妹と敵の闘い
ちょうど私が、進学で実家から離れたくらいの頃からだろうか。
私の妹は、目に見えない敵と闘っている。
その敵は他の人には見えないので、妹と共に闘いたいと願っても、中々難しかったりする。
最近は敵が妹を侵食してきていて、目の前にいる妹が、妹なのか、敵なのか分からなくなることもある。
どうにかして妹の役に立ちたいという気持ちと、一緒にいることが辛いから、できるだけ距離を置きたいという気持ちの板挟みになっているこの頃。
妹にとって新しい世界を見るための一助になればと、週一で私の友達を紹介するzoomをしてみたり、「家に居場所がない時はいつでもLINEして」と言ってみたりした。
だけどいざ、彼女の方から「死にたい」などと言われると、その言葉の持つ威力に押しつぶされそうになり、見て見ぬふりをしてしまう。情けない。
敵が現れたときの辛そうな妹を見るのも嫌だが、それとずっと対峙している家族の姿を見るのも同じくらい嫌。
家族に会うと、敵と一心同体の妹のことを恨んでしまう。
その辛さと向き合うことができず、最近は帰省できていない。
ああ、情けない。
「あなたが味方になってあげて」
お父さんは私に、そう言った。
そうなりたい。あの子のお姉ちゃんは私だけ。
だけど、荷が重い。私には無理だ。
妹自身はもちろん、お父さんもお母さんも、小さい末っ子ですら、敵と向き合い、一緒になって闘っているはずだ。
それなのに私は、ずっと向き合えず、逃げ続けている。
「私の子育てが悪かったんだよ。」
お母さんは私に、そう言った。
辛くて聞いてられない、と思ったけど、それと同時に、その通りだとも思った。
共働きで、3人も子供がいるうちの家族。長女の私ですら「3姉妹は、貰える愛情とお金が1/3」と信じてきたし、子供は2人以下にしてあげようと決めているのだった。
お母さんと環境のせいにして、自分は辛い状況から目を背け、妹の前ではいい人でいようとする偽善者。客観的に今の私を評価するなら、こんな感じだろうか。
さあ、明日は家族がこっちに来てくれるみたい。
久しぶりに会うけど、大丈夫かな。怖いな。
それでも家族のことが大好きな私。
「今回もしかしたら、敵も現れないんじゃないかな」
期待に胸を膨らませながら家をきれいにした。