見出し画像

テリー・キャリアー「入れ子になってる」

入れ子というのは完全な間違いで「てれこ」と言わなければならない。ずっとこの話をする時に「入れ子」と言ってきた事を恥じる。

ピーター・バラカンの朝のFM番組で、リスナーからのリクエストが紹介されていた。エピソードを交えたその曲をリクエストした理由メールを読み上げた後、「偶然なんですが、僕も最近このCDを取り出して聴いているんです。曲は違うんですけれど」云々。こういう際のバラカンさんの喋りは最高に面白くて好きだ。この曲以外にももっと聴いてみたいなと思わせる術が実にソフトな口調で繰り出される。

それが、テリー・キャリアーだった。
ながらだったからか「うーん、なかなかいいなぁ」ぐらいな印象だった。

数日後。なにかのきっかけでNujabes(ヌジャベス)を聴いた。ひと聴き惚れしてしまった。それが、Ordinary Joe ft. Terry Callier だった。

YouTubeでしばらく聴いてみて、これは買はねばという我慢出来ない強い衝動に突き上げられたら買おうと静観していた。ライフライン以外は慎重に購入を検討せねばならないお財布事情が憎い。

そんな中、どの街だったか忘れたが、ディスクユニオンにふらっと入ってしまった。Nujabesはなかった。稀少で中古でも状態の良いものは安くない。ならばと、洋楽フロアの【SOUL】TかKかの前までふらふらっと歩いてしまった。ない。ある意味よかったという安堵感もあった。確実にライフラインではないし慎重な検討もなされていない。しかし、恐るべき魔の手・音楽蟻地獄らしきものがまだフロアに潜んでいた。

中古新入荷。(ちなみに言わずもがな【SOUL】TかKも中古棚)。恐ろしい。ありそうな予感しかしない。このコーナーの全枚数はさほど多くない。凝視しなくても見つけてしまいそうなヴォリュームだ。見つけた。早い。3枚もある。嘘だろ。3枚とにらめっこした時間は長かった。1枚各700円で外装越しだが、ほぼ新品同様あるいは非常に良い状態である。DUの状態表示ランクもAである。吟味に吟味を重ねて2枚購入することを決めた。1400円。ハブエール1パイントの2杯よりは安い。ビールはライフラインとしている。

電車の中で辛抱堪らず封を開けて解説を読んでしまう。幼いころ『ドラえもん』を買ってもらったが、辛抱堪らずバスかなんかで封を開けて読み始めて「ウチに帰ってからにしなさい!」と叱責されたような記憶があるが、入れ込み癖はまったく治っていない。

いい曲揃い。いいお買い物をしたなぁ。「ORDINARY JOE」が収録されている『OCCASIONAL RAIN』が聴き始めのお気に入りである。綺麗な女性がタバコを持ってソファに横たわっているジャケットの『WHAT COLOR IS LOVE』もこれから聴き込んでいこう。そんな矢先に気が付いた。

CDケースの裏に、ライナーノーツに、帯に書いてある【収録曲】に。すべてに書いてある収録曲と今聴いている曲が違う。購入してひと月はまだ経っていないほどであろうか。だいぶ経っちゃったしレシートもないけど電話しよう。私はクレーマーじゃありません。私はクレーマーではありません。そこに細心の注意を払ってお店に電話をした。そもそもクレームという内容ではない。ディスクを正しく交換しましょうというお話だ。キャリー・テリアーと言い間違える以外は満足のいく説明が出来た。

幸いにも残っていてくれた『I JUST CAN'T HELP MYSELF』~わたしは自分すら助けることが出来ない~。そんな感じであろうか。

郵送で送る案をだされるが、返信する面倒もあるので暇だから近日中に行きますと伝えた。翌日に行くと暇すぎるのがバレて恥ずかしいので2,3日空けてから行った。電話でお願いした通りもう1枚のアルバム『わたしは自分すら助けることが出来ない』を購入した。タダとは言わないが200円まけて500円ぐらいにしてくれないかぁと思ったが700円JUSTだった。ゴネたらそれこそモンスタークレーマーだ。

清々しい気分だ。お店のミスを私とお店のどちら共が幸せになれる形で収めた。自分自身の度量の大きさを感じ悦に入ってしまった。しかし、200円くらいまけてくれればお店だって僕と一緒でいい気持ちになれたのではないか。どこまでも小さい自分である。

この話は3,4度、人に話していてそれなりに好評を得ている実感をもっていた。noteで記事にするにあたりやや不安だったので「入れ子」と検索してみた。この場合「入れ子」ではなく「てれこ」な状態だと説明しなければならない。

軽くお喋りする分にはいいが、少ない人にでも文章をお見せするにはしっかりと調べてみる。すると、結構間違って言葉を使っていたことに気が付くものであるということでオチにさせてもらいたい。

テリー・キャリアーの音楽的感想を深く聞きたかった方、すみません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?