鮮度にこだわった『Patrick Vegee』考察&感想
さて、本日9/30はUNISON SQUARE GARDENの8枚目のアルバムとなる、『Patrick Vegee』の発売日です。いかがお過ごしでしょうか。皆さんはもう聴きましたか。何周か聴いてもよく分からない、私の感想も初めはそればかりでした。しかし、そうはいっても新曲には心惹かれるワードが込められており、読み解きたくなってしまう。
というわけで、昨日フラゲしたとはいえまだあまり聴き込めてはいないのだが、何周かは聴いたり歌詞を読んだりしたので、なんとか文章にしてみようと思う。ちなみに、私にとって初めてリアルタイムでユニゾンのアルバム発売に立ち会うこととなった(前回【MMM】は数ヶ月遅れだった)ので、せっかくなら公式から出される以外の情報はシャットアウトしよう、と考えた。それゆえに、GiGSやMUSICAやJAPANなど各雑誌は読んでいないので、前情報はかなり少ない。適当に感想とか疑問を並べているから、そのへんに答えがあるのかもしれないが、まあそこは大目に見てほしい。
今回は何よりも鮮度を優先したのでクオリティはご愛嬌ってことで。またしばらく経ってから、もう少しまとまった文章にするかもしれませんが、今のところはこんな感想です、という話です。
ちなみに、ネタバレを含みますので、最初はまっさらな気持ちで聴きたい! という方は回れ右でお願いします。やや長いですがよろしければお付き合いください。それではどうぞ!
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というわけで最初は「ココがすごいよパトベジ!」ということで、アルバム全体としての魅力について述べておく。
・発売日までタイトル当てクイズ
みなさんは参加されたのだろうか。公式YouTubeにて、発売1週間前から毎日1曲ずつ、新曲計7曲の10~20秒程度の試聴音源と歌詞が公開され、タイトルの一部が伏せられたものが発表されていた。
私自身は時間がなかったこともあり、ちゃんとこの企画には乗れていなかったのだが、Twitterで見ている限りでは、多くのフォロイーが毎日19時に更新されると試聴しタイトルを考える、というのをしていたようだった。それにしても、これ当てられた人なんているのか……?
・受注限定盤がデカい
CD+Blu-ray+ジグソーパズル+ディスプレイできる箱、からなる受注生産限定盤。宅配便で届いたときにはそのサイズに驚いた。しかも重い。これがCD? アルバム……? いえ、ほとんど重さがジグソーパズルです(多分)。
まだCDしか出してないから結局全貌は分かってないんだけど、部屋のどこかに飾るなら大規模な模様替えと片付けが必要かな…… と震えている。
・曲の繋ぎ方
これは7月のオンラインライブ「USG 2020 Live (in the) House」にて、新曲「弥生町ロンリープラネット」→「春が来てぼくら」の順に披露されたときに多くの人が気付いたことだったが、歌詞がリンクしているのだ。しかも、それがこの箇所だけでなく、このアルバムの中に沢山含まれている。
③→④レイテンシー、⑥→⑦幻、ジョーク、⑧→⑨ロンリー、⑨→⑩春が来る、など。
シングル3曲+ライブ披露1曲+MV公開1曲、と全12曲のうち5曲が明らかとなっていたわけだが、それをどうひとつのアルバムとして成立させるのか、と誰もが期待していたわけだが、こんな風に歌詞で繋いでくるとはなかなか思い付けなかったのではなかろうか。
このサブスク時代、ついにユニゾンもリリース同日解禁となったわけだが、一般的にサブスクにおいては最初の30秒で心を掴めるかが大事になってくると言われている。しかも、シングルなどの有名曲をはじめとした曲がプレイリストに組み込まれることも多く、1曲単位で聴かれることばかりなのだ。そんな時代でも、こういう工夫がされていると、アルバムを一つの作品として通して聴きたくなる。恐らくはそれを狙った上でのこの歌詞の構成なのだろう。ユニゾンは以前から、利益率は低くとも間口を広げられるサブスクを活用しながら、パッケージとしてのCDなどとも共存していく、としていたが、その手法を一つ見せつけられたように思う。
・各曲に出てくる数字
アルバムの各曲の中では、歌詞に数字が散りばめられている。ここではただ列挙しただけだが、ゆっくり読み解いたら何らかの関連性が見えてくるかもしれない。そういう深い考察はあとで考えます……
