White Stripes Zepp Tokyo 2006.03.06.
最上級の ”カッコイイ” で形容したいライヴだった。
本来は1月に予定されていた来日公演だったが、ジャックの声が出なくなったということで延期。このたび、無事に来日。振り替え公演が行われたわけだ。過去には2002年にFUJI ROCK Fes.にて初来日。翌2003年に単独で来日公演。FUJI ROCK Fes.には2004年にも出演。今回が4回目、単独では2回目の来日となる。
ホワイト・ストライプス。僕は2003年にその名前を知り、興味を持っていたが、そのまま音を聴かずという状態が続いていた。「いつか聴ければいいや」という、今思えばまったく馬鹿げた考え方だったのだ。
去年のある日、カー・ラジオから新曲として流れた「BLUE ORCHID」が初体験。渋谷陽一のラジオから流れたその曲にぶっ飛ばされた僕は、もちろん後に発売された新作を手にする。「ゲット・ビハインド・ミー・サタン」。悪魔よ、俺の後ろにつけ…とタイトルされたアルバム。伝説のブルース・マン、ロバート・ジョンソンの有名なクロスロードのエピソードに伴い付けられた(?)ように、ブルースを下敷きにしたハードなロックが展開するのだが、何といってもベース・レスという独特な編成。使われている楽器はジャックのギターとメグのドラムスだけなのである。メンバーも二人だ。
「ゲット・ビハインド~」にはマリンバ、ピアノが使用されている曲があり、このアルバムを手にする前に入手した前作「エレファント」(03)よりもバラエティにとんだサウンドであるが、基本のギター&ドラムスだけというのは変わらずである。
僕自身は「エレファント」以降しか知らないわけである。それ以前のバイオを見て思い切り簡単にまとめてみると、ガレージ・シーンの中のひとつのバンドから始まり、3枚目の「ホワイト・ブラッド・セルズ」(01)で注目を浴び、「エレファント」でブレイクしたらしい。
とにかく、その音だ。ブルースとパンクを融合させたサウンドと形容されていたようで、僕も実際に何かで ”パンク・ブルース” なんて書かれていたのを見たことがある。しかし、これはパンクというよりもハード・ロックに近い。ただ、 ”ロック” としか言い様が無い音なのは確かだ。繰り出されるバンドの命であろうリフを聴くだけで、すぐに凶暴な気持ちになる。ロックである。
今回の来日公演だが、僕が勝手に好きなバンドに置き換えてみると、例えばビートルズであれば65年の米ツアーかな。RCサクセションで言えば、81年の初武道館がファイナルとなるツアーだろう。そんな感じだ。要するに、いちばん旬な時期であろう…ということだ。
僕が観たのは東京での二日目。二階の指定席をとる事ができたので、客席も含め、そのステージの全容がわかる場所だ。
ステージはバンドのアイデンティティ・カラーの赤と白、黒でセンスよくまとめられていた。定刻から15分過ぎてBGMが「Who's A Big Baby?」になる。すると、ひょっこりとステージ左からジャックとメグが現れる。本当に「ひょっこり」という表現がピッタリに思えた。ちょっとイメージと違って気が緩んだのだが、メグがドラム・セットに座り、ジャックがギターを手にした途端…。その姿を観ただけで盛り上がる。既に何かが違うのだ。
一曲目はいきなり「BLUE ORCHID」。CDよりもテンポ・アップした殺人的なタテノリ・ヴァージョンであった。客席が波打つのを久々に観た。このオープニングだけでチケット代は消えた。カッコイイという言葉しか出てこない。武道館で観たローリング・ストーンズの「JUMPIN' JACK FLASH」に並ぶほどのロックな体験であった。
MCはほとんどなく、立て続けに曲が繰り出されていく。さらに、ギターの音がでかく轟音ライヴである。ジャックは一時も止まらずステージ上を動きまくり、歌いまくり、弾きまくる。それにしてもギタリストとしてのジャックは素晴らしい。ボトル・ネックを使用してのプレイも唸らせる。もちろんラフなプレイであるが、基本的なテクニックは確実に素晴らしいものを持っていると思う。しかし、こういうギタリストは日本には絶対に出てこないだろうなぁ。
メグのドラムスもパワフル&キュート&セクシー(というかエロティック)だ。元々女性のミュージシャンは好きなのだが、実際にこの目でメグを観てフェイヴァリットが一人また増えた。こんな調子ではさすがにバテるかと思ったが、最後までペースは乱れてはいなかった。
開演から40分ほどでいったん終了。その後、30分ほどアンコールに応え、正味70分か80分だったと思う。しかし、中身は2時間レベルのライヴであった。ギターとドラムスだけで、そこいらのバンド三つ分くらいの音を出しているのである。
とにかく ”凄いものを観た” という印象で、昨日から「エレファント」と「ゲット・ビハインド~」しか聴いていない。本当に最上級の ”カッコイイ” で形容したいライヴであった。<2006-03-07 記>