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KISS END OF THE WORLD TOUR 盛岡タカヤアリーナ 2019.12.14.

黒っぽいハイエース? が3台、盛岡駅の降車場についた。最初にドアが開いたのは1台目だったと思う。降りてきたトミー・セイヤーの姿をキャッチした。トミー! と声が出そうになったが、2台目、3台目のドアが開き、黒いパーカーのフードを被った長身の男が目に入った途端、僕のアタマとココロがショートした。

  ジーン・シモンズ!

さっきまでステージでベースを抱えてシャウトし、火を噴き、血を吐き、ロックン・ロールしていた男が、僕に向かって歩いてくる。何か気の利いた言葉を伝えたい…と、一瞬だけ思ったが、もちろんそんな英語力は無いことを悟った僕が発したこと、発せられること、発することができたこと、そして発したいと思ったことは、感謝。ありがとうの一言だった。

  ジーン!
  サンキュー!

この陳腐で単純な、しかし40年をこえる思い入れが詰まった僕のメッセージに、何とジーンはグータッチで応えてくれたのである。

  !!!

何が何だかわからない興奮と喜びで混乱した僕の視界に、あの大きな瞳が入ってきた。とっさに…いや、反射的に叫んでいた。

  ポール!
  サンキュー!

スターチャイルド…ポール・スタンレーは " まぁ、落ち着けよ " と、僕の興奮を冷ましてくれるかのように、" サンキュー " と控えめに、しかしハッキリと返してくれた。聴きなれた声がホールド・ミー・タッチ・ミーしていたことに感動した。

この間、30秒…長くても1分に満たない時間だったと思うが、決して数字では計ることのできない、ロック・ヒーローと僕が過ごした夢のようなひとときである。
     
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偶然だったのだろう。しかし、ここに至るまでの経緯を冷静に振り返ってみれば、何かひとつでも欠けていたら、そしてひとつでも何かが加わっていたとしたら、これはなかったのだ。盛岡公演を僕が選んだのは、最後の来日だからなるべく近くで体験したいという理由だが、今となっては、もう呼ばれたとしか思えない。

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こうして、僕にとっての最後のキッス来日公演は、最高の結末で終わった。アリーナ公演を体験できるだけで満足だったのに、こんな展開が待っていようとは、夢にも思わなかったし、思えなかったし、思うはずもなかった。

10代の頃、雑誌の写真や記事で見るだけの、そしてレコードで聴くだけの存在だった二人と、40年以上の時間を経て会うことができ、ありがとうと伝えられたこと。これを演出してくれた誰かがいるのだとしたら、ココロから感謝する。この結末は偶然ではない。

しかし、キッスと僕の物語はこれで終わりではない。終わるわけがないし、終わらせるつもりもない。これからも僕の中でまだまだ続くだろうし、続かせていくだろうし、続いていくだろう。

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開演前のBGMがレッド・ツェッペリンの「ロックン・ロール」になり、客電がおちた。キッス・アーミーのロゴが浮かびあがり、あのアナウンスが響き渡る。

世界でもっとも熱いバンド!
キッス!

これまでにいちばん聴いたかもしれない曲のイントロが鳴る。幕が切って落とされ、天から降りてくる4人を見た瞬間から、既に僕の興奮は最高潮である。

「Deuce」のエンディング・フォーメーションでは、後方のスクリーンにも、過去の同じフォーメーション・シーンがいくつか映しだされる。喜びと興奮と切なさが同時に押し寄せる、実に感動的な演出だった。

火を吹き、血を吐くジーン・シモンズは、わかっているのだけれど、何度もみているのだけれど、かっこいい。興奮する。

とっくに10代ではなくなった自分が、10代と同じような気持ちでジーンを見つめ、やはり10代のような笑顔であるのが、とてもよくわかる。演奏の一部でもある長い舌と共に、もう生で見ることができないのが残念だ。

アリーナ後方の中央へ飛んでくるポール・スタンレー。セットされているのは小さなステージだが、ここで歌われる「Love Gun」、「I Was Made for Lovin’ You」の何と大きなことか。このシーンも定番だが、すべての観客に気を届ける姿は感動的だ。

そしてこれも毎回思うことだが、おそらく、あの場にいたほとんどの人が、自分とポールの目があったと思ったことだろう。素晴らしい。

「Beth」で歌われる歌詞が沁みて、こんなにも心が動かされるとは、『地獄の軍団』を夢中で聴いていたころには想像できなかったことだ。

  Me and the boys will be playing all night

Meはキッス。そしてBoysはあの場にいたファン全員だ。

アリーナを埋め尽くす紙ふぶきとバルーンが躍る中、" rock and roll all nite and party every day " が飛び交い、ポールがギターを破壊する。キッスのライヴでしか体験できないカタルシス。

Good Night!

最高を望む僕に、キッスは最高をくれた。

出会いは1976年。もう43年なんだ。<2019-12-19 記>

END OF THE ROAD WORLD TOUR
2019.12.14 盛岡タカヤアリーナ

Detroit Rock City
Shout It Out Loud
Deuce
Say Yeah
I Love It Loud
Heaven’s on Fire
War Machine
Lick It Up
Calling Dr. Love
100,000 Years
Cold Gin
God of Thunder
Psycho Circus
Let Me Go, Rock’n’ Roll
SUKIYAKI
Love Gun
I Was Made for Lovin’ You
Black Diamond

【Encore】
Beth
Do you love me
Rock and Roll All Nite

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