石橋凌 SOULFUL CARNIVAL 赤坂BLITZ 2016.07.20.
2011年にソロでの音楽活動を再開した際に凌は、" 昔みたいに使命感やストレスを抱えて歌いたくない。音楽を楽しみたい " と発言していた。ソロ活動再開後のライヴを何度か観たが、間違いなくこれらを実践していたし、ステージ上で見せる笑顔やバンドとの雰囲気などから、本当に音楽を楽しんでいることが伝わってきた。ARB時代の曲は、凌の自作曲のみという限定されたものだったが、それでも歌うのは石橋凌であり、演奏はあのメンバーなわけで、満足しないことは無かった。
たくさんのミュージシャンと共に、石橋凌60歳のバースデーを祝うライヴ。音楽を楽しみたいという今の凌とバンドが、縁のあるミュージシャンたちと演奏するのである。これまでも同様のライヴをいくつか観てきた。そのどれもが僕にとっては印象に残る感動的なものだったが、この日も間違いなく過去のそんなひとつに加わることになった。
ゲストが自分の持ち歌と凌の曲を演奏するというのが基本的な構成。そのゲストが選曲したという凌の曲は、ほとんどがARBナンバーだった。
偶然か意識してなのか、選ばれていたのが凌の自作曲と言うのは引き継がれていたが、それでも増子直純の「空を突き破れ!」、花田+池畑+井上ルースターズの「BOYS & GIRLS」、中村獅童の「魂こがして(シングル・ヴァージョン!)」、土屋公平の「ワイルド・ローティーン・ガール」など、ARBの1stから3rdアルバム収録の、比較的初期、かつ代表的なナンバーが多かったことと、それをゲストと凌がセッションするわけで、おかげで普段のソロ・ライヴ以上に " ARBが解禁された感 " が強く感じられた内容だった。
中でも「魂こがして」がシングル・ヴァージョンで歌われたのは特筆すべきだ。アカペラ的なバラードで歌われるようになって久しいが、オリジナル・アレンジで聴きたいと思っていたファンは少なくないと思う。しかもバックは花田+池畑+井上であったからして、視覚的にも最高の場面になっていた。
終盤、楽しみにしていた仲井戸麗市の出演から、前半とは雰囲気が変わる。凌の " チャボさんが登場すると、それだけで場の空気が豊かになる " という発言がある。言葉にすれば和やかとか柔らかなどになるのだろうか。この日もチャボがステージに現れ、全メンバーをもれなく笑顔でいつもの指さし挨拶。そして " 凌、おめでとう。やっと大人になったなぁ " と声を発すると会場全体に色がつく。まさに場の空気が豊かになる…を体感できる瞬間だった。
ゲスト出演のチャボのギターとしては最高の部類だったことも挙げておきたい。その場任せのアドリヴではなく、" このギターを弾くぜ " という確かな意思を感じるプレイだった。凌とセッションしたのは「Dear my soulmate」。タイトルからも今や二人のテーマソングと言えるだろう。持ち歌としてはRCサクセションの「いい事ばかりはありゃしない」を演奏したのだが、藤井一彦と伊東ミキオにもヴォーカルをとらせる。こうした凌のバンドにもスポットをあてるのが実にチャボらしいところである。
この後の鮎川誠、柴山俊之はライヴのクライマックス的なパートであり、凌が二人と演った「ロックンロールの真っ最中」は集大成的なシーンだったと思う。
それにしても、チャボがどちらかと言うと目に見えないもので色をつける代表的な人だとしたら、柴山さんは衣装と髪の色、化粧など、存在そのもので色をつける代表だ。豊かさや柔らかさ、そしてやばさと危なさ。好対照な二人がこうしたロックの素晴らしい両面をあらためて知らしめてくれたと思う。柴山俊之と仲井戸麗市。いつか、ガチな二人のセッションも体験してみたいなぁ。
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70~80年代はシーナ&ロケッツとARBでお互いぶっ飛ばし
90年代、21世紀と生き延びて、俺も凌も60になってもロックしてるのが最高
こうMCした直後に鮎川誠は「ホラ吹きイナズマ」のイントロを弾いた。あの夜は、このシーンに尽きる気がしている。4時間のあいだ、心に残り、目に焼きついたシーンは数多くあったけれど、この鮎川さんのMCからの「ホラ吹きイナズマ」の場面は、音楽…ロックの素晴らしさを象徴していた気がする。
音楽を楽しむ…という凌の想いが出演者にも引き継がれ、もちろん客席にもそれが伝わった夜だったはずだ。そして僕は、ロックン・ロールしてきた人たちから再び、あらためて、そして新しき素晴らしき音楽を教えてもらった夜でもあった。
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最高級のロック…音楽でお腹がいっぱいになった。名場面の連続に感動、感激、興奮の4時間。凌の音楽を好きで本当に良かった。60歳の誕生日おめでとう! 素敵なバースデー・ライヴをありがとう!<2016-07-23 記>
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