浜田真理子 Spring Triangle 晴れたら空に豆まいて 2022.03.07.
印象に残っているライヴが多い晴れ豆での浜田真理子だが、新たにこの夜がそこに加わることになった。
1曲目は弾き語りで「しゃれこうべと大砲」。これまで何度も聴いてきた曲だし、今、いわゆる反戦歌として歌われる意図も理解できたが、この日の僕の印象は過去のそれとは少し異なった。これまであまり彼女の歌からは感じることがなかった " 怒り " 。それがあった…と思う。ストレートなそれではなく、ほんのかすかに…なのだが、僕が、この夜、この歌から実際に受け取ったものだ。
曲間はいつも通りにくだけたMCだったけれど、1曲目から感じた、この凄みと緊張感は本編ラストまで続いた。
ライヴのタイトルはSpring Triangle。残り二つの角はMarino(Sax)と伊藤大地(Dr)。2曲目から三角が揃い、演奏したのが「きらめくひと」。ナマのライヴで聴くのはいつ以来だろう? 過去のブログを調べてみたら、僕が初めて聴いたのが2015年、しかも会場はここ、晴れ豆だった。そこでは "前日にかきあげた " と紹介されているので、生まれたての新曲を体験できていたのだなぁ。
出会いの喜びを個人的な体験をもとに歌う曲だが、それでありながら、誰もが自分に置き換えられるラヴ・ソングでもある。だから聴いた人それぞれのきらめくひとがあの場に浮かび、大きく、広く、深く、聴く人の心に沁み入ってくるのだ。
「しゃれこうべと大砲」から「きらめくひと」。会場をまるで異なる世界に、しかも誰もが違和感を感じず、さらに一瞬にして変えてしまったのが素晴らしかった。
印象に残った演奏をいくつか記しておく。
「ミシン」
どんなアレンジでも受け止められる曲を証明してくれた演奏。弾き語りの素晴らしさを知りつつも、今後も色々なアレンジで聴いてみたい。
「最后のダンスステップ」
場末のダンスホールを歌うようなこうしたカヴァーは実に彼女に似合う。
「スローバラード」
" 会いたかったなと思っているかたのひとりです " から、あのイントロが鳴った。こんなカヴァーは初めてだ…と、以前に弾き語りで聴いたときは思ったが、この日はサキソフォンとドラムがあるので、僕の中に浮かぶのは限定された景色だった。あの場にいたお客さんは、悪い予感のかけらもなく、よく似た夢をみたことだろう。
「のこされし者のうた」
ここではないどこかへ飛ばされる歌唱だった。浜田真理子の歌を形容する、
たとえば美しいとか沁みるのような言葉や単語。これらはすべて僕にはもどかしい。当てはまらないから…ということでは決してない。僕にはそれらを超える他の言葉があるとしか思えず、しかしそんな言葉はないからである。
心や気持ちがくたびれているときは、この人の歌を聴きに行けばいい。もう何度も思い、書いていることだが、このことをあらためて感じ、確信した夜だった。<2022-03-10 記>