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らんどせるんるん備忘録

きっかけ

”なんかいい”の共感を作りたいと思ったことが、「人とモノのものがたり ランドセル展」を学部の助成金プログラム(KAPPA)に出そうと思ったきっかけでした。
自分の学部にいると、社会的意義とか課題解決とか、「もっとこうしなきゃ」という問題意識を、共感の引き金にされる場に立つことが多いです。
それが悪いと言いたいわけではなく、問題意識以外の、もっとふわっと温かい共感(当時はそれを”なんかいい”の共感と言っていました)を感じる場面はたくさんあるから、それを自分で作れたらいいなあと思ったことがきっかけでした。

しかし、申請書を書き始める時点では”なんかいい”の共感、というあまりにも抽象的なテーマしか決まっていなかったため、友達とぐるぐると話し合いを重ねました。そんな中で思い出したのが、去年観たミナペルホネンの「つづく展」。
つづく展を観たときに感じた「人のストーリーは、ものによって語らせることで、自分がそのストーリーに居合わせる/疑似体験することができる」を自分でも作りたい。そのためには、ランドセルを主役にすることで、いろんな人が”居合わせる”体験ができるのではないか。
こうして、「ランドセル展」の企画がスタートしました。

インタビューで出会った発見

情報編集を専門とされている先生に言っていただいた「人とものの関係をときほぐしてあげる」という言葉を参考に。ランドセルの現ユーザー(小学生)や元ユーザー、作ってきた老舗メーカーに、まずはインタビューを行っていきました。この期間が一番大変であり、かつ一番面白かった。インタビューをしていく中で、たくさんの発見がありました。それを一言で言うとするなら、「人とモノの間には、人同士では作れないものがたりがある」ということです。
一つ目の発見は、人はモノと接するとき、純粋な気持ちで関われるということ。
人同士の関係だと、「優しくした分優しさを返してほしい」とか「同じくらい愛を貰いたい」とか、何かと相手に見返りを求めてしまう気がします。
一方しゃべらず、何も返してくれないモノに、見返りなどを求める人はいないはず。だから人は、モノを相手にしたとき、よりまっすぐな気持ちで関わることができると思います。「ただ、大切にしたいから大切にする」や「ただそばにいてほしいからそばに置いておく」といった風に。そんなモノとだからこそ生まれるものがたりがある。そして、モノがそこにあるだけで、それに触れるだけで、自分との間にあるものがたりをいつでも、思い出すことができる。
二つ目の発見は、モノは決められた目的があって生まれてくるものだということ。
モノは本来、何かしら使う目的、果たす役割があって作られます。
椅子は座られるために、鉛筆は書くために、箸は食べるために。。。
今回展示の主役だったランドセルも、本来は”6年間””背中に背負われる”ために作られるものです。だけど、モノはその役目を終えてもたくさんの記憶を閉じ込めて、私たちのそばにいてくれています。

今回の「人とモノのものがたり ランドセル展」では、インタビューで出会ったそんな”ものがたり”をたくさん展示し、来てくれた人が自分の”ものがたり”を思い出せるような空間づくりを目指しました。

展示の構成について(観に来てくださった方は読み飛ばしてください!)

展示のテーマは3つ。
6年間の相棒
「ランドセルって言い換えたらなんだろう。」
小学生の思い出を振り返ると・・・思い出の主役じゃないかもしれない。
でも6年間ずっとそばにいたもの。
私たちはそれを「相棒」と呼ぶことにしました。
「6年間の相棒」ゾーンでは、つかう側である小学生が相棒に抱く想い、また6年間相棒でい続けるためのつくる側のこだわりを展示しました。
②ランドセルが教えてくれる問題

カラフルなランドセルがずらり。性別ではなくその子の「好きな色」を。今やランドセルは当たり前かのように色とりどりになってきている。とは言っても、やっぱり赤か黒じゃない?・・・世代間ですれ違うそれぞれの思い。
そしてランドセルの金銭的問題、ジェンダー的問題を解決するための救世主かのように突如現れた”黄色いカバン”。
「見えなくすること」は、果たして本当に解決策なのだろうか?モノは私たちに、そんなことを問いかけてくれます。
家族会議
ランドセルを買うときは、家族会議が発生しやすい。
お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃん、兄弟。
家族のめでたい一大イベントを前に、みんなそれぞれの意見を持っているみたい。
「私は小学生の時に赤を使っていたから、あなたにも赤を使って欲しい」
「キャメル色のランドセルかるってる子ってみんなイケてたんだよね」
でも、私だって負けてない。
「私はこの色がいい!」
ーあなたは、どんな風にランドセルを選びましたか?それは、どんな記憶ですか?将来、もし自分に子どもができたら、どんな家族会議をしたいですか?ー

フロアマップ

また展示と並行してワークショップを二つ、開催しました。
”つくる”
人とモノのものがたりは、そのモノがつくられる瞬間から始まっている。
「モノづくりを通じて生活にワクワクを届ける」をテーマに活動する学生団体コダワリに協力いただき、”つくる”を体験できる時間を用意しました。②”はなす、かく”
自分にとっての「ものがたり」はどんなものがあるだろう。ランドセルという枠組みは取っ払って、自分とモノのものがたりについて話し、書く時間を用意しました。

うれしかったこと

来てくれた人とお話しする中で、特にうれしかった言葉がいくつかありました。
「帰って、お母さんに自分のランドセルのこと聞いてみようかな」
「あの頃のワクワクを思い出せた」
「久しぶりに○○(昔大切にしていたモノ)に触れたくなった」
展示されている”ものがたり”はすべて、自分以外の誰かのもの。でも、モノに媒介させることで、自分の”ものがたり”に想いを馳せることができる。
それを体験してもらえたかも!とうれしくなりました。

最後に

展示にもデザインにもアートにも詳しくない私が、今回の展示を形にできたのは、本当にたくさんの人たちに協力してもらったおかげです。
テーマに共感して1年弱一緒に活動してくれた一年生の二人、私のブレストに隣で常に付き合ってくれた友達、ふわふわした段階から相談に乗ってくれた友達や先生方、ワークショップに協力してくれた友達、そしてアイデアを形にしてくださったフジイギャラリーのお二人。
観に来てくださった人たちとの会話やメモも、展示をどんどんアップデートしてくれたなと感じています。
この展示の空間を通じて、たくさんの人と考えや時間を共有し、幸せを感じられた約一か月でした。
ちなみに・・・
今回展示のアイキャッチの一つになってくれたフォトブースの赤いランドセルは、私が小学生の時に使っていたものです。たくさんの人に背負ってもらって、触れてもらって、「よかったね、ありがとう」と伝えたい!
何年後かにこの赤いランドセルを見たとき、この展示期間のことが思い出されて幸せな気持ちになれるだろうな~と、今から楽しみです。

掲載していただいている記事(2024/2/20時点)


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