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『何か』はきっとある

「見えないもの」を捉えられる人って本当にすごいなあと思う。私にはそういった特別な力はないけれど、周囲を見渡すと……時々、そういう方に出逢わせていただくことがある。好奇心が強めの私としては、そんな絶好の機会に、「え?何故、わかるんですか?」「どう見えるの?」「どう感じているの?」と質問攻めにしてしまう。どなたもわかるように丁寧に説明してくださり、その結果、私の世界を広げてくれる。今回のかきあつめテーマは、「私の不思議体験」である。これまで得た幾つかの出逢いの中で、「すごいなあ、面白いなあ」と思っただけでなく、実際に助けていただいたお話をしたい。よろしければお付き合いくださいませ。

時は少し遡り……数年前のことである。私は、ある日突然、耳が聞こえなくなった。厳密に言うと、聞こえなくなったというよりも、全ての音が雑音に聞こえるようになったのだ。仕事では、上司の声が聞きとれず、電話の相手の声が聞きとれず、高い声は不快音としか感じない。気持ち悪さと頭痛が続いた。

耳鼻系の不調については、幼い頃から季節の変わり目や疲れた時にバランスを崩しやすかったから慣れていたけれど、こういった症状は初めてだった。電話応対は、全く音のしないところへ移動する必要があり、相手に何度も聞き返すのが申し訳なくて、一時期、同僚や後輩に代わりに取ってもらっていた(優しいでしょ)。他の方も私に用事があるときは、遠くから声をかけるのではなく、一旦、私の席の前や隣に移動してから話してくださるように気を遣って下さった(優しいんです)。

病院に行けば検査と大量の薬を処方され、毎回、変わらない検査結果と毎食後の独特な風味の薬が苦手でとても憂鬱な日々が続いた。担当してくださっていたお医者様は、途中から精神面によるものだ判断し、「あなたを悩ませているものは何なのだろう?」と首を傾げていた。睡眠薬が処方された時、感覚的に「これを飲んではいけない」ような気がして、我に返った。少し症状が軽くなっていたこともあり、様子を見ようと通院をやめることにした。

それから約半年から1年後の間に、友人からの紹介で、とある3名の方に出逢うご縁をいただいた(ちなみに全て別の友人から別のタイミングでご紹介いただいた)。どの方も「氣」や「オーラ」といった、通常「目に見えないもの」が見える力をお持ちで、その力を使って実際にお仕事もされている方だった。彼らが口を揃えて私に教えてくださったのは、「言いたいことを言いなさい」ということだった。

「(私)???」……最初、どういう意味なのかを理解することができなかった。おひとりは、「思っていることをもっと言った方が良い。隠せているつもりかもしれないけれど、周りは何となく気が付いています。だから、あなたの想いを出して大丈夫です。」と仰った。また、おひとりは、「今、喉が腫れていませんか?言いたいことが言えていないから腫れているんですよ。」と教えてくださった。その時の私は、確かに喉が腫れていて、耳が変だったのだ。その方は、続けてこう話してくださった。「言っても大丈夫です。言っていいんですよ。気持ちを隠さないで。」って。

そう言えば……私の耳がおかしくなり始めたのは、中学生の頃で、大人が信じられなくて「自分の気持ちは言わない方が安全だ、隠そう」と決め、自分の気持ちを表現することを抑制し始めた時からだった。もう一つ思い出したのは、耳鼻科に行くといつも、お医者様は「あなたの喉が腫れていて、喉が腫れているから鼻や耳の調子が悪くなるんだよ」と説明してくれたのを思い出した。色んなパズルが綺麗にはまったような気がして、彼らのアドバイスを素直に受け入れることができた。

その日から、少しずつ、いつもの割り増しで上司や同僚や、友人や家族に自分の気持ちを伝えるようにした。文章もあまりきれいに書きすぎるのはやめた。自分の伝えたいことが相手に伝わるように伝え方を考えた。それからというもの、不思議と少しずつ耳の調子は良くなっていった。また、言いたいことを伝えるようになった結果、前よりも周囲の方との関係性が良好になったように感じる。心に正直に、自分の「本音」が表現できるようになってきたからなのかもしれない。こういったことは、「証明しろ」と言われても、わからない。私には彼らが見てくださった「見えない『何か』」は見えないけれど、「『何か』は必ずある」と信じている。……これが「私の不思議体験」である。

お付き合いいただきありがとうございました。

編集:アカ ヨシロウ
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