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石橋凌 Neo Retro Music 2015 Zepp Divercity TOKYO 2015.03.20.

伊東ミキオのピアノだけで「最果て」を歌い、そこに藤井一彦が加わった「待合室にて」と続き、更に渡辺圭一と池畑潤二が登場しての「縁のブルース」から、最後に梅津和時のフルメンバーによる「乾いた花」。このウォーミングアップ的、かつ既にハイライト的オープニング。たった4曲だけで現在の石橋凌バンドの魅力がすべて表現されていたように感じます。

1月にリリースされたミニ・アルバムに伴うツアー最終日。MCでは凌なりの強いメッセージもありましたが、全編を通してPOPでポジティヴな面が中心になった内容で、その音楽をあのバンドが演奏するわけで、もう何と言ったらよいか…。余裕をかまし、緩急をつけ、激しく、優しく…という音に惹きこまれ、感動し、気持ちが高ぶり、心を揺さぶられました。この、まさにロックをロックとして鳴らすバンドをバックに、凌は終始気持ちよく歌っていました。ステージも客席も笑顔に溢れたライヴでした。

新作と前作の曲はまったく違和感なく混ざりあい、そこにカヴァーとARBの曲がスパイス的にちりばめられたメニュー。音楽活動再開後の曲がARB時代の代表曲よりも力強いのが印象的で、それは今のバンドとのタッグが完璧な証拠です。ARBナンバーも生まれ変わって提示されるわけで、懐かしいというよりも、新しい曲として聴ける喜びが勝ります。

僕自身、笑顔で楽しくよい気分で聴いていたのですが、中盤に差し掛かるという頃でしょうか、「Heavy Days」が演奏されました。歌っていた凌が、ふいに客席にマイクを向けました。昔からお馴染みの光景ですし、僕も慣れていたはずですし、この曲の、あの箇所だったのも珍しいものではなかったはずです。しかし、そのフレーズ…♪ Oh Heavy Days を声に出した瞬間、心が反応し、目と鼻の奥が反応しました。涙…。これを人に伝えるために言葉や文章で説明することはできないのですが、自分の中ではハッキリと認識できる感情です。そして、音楽でしか体験できない素敵なものでもあります。この瞬間だけで、このライヴに来てよかったと心から思いました。

アンコール。最初は目に入りませんでしたが、途中でふと、凌の後ろのマーシャルのアンプに気づきました。すぐにピンときました。その後に展開された鮎川誠とのロックン・ロール3連発。「Johnny B.Goode」「Stand By Me」「Got My Mojo Working」。ここは泣けました。凌が亡くなったシーナにふれた後に紹介されて登場した鮎川さん。その鮎川さん自身のMCも切なくなりましたが、" 凌がロックン・ロールで元気にやろうと呼んでくれた " と聴いた瞬間、再び心が大きく反応しました。涙が出てきたのはシーナのことでの悲しみではありません。音楽とロックの素晴らしさに泣けたのだと思います。ステージの上では7人のミュージシャンがロックン・ロールしているだけですが、その姿がとてもきれいに…美しく感じられました。音楽は素晴らしい、ロックは素晴らしいということをあらためて確信できました。

あぁ、音楽を好きでよかったなぁ。音楽があって本当によかったなぁ。凌、ありがとう。<2015-03-21 記>

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