地域と農業の未来を作りたい、コミュニケーションから生まれる新しい形
岡山県笠岡市で新規就農認定農業者として農業を始めた伊木さん。
「もともと農家でなかったのに、農業に興味を持ったのはなぜなのか?」
「野菜にかける思いの原点をさらに進化させた有田商店とは?」
農家と消費者をつなぐ未来へ向けて、コミュニケーションを重ねながら活動をされている伊木さんをご紹介します。
スタートはお裾分けのおばあさんの味
もともと食べることが大好きだった伊木さんは、9年前に飲食店を始めました。そこで出会ったのが、お店の隣の畑を作っていたおばあさん。
「野菜をお裾分けしてくれるのですが、それがとてもおいしいのです」
伊木さんは言います。自分でも作ってみたいとお店を閉めて、農家でアルバイトをしながら野菜の栽培方法を学びました。
「自分が感動したように、食べることが大好きな男性へ感動を届ける野菜を作りたい」
そんな思いを胸に、3年後には農地を借りて新規就農認定農業者として開業をします。おばあさんの味を届ける虹の架け橋となるように、ナナイロファームと名づけました。
野菜嫌いや小さな子どもへも届け、お菓子屋さんとのコラボレーション
伊木さんが発信しているFacebookやInstagramでは、ナナイロファームとともに有田商店という言葉がよく出てきます。ナナイロファームは伊木さんが取り組んでいる農業、有田商店はユニットの事業です。
5年ほど前に小さな直売所を作った伊木さんのもとを、福山でお菓子を作られている山脇さんが通って来られるようになりました。山脇さんは、地域素材を大切にした焼き菓子やシロップを作られているpasión (パシオン)を経営されています。
「小さなお子さんに向けたお菓子を作りたい」
山脇さんの思いを聞かせていただいているうちに、有田商店の構想が湧き上がってきたのです。
「たくさんの人においしい野菜を食べてもらいたい」
山脇さんの思いと伊木さんの思いが重なり、有田商店のコンセプト「小さなお子様から大人の方まで、野菜嫌いの人でもおいしく食べられる商品を作る」が生まれたのです。
二人で力を合わせて、3年前から地元の笠岡を拠点にイベントなどで、野菜を使った季節に合わせたおやつを販売しています。
自分が感動した味をお客様に届けたい
伊木さんの野菜作りの原動力は、自分のほれ込んだ味を届けたいという思いです。ナナイロファームで最も力を入れている商品は、トウモロコシ。今では約15,000本のトウモロコシを作っています。
「今年は栽培する地域が変わり初めての畑だったのですが、今までで一番納得のいくトウモロコシが収穫できました」
そうおっしゃる伊木さんのトウモロコシ、シーズンの7月にぜひ食べてみたいものです。
トウモロコシと同様にサツマイモの栽培にも力が入ります。
「自分のような男性が好きな野菜と言ったら、トウモロコシとサツマイモは間違いない」
秋が深まるシーズンに向けて、サツマイモの出来上がりにも期待値が上がります。
伊木さんがもう一つ大切にしているのは、市場では見かけないけれどおいしいと思う野菜の栽培です。
「消費者の方に野菜っておいしいということを伝えようと、興味を持った野菜を作りました。今では何十種類も栽培しています」
茎がおいしいスティックセニョールや彩り豊かなスイスチャード。伊木さんご自慢の野菜たちは、イベントに来られるお客様にも大好評です。
「お客様とコミュニケーションをして購入していただくと、励みになる」
おいしいからスタートした伊木さんの野菜作りは、消費者に届けるところまで一貫しています。
農家から始まる未来へのコミュニケーション
伊木さんの農業の集大成として今取り組んでおられるのが、11月に開催される農と暮らしの市です。今年で2回目となるこの催しは、食材を大切にされる飲食店さんや農にまつわる雑貨職人さんと協力をして開催をしています。
「つながりを大事にしているイベントです」
と伊木さん。農家が消費者へ自分たちが作っている野菜や果物を直接伝える場であり、消費者から農家へ聞きたいことを尋ねる場。
このイベントは伊木さんの未来へ向けての思いが詰まっています。笠岡市で農業を始めて9年。辞めていく先輩や耕作放棄地になり荒れた農地を見て思うことがあります。
「仲間を増やして、地域の農業を盛り上げたい」
農と暮らしの市は、将来の農業へつなげる大切なコミュニーケーションの場なのです。
まとめ
お裾分けでいただいたおばあさんの野菜の味に引き込まれ、農家への道を歩み始めた伊木さん。
pasión (パシオン)の山脇さんとの出会いから、みんながおいしく食べられる商品を作って販売する有田商店へとつながります。
ナナイロファームで作る野菜と有田商店で販売する商品。
人との出会いで生まれた伊木さんの農業への眼差しは、地域の盛り上がりへと向けられています。