①hatch(8)、20000回、50000回
③ツーストライク、ツーアウト
④七変化、四半世紀
⑧千変万事、二次関数、一聴、変幻万化
⑨弥生
⑩一個パチリ
⑫101回目、4年、七色
とりあえず言えるのは、季節を表す語が(数字に限らず)含まれている曲がいくつかある。冬から春になり夏になり…… 、と、季節を感じさせるものだ。いいよねえ。
まあ、今考えたのはそれくらいです。またそのうち深く考えます。
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以上が、アルバム全体に関する感想でした。以下は、各曲感想&少しの考察。
①Hatch I need
タイトルにすでに8が含まれている。アルバム恒例の数字入り曲。みんながなんとなく大阪の某ライブハウスを想像してしまっているのではないだろうか(ちなみに私は未踏です、本当は6月くらいに行く予定があったんだけどなー)。
イントロのドゥドゥドゥドゥ…… から、なんとなく不穏な雰囲気を漂わせ、なのに試聴動画で事前に公開されていたサビ部分では明るい雰囲気で。それだけで、このアルバムが一聴のイメージ通りといった単純なものではないことを、ご丁寧にもリスナーであるこちらに示してくれているようだ。
タイトルはHatchが先だが、恐らく“I need Hatch, I need Hatch, I need Hatch, …”と繰り返されている。ちなみに、名詞のhatchは孵化とかそういう意味だ。孵化を必要とする、とは果たしてどういう状況であろうか……? いや、多分意味とか考えちゃいけないんだろうな。深く考えないようにしよ。
②マーメイドスキャンダラス
何周か聴いた中で、今のところ一番ハマった曲。
「夜を駆ける」というフレーズでスピファンの私は歓喜。最近、“夜”と“駆ける”だと全部「夜に駆ける」になっちゃってるからね……
そういえばマーメイドってどんな話なんだっけ、と思い返してみたが、人魚姫は声と引き換えに足を手に入れる、ってやつでしたね。で、最後は泡になって消えてしまう(クソ雑あらすじ)。詳細はWikipediaでどうぞ。
1サビラストの「スキャンダラス」の言い方が最高ですね。斎藤宏介にスキャンダラスという単語を歌わせようとした田淵智也が天才です。そもそも艶っぽさのある単語“スキャンダラス”を、最高に色っぽくしていて、クラッときた。これは「斎藤くんに歌わせたい歌詞」の解釈が一致しましたわ。良き。
「運命なら過去に置いてきたから 今になって大事そうに語らないで」っていう曲冒頭かつサビ頭の歌詞がとても響く。後ろを向きがちな日々や人生を送ってるけど、過去の決断を今更掘り返しても意味ないよ、って言われてる気分。誰しも、そういう人生の岐路で選択を迫られたことってあるだろうから、かなりの人数に刺さりそうな言葉だ。
あと、本当にちょっとしたことなんですが、物見遊山が“ゆさん”じゃなくて“ざ”で発音されてる気がしてならない…… 遊山ならザで発音することもあるはずだけど、物見が付いたら流石にサでは、いやまあ私の聞き間違いかな、うん。
③スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
英語の副題付きの曲。好きですー。クロスハート1号線とか夢が覚めたらとかマジョリティ/マイノリティとかね。括弧内の言葉の意味を考えたくなる。この場合のthatは関係詞? とか、まあ文法的なのは現役高校生に考えてもらいたいです。英語から離れて久しい私には無理っす。まあ、多分スロウカーヴのことを言ってるんでしょう。以上。
来春から社会人! という私にとっては、「即日解雇に処しますね」というのは恐怖のフレーズ……
「○○はおやつに入りますか?」という、この世で何度も使われてきた、Theベスト不毛な質問を、ユニゾンはこう使う、というのを見せつけられた気がした。しかもそこで挙げるのがネジって? 常人のワードチョイスでは有り得ない。
その他にも、ポップミュージックやロックフェスにも楯突く、いつもの彼ら(主に1人)の立場を表現していたり、「恋に短し愛に長し」っていう、元は定型表現だけど誰もここまで使ってこなかった恋と愛で対比させてみたりと、彼らのスタンスがよく現れた詞になっている。
