泉谷しげる with LOSER ARABAKI ROCK FEST.12 BAN-ETSU 2012.04.28.
そりゃ、いくらこの5人が再び集まったからと言っても約20年ぶりだよ。しかも急造でのフェス出演だし、いくら期待していた僕でも、全盛期の音が鳴るライヴを観られるとは思っていなかった。そしてその通り、泉谷も自分のブログに書いているように目立つミスもあったし、音だって固まっていたわけではない。
でも、音楽というのは不思議なもので、その場で鳴っている音だけが音楽ではない。自分だけに聴こえてくる音や、自分だけが感じられる音も間違いなくある。素直なココロを持ち、素直な気持ちで接すれば、絶対にそれは聴こえてくるし、感じることができる…と僕は思う。それが音楽の素敵なところであり、それだから音楽が素晴らしいと思えるのだ。
ARABAKI ROCK FEST.12の泉谷しげる with LOSERは、そんなライヴだった。素晴らしかった。
陽が暮れていくBAN-ETSUステージでセッティングが始まる。左右にチャボのギターと下山のギターが並べられる。その光景を見ただけで感激。あぁ、本当にここにオリジナルLOSERが出てくるんだなぁ…と。一応、冷静を装っていたけれど、ココロの中はドキドキとわくわく。アタマの中では 『吠えるバラッド』 や 『HOWLING LIVE』 。そして 『IZUMIYA-SELF COVERS』 が鳴り響く。インターバルは2時間と長めだったが、今思えば、そんなに長く感じられなかった。それほど密かに静かに悟られずに興奮していたからだろう。
1曲目は「ハレルヤ」と踏んでいたいたのだが…。いきなり泉谷があのイントロを弾いた。「翼なき野郎ども」だった。続いて「デトロイト・ポーカー」。オープニングからクライマックス。もうこの時点で、何が何だかわけがわからない。中盤ではチャボの歪んだスライドが当時から大好きだった「Dのロック」が演奏され、「眠れない夜」になだれ込む。やっぱり何が何だかわけがわからない。ここまででも、こんなサービス・メニューでいいのかよって思うくらいの選曲。既に大満足だったが、逆にこの後の展開はいったいどうなるのか…と思っていたら、少し長めのMCがあり、一息ついて泉谷が歌いだした。
♪ なーがいぃ~ とも~との はーじまぁ~りにぃ~
泉谷が歌い終わると同時に入るポンタのドラム。下山のあのイントロとバッキング。そこに絡むチャボ。感無量…。2012年にこの曲をLOSERのライヴで聴くことができるとは…。「長い友との始まりに」は、20年ぶりのメンバーの再会にはもちろん、それを観る僕(や僕たち)との再会にも相応しい。泉谷、この曲を演ってくれてありがとう。
そして「春夏秋冬」。昨年のJAPAN JAM。エレカシとチャボ、泉谷のセッションで演奏されたLOSERヴァージョンでも感動したのに、今、僕の目の前では本物のLOSERが演っている。あのイントロを弾くのは下山淳なのである。2012年にこの曲をLOSERのライヴで聴くことができるとは…。
ラストはお約束の「野生のバラッド」。例の会場乱入に、「写真撮れ!」に、ジャンプに、腕立て伏せもあった。あれは今の泉谷のやらざるを得ない芸なのだろう。この間、当たり前だがダレずに演奏を続けたLOSERは美しい。
この日のBAN-ETSUのトリだったからか、LOSERにはアンコールがあった。盛り上がるというよりも、じっくりと聴いてしまったその曲は、吉田建による凄まじいイントロで始まった「国旗はためく下に」だった。
泉谷しげるはLOSERの柱としてそこに立っていた。笑顔で。チャボは冷静にバンマス的な役割を担っていたようにも思う。泉谷がミスするたびに演奏をまとめ、その後ポンタと建と顔を見合わせて笑う。3人とも愛に溢れた " しょーがねぇなー " という笑顔だった。そして下山淳。彼は前半、客席ではなくステージのほうを向き、他の4人を見てプレイしていた。素敵な笑顔だった。
笑顔に笑顔に、笑顔。LOSERのステージ上には幸せが溢れていた。そんなライヴを観ている僕が幸せな気持ちになったのは、もちろんこれがLOSERだからということもある。けれど、メンバーが幸せな気持ちでプレイする音は、その気持ちも含めお客さんに伝わるはずだ。だから僕も幸せだったのだ。初めて観た人たちにも、そんなものが伝わっていたらいいなぁと思う。<2012-05-01 記>
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