『乗り換え案内』(きよしこ)
この「乗り換え案内」は「きよしこ」の二番目のお話です。
夏休みに参加した「吃音矯正プログラム」で、出会ったお友達との出来事を描いています。
3年生の時からの担任の先生は、4年生になった「少年」に「吃音矯正プログラム」を受けるよう勧めます。担任の先生は少年の吃音を障害だからと言って、このままでは人とコミュニケーションを取らなくても良い仕事にしかつけないと言います。
例えば長距離トラック運転手のような仕事にしか(少年の父親が運転手)、これを聞いて少年の母親はムッとして言い返したりしました。
夏休みを利用して参加した吃音教室は、いろんんなレベルで話せる人がいて、仲間の失敗を笑う人もいません。
そんな中、加藤達也くんが少年にちょっかいを出してきます。
仲良くはなっていないけれど、少年にちょっかいを出して仲良くなりたいという気持ちを一生懸命アピールしてしてくる子です。
途中で何度も喧嘩になりそうになりました。でも、2人は徐々につながっていくことになります。
少年は言葉がうまく出ないので、言いたいことが上手に言えません。
吃音矯正の先生が、「リラックスしてしゃべればいいんです。気にするから余計に言葉が出なくなる。笑われたっていいじゃないか。」そんな風に言われた時、おそらく軽くそう発言した先生に全力で違う!!と言いたかった。だから苛立った思いを机にぶつけてしまったのです。そして、加藤くんもまた、そうだ!!と言いたげに真っ赤な顔で、先生を睨みつけました。
私の個人的に勝手な持論で、イヤイヤ期の子供や思春期の子供は自分の言葉がうまく話せないことや、言葉がうまく見つからないことに苛立ちを覚えて少し暴れてしまうのではないかと思っているので、この少年もある意味同じで、普通に思ったことを話せる先生が、「気にするなと」お気楽な発言をしたことで瞬間的に怒りが込み上げてきたのだと思いました。
このことがきっかけで2人は仲良くなったけれども、少年は親の転勤でその街を離れなくてはなりません。
(また)「らい、ねん」と言ってくれた加藤くんとの出会いが、ひと夏の楽しい思い出となりました。
吃音セミナーは恥ずかしくて人には絶対に言いたくなかったはずなのに、「加藤達也」という少年を絶対に忘れたくなくて「夏休みの思い出』の作文を書きました。最後は少しだけ脚色して、それが少年が初めて書いた「お話」となりました。
いつも周りは理解が得られず、敵または傍観者しかいなかった環境だったけど、この吃音セミナーに言ったことで、少しの自信と、共感と、何より気持ちの通じ合える友人と出会えたことで、少年の夏に彩りを与え、少年の人生さえ変わってきたように感じました。
この先のお話も楽しみです。