【展覧会レポ】宇留野圭「CLEAN ROOM 清潔で空虚なある部屋の物語」
銀座、高層ビル、オフィスエリアの一角。まず部屋に入って聞こえてくるのは深く響く重低音。機械構造や身近なモチーフを用いた立体的な作品によって「部屋」を、そして空間を再構築するアーティスト宇留野圭氏の個展がMYNAVI ART SQUAREにて開催されている。
『26の部屋』と『9の部屋』
展覧会場に入ると副題として語られる「清潔で空虚」を感じるであろう。薄暗い会場内(これは私が訪れた時間が遅かったからかもしれない)にまず冷たさを感じる白い光と複雑な立体物を見つける。
今回のメインともいえる『26の部屋』と『9の部屋』この二作品である。それぞれの題名通り26個或いは9個の部屋によって構成されてた本作品は独立して見える部屋がすべて内蔵されたファンによって空気で繋がり、パイプオルガンの仕組みによって音を生み出している。音と空間と二段階を経て知覚した二つのものはそれら同士でも、会場とも「繋がっている」のだ。
『Good Life』と『Good Night』
『Good Life』は白いドアにリアルな犬の頭部が付けられており、中からは白い光が漏れ出ている。当初この作品のモチーフすらわからず不躾にも宇留野氏に尋ねた。すると彼はこのように答える。
「深夜の冷蔵庫を表現しています」
冷蔵庫、言われればその物体は壁に取り付けられた開きかけの小さな冷蔵庫そのものであった
冷蔵庫の表面にはまるで製品名のようにGood Lifeと付けられている。深夜に動物的な本能に突き動かされ電気もつけずに冷蔵庫を開く。これが‘’良い暮らし‘’と題されていることに若干の皮肉を感じた。
白い光と白いドア、この二つによって薄暗いギャラリー全体を部屋に見立てたてる発想。これは隣り合う作品『Good Night』にも表れている。
部屋に佇む洗面台のような構成の本作品は、鏡の部分が拡大されたスマートフォンであったり、鳥の羽が付けられていたりと意外性を持つ。なによりGOOD NIGHTと大きく書かれたタオルはGOODの部分のみが反対になるように掛けられており、先ほどの作品のような皮肉性、不健康さが際立つ。
『ROOM#1』
入口のカウンター脇、うっかりすれば見逃しそうな『ROOM#1』と題された作品は石鹸によってスマートフォンや小動物の頭部の骨が繋がれている。宇留野氏はこれをドローイングのような作品だと語った。粘土のような柔軟性を持ち、普段何気なく手を洗う石鹸は死体や骨を洗う際にも使用される。生と死のつながり、そして彼の作品の中で重要である部屋の内と外の概念が最もわかりやすく表現されている。
さいごに
彼が作品の中で一貫して描く「内と外」の「関係性」それは見る時間や場所によって変化していく同一性を持たない唯一無二のインスタレーションである。
あなたはこの作品を前に何を感じるだろうか、寂しさ、冷たさ、清潔さ、あるいは親しみやすさであろうか、鑑賞者の経験に依存して様々異なる感情を呼び起こすこれらの作品たちに対面したとき、何を感じたかに大きな興味を持つ。無粋にも各人に聞きまわりたいくらいである。
1月までMYNAVI ART SQUAREで開かれている彼の個展は開かれたばかりのこの空間にとって第二回目の展覧会である。彼によって彼の思考にデザインされたこの空間を、ぜひ五感を使って体感していただきたい。
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