1文目と同じ歌詞に、次曲のタイトルの一部「レイテンシー」を加えて曲を終わらせるの、一貫性がある感じで格好いい。しかもここから次への曲間が絶妙。これより長くても短くても違和感があるだろう。その丁度良さに感動する。
④Catch up, latency
2018年リリースの15枚目のシングル。MVの晴天と屋外の開放感のせいか、歌詞の「風」からか、とても爽やかな曲という印象を持っている。
個人的にこの曲は、間奏部分のメロディーがとても好き。MVでいうと、馬が駆けてきて田淵がかがんでるあたり。あと、歌詞でいうと「拝啓」と「敬具」を対にして使っているところに好感が持てる。拝啓って言葉だけが使われるシーンが多いからね。ちゃんと呼応させててえらい。
シングルver.よりアウトロのジャカジャカジャカ-っていうのがめちゃくちゃ長くなってる気がしてる。いや、しらんけど。
⑤摂食ビジランテ
イントロのジャッジャッジャッジャッに加わる斎藤宏介の声。とても音数が少ない。
歌詞は冒頭から「教育の死」と、社会問題を投げかけているようにも取れる。私も一端のアルバイト教育者として感じるところが無くはないが、ここではあえて深入りはしない。
ちなみに、ビジランテとは日本語で自警団の意味。歌詞とかアルバムタイトルからして、てっきりベジタリアンレストランのことかと思った(無知)。知らなかった。恥ずかしい。
「面倒くせえよ 忌々しい」というサビの歌詞がかなり攻撃的というか。しかもそれが1番も2番も続く。「斎藤くんに攻撃的な歌詞を歌わせたい」という作詞者の意向が透けて見える。でもわかる、格好いいもんね。
しかもその後には「ちっとも食べられない」「今日は残します」って続く。教育的には色々問題のある歌詞だ。まだよく意味が理解できていないから、今後聴いていく中で見つけたい。
⑥夏影テールライト
一応、リード曲という扱いなのだろうか? フラゲ日にMVが公開された。テールライトってテールランプと同義ですか? とペーパードライバー歴2年の私が申しております。
元々7月リリースの予定だったから夏曲がリード曲なのか、という考察を見つけたときに、とても胸がキュッとした。元々私は夏が好きだし、夏の始まり、夏の終わり、概念としての夏、などなど、夏と付くものは大抵好きだ。「この季節を好きでいたい」って。私も同感です。
冒頭、とくに「迷子の、迷子の」って2回繰り返すあたりが「mouth to mouse(sent you)」感がある。メロディ? 音? 分かんないけど。
この曲は途中で「夏影のせい」としてるが、責任転嫁する対象って色々あるよね。このフレーズを聴いて思い出したのはクリープハイプが夏のせいにしてることでした。多分他にもあるだろうけど今ちょっと思いつかないのでパス。
ラスサビ前のドラムのタタッタタンみたいなやつ、最高。専門用語分かんないけど、とても耳に心地よかった。聴いた人に伝われー。
⑦Phantom Joke
これがもう1年も前のリリースなのか…… と衝撃を受けている。音源解禁がアニメの初回で、30分間「ユニゾンはまだか!!」とテレビの前で待機したのも今となってははるか昔に感じられるなあ。
フルで初めて聴いたときには「変態的な曲だな」と思ったが、このアルバムに入っていて浮くことも無く、その点からもユニゾンの変態性を知ることができた。もちろんこの曲いい曲だし好きですよ。ただ、ライブになると((ちゃんと高音出るかな……))と不安になってしまうのは事実。なんだかんだまだオンラインでしか聴けてないので、早く生ライブで聴きたいです。
⑧世界はファンシー
このMVが解禁されたのが8/22のライブ後。それから1か月の間に何度見ただろうか✌️😎✌️
「グチャっとなってる」の部分は、発売前コピーの【なんかグチャっとしてんだよな。】に使われていた。
担当者のくだり、もちろん某曲との繋がりが指摘されているが、その曲が去年かなりクローズアップされて、ライブで演奏され、YouTubeにも動画が上がっている今、ここにこの歌詞を入れたのは新参者にも優しい構成だろう。こういうのを過去の楽曲も遡って探すと面白い、という楽しみ方を提示してくれているように思う。
何度聴いても、自分のギターソロの前に「My fantastic guitar!!!」って言う人、自信に溢れてるし、それを超えてくるクオリティなのが凄いですよね。
