しょっぱいプール
冷蔵庫に保管している塩がもうすぐ切れる。そろそろ買いに行かなくちゃな。以前、友人に「塩と水に気を付けなさい」と教えてもらってからというもの、塩専門店を利用するようになった。何故なのかを尋ねた気がするのだけれど、忘れてしまった。きっといいことがあるんだと思う(単純)。
今回のテーマは、「♯塩」である。
小学生の頃、我が家の夏休みは、熱海で過すのが定番だった。理由は家族が勤めていた会社の保養所があったからだ。我が家にとって夏と言えば熱海で、私には過酷な旅を意味した。何故なら、我が家の旅行は車移動と決まっており、私は超車酔いするタイプだったからだ。
熱海での過ごし方は、保養所の近くの海で釣りや貝拾いをしたり、施設のプールで遊んだり、夜はロビーで開催される知らないシャンソン歌手のショーを鑑賞することだった。その他にも、近くにミュージアムや遊園地があったので、連れて行ってもらった記憶がある。
ある年の夏休みは、初島という島に船で遊びに行った。
ちなみに、私は船酔いもする。短い時間だったが、船でも床に寝ていたはずだ。三半規管が弱いんだろうなあ。
初島にはプールがあった(これしか覚えていない)。
私は、海よりプールの方が好きだった。塩水は鼻に入ると辛い。特に私は、鼻炎持ちの為、刺激には弱いのだ。水遊びは真水に限る。それにしても、いちいち注文が多い子供だよなあ……
プールと聞いて、「わーい」とパシャパシャ遊び始めて暫くした頃だっただろうか。我が繊細な鼻にプールの水が入ってきて、ツーンとして異変に気が付いた。このプールは、塩水だったのだ。というか、本物の海水だった。海水を使っていることが売りのプールだったのだ。
この衝撃をプリンに対して思っていたことを例に説明したい。
子供の頃、私はプリンが苦手だった。プリンは卵を沢山使っているので卵料理に分類される。私の理解では、卵料理はお食事なはずなのに甘いってどういうことだ。似たようなフォルムなのにお食事として出てくる茶わん蒸しをどう説明するんだ?と、プリンに大混乱していたからだ。今もプリンより、ゼリー派だ。とろとろよりプルプルがいい。もちろん、プリンも美味しいけれど。
プリンも初島のプールも、私にとって衝撃的だった。プールは真水のはずなのに、プールのくせして海水なんてどういうことだ。私を混乱させないでほしい。自分の中の概念が壊されるような衝撃を覚えた。
……お判りいただけただろうか。
そして私は、その衝撃を夏休みの宿題として俳句に残していた(どんな宿題だったかは忘れた。勝手に作品として提出したのかもしれない)。
素晴らしい。情景がありありと目に浮かぶようだ。また行くことはあるのかな……いや、ないな。だって、船に乗りたくないもん。
しょっぱいけれど、忘れられない夏の思い出である。
文:彩音
編集:真央
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