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前髪と恋心

※断じて、恋ではない

先週の木曜日、前髪を切った。
目が隠れなくなった。
久しぶりにメイクをして前髪を固めて、いつものようにバイトに出掛けた。
自分のメイクの腕に自信なんていうものは、本当に全く微塵もないのだけれど、それでもやっぱり鮮やかな色を乗せられた顔は、普段よりも可愛く見えた。

とはいえ特に変わったこともなく、強いて言えば自分の気持ちがいつもより明るかったくらい。
そのまま勤務時間が終わって、雑務を済ませて入退店名簿の元に向かった。

あの人がいた。
別部門で働いている、メタルフレームの大学生。
普段作業場や売り場ですれ違うときに「お疲れ様です」のやりとりをする人。
それ以外の会話なんて数えるほどしかしていないと思う、3回くらい。
いや、別に数えてないけどね。

別の先輩もいて、退店作業をして、それぞれが2人向けに「お疲れ様です」と言って名簿を離れる。
そこで何もなく終わったと思って、夜ご飯何食べようかなとか考えながら店を出た。

終わっていなかった。
去り際に後ろから、いつもより少し高くて大きい「お疲れ様です」が聞こえてきた。
どうしようもなく、嬉しかった。
目の前とはいえ店の外で、
自分だけに向けられたその言葉が、
とても、あたたかかった。

前髪を切ったことやメイクをしたことは、関係ないのかもしれない。
ただ単に、いつもどおりの挨拶をしてくれただけかもしれない。というか、そうなんだと思う。

それでも私は、その一連の出来事で「今日可愛くしてってよかった…!」と思ってしまうくらい、わかりやすく浮かれやすい人間なのです。

※でも恋じゃないから

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