」。そして「TONIGHT」「COME SHINING」「COMPLICATION SHAKEDOWN」。今の僕が目の前のライヴを楽しむと同時に、高校~大学時代の僕までもが楽しんでいた。「ガラスのジェネレーション」を聴けば、この曲にインスパイアされた曲を作ってバンドで演ったこと。「COMPLICATION SHAKEDOWN」を聴けば、大学のサークルの溜まり場で " 今度の佐野元春の新譜はカッコイイぜ! " と盛り上がったこと。いちいちこんなことがライヴ中に同時進行することも多かった。

30周年ツアーで最終日。本来ならば誕生日に開催されるはずだったライヴ。こういった性質のライヴは、アーティスト対観客全員ではなく、どれだけ多くの1対1を生み出し、それがまとまって、ひとつの大きな感動になっていくか…。こんなことが絶対に必要な条件だと僕は思っているのだけれど、その意味では、まったくその通りのライヴだったのではないか。

僕と佐野元春の音楽との関係には誰も立ち入ることができないし、その逆もまたしかり。だからこそ、一人一人のそんな思いの強さに触れさせてくれ、一人一人の想いの深さを感じさせてくるライヴが素晴らしいのだ。この日はそんな夜だったように思った。<2011-06-19 記>

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