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私ではなくて 木が… / 新谷祥子 -2019-

5年ぶりの新作。14曲の収録曲は聴く前から構えてしまうヴォリュームだが、逆にそれだけ曲に触れる機会が多いことの楽しみもあるわけで、1曲目の音が出たとたん、その音に驚き、確かにマリンバの音なのだが、最初はスティールパン的な音色を感じた。演奏、使用楽器、スタジオなどを含む、今の新谷祥子のフィーリングからのサウンドなのだろう。これまでと異なる印象の音が心地よい。

この印象は最後まで、作品全体から感じられたが、こうした "異なる " を、違う言葉で説明するとしたら、例えば「別」の道を歩いたのではなく、「新たな」道を作ったと表現すればよいだろうか。新たな道を見つけたのではなく、作ったというのが近いように思う。しかし新境地というのとも違う気がするし、なかなかうまく言い表せない。人が少しずつ変わっていく中で、気づいたら新たな道が生まれていたのかも…しれない。それは変化でもあるが、自然でもあるのだと思う。レコーディングで感じたという変化・発見・刺激やマジックは、きっと彼女自身が作ったものなのだろうと思ったりする。

『Pas a Pas』依頼というエンジニアの高田英男さんの影響もあるのか音としてもバッチリと聴きごたえのある作品だ。

ライヴで披露されていた「美醜の星」や「Silver」の既発曲があっても、新しいサウンドで提示されているのでまったくの新曲として聴けた。そのためか、中盤までは緊張感を持って接していたのだが、チャボのギターが鳴った瞬間にガラッと変わった。彼女がブログにこう書いていた。
 
 " チャボさんのギターがどの部分で鳴り出すか、これもまたすごく重要でした "

あぁ、そういうことか…と思った。「one day true love comes」から、ワルツの「ピエロが歩けば」の流れはアルバムの肝で、確かにここから色がつくというか、色合いが変わるというか、華やかになる。新谷祥子の音楽に入り込むチャボは最高だ。今回のセッションもいい。

1stアルバムからじっくりと聴き返し、新谷祥子の変化をあらためて感じてみたいと思わせてくれる作品だ。<2019-08-18 記>

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