⑨弥生町ロンリープラネット
この曲は7/15で初披露。その時の演出も話題になったが、切なげで綺麗な曲だと思う。
結局私はここまで『椿町ロンリープラネット』を読んでないんですが、やっぱり読んでみた方が良いんですかね? 田淵くんが十数冊もあるシリーズものの少女漫画を読んでいるんだと思うと、なんかこう、不思議な情とでも言うべき謎の感情が湧き上がってきた。
そして弥生、つまり3月を冬の終わり、春の始まりとして、次曲に繋げる。タイアップアニメのタイトルに3月が入っていたな、というところまで思い出させる上手い歌詞だ……
⑩春が来てぼくら
個人的には思い入れのたくさんある曲。また春が来たらその辺の話も書こうと思います。本当にね、2年前の春はこの曲をめちゃくちゃ聴いていた思い出があります。聴きすぎて飽きるかと思いきや、逆で本当に本当に、好きな曲になった。今でもたまにエンドレスリピートで聴きたくなる曲。
ちょうど私がユニゾンにハマり始めたのがMMMリリース後だったから、このシングルがリリースされるかされないかくらいの季節。私にとってのリアルタイムのユニゾンの始まりでもある。MVの顔の良さに圧倒されたのも今となっては思い出。なんだかんだ今でも1番好きなMVです。
⑪Simple Simple Anecdote
「全部嫌になったなんて簡単に言うなよ 全部が何かってことに気づいてないだけ」、新たなユニゾンによる背中を押してくれるフレーズかもしれない。
「天秤」というワードで思い出すのはユニゾン未音源化曲『月と天秤』。まあ聴いたことはないので分かんないんですが、何か関係あるんですかね。詳しい方教えてください。
「今日はなんとかなるぜモード」、常に持っておきたいマインド。田淵み溢れる造語だなあ。
⑫101回目のプロローグ
「ごめん 全然聞いてなかった」と悪びれる様子もなく歌い出して始まるこの曲。ラストの曲なのに「プロローグ」としているところに皮肉を感じる。タイトルがパロディだからプロポーズの話か? と思ったが、まあそう思って読めば読めなくもないが…… って感じだった。それよりも“季節”と“期せず”で韻を踏むとは思いませんでした。
2017年にリリースされたシングル「10% roll, 10% romance」にも出てくる重要な数字が“4年”だった。そこでは“4年ぐらいは後でもいいや”と歌われていたが、この曲では約3年を経て、「4年ぐらいは後にするよ」と言っている。3年経ってもその意思は変わらなかった、という表明だろうか。
ちなみに中盤では歌詞に「パズルのピース」とあり、ここで突然のジグソーパズルの理由が回収される。いや、普通に「CDの特典にジグソーパズルって何?」となっていたわけだが、アルバムの中で、しかも最後の曲で、その思惑が見えることになるとはね…… もう本当に、ユニゾンには敵いませんよ。
サビの「君だけでいいや」っていう一言に、彼らの思いが込められているように思う。物好きに届けばいい、J-popに喧嘩売るなんて今は考えてない、っていう話を思い出す。あなた方が届けたがっている“君”、つまり我々物好きのところにはしっかりと伝わってきているので安心してほしい。彼らが我々に伝える努力をしてくれているからこそ、我々もついて行くのです。きっと、これからも。そして、最後には「遊びに行こう」と我々を誘ってくれている。ええ、もちろんついて行きますとも。
最後の、ベース?の音が続いていってるの、余韻を持たせた終わり方で良いね。そしてそこまで聴き終わって、このアルバムが45分と短くまとまっていることに気付く。集中力の切れない、ちょうどいい時間。心地よい満足感に包まれることができる。そこからは余韻に浸るでもよし、歌詞を読み返すでもよし。ちなみに私はもう1周! とどんどん聴いていく派です。
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以上、Patrick Vegeeに関する取り急ぎの感想と考察でした。一つのアルバム、曲、フレーズを取っても人によって解釈はきっと結構違うだろうから、ぜひあなたの感想も教えてください。まだPatrick Vegeeを聴いてない方はサブスクで検索してください。私の好きなロックバンドは今日も最高に格好いいので。
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