BtoBビジネスのマーケティングで、個人~組織~事業が健全成長するループ
自分は、マーケティング関連の仕事を22年くらい(その大半はコンサルティング)やっているが、よくも22年も飽きずに、この仕事を楽しんでいるなと自分でも思う。
BtoBビジネスの醍醐味~楽しめる理由
僕が仕事として続けてきたマーケティングコンサルティングは、典型的な(無形サービスにおける)BtoB法人取引で、営業提案も納品デリバリーも、ひたすら法人取引の枠組みのなかで人が人とコミュニケーションをし続ける仕事になる。
それが、なぜ、楽しく続いたのか?と問われると・・・
・対面でクライアントとミーティングを繰り返すので、顧客の評価フィードバックが直接得られる
・意思決定をして、クライアントのマーケ施策が変われば、売上・収益が伸びるor減ると、市場からの忖度なきフィードバックが得られる
・コンサルティングは無形商材なので、フィードバックを得たら、明日からサービスや成果物を素早く変更~磨きをかけられる。仮説検証のサイクルが短く、アジャイルに試行錯誤できる
独断と偏見でざっくり言えば、個人的に思うBtoBビジネスの面白さは・・・
1.顧客からの直接的で豊かなフィードバック
2.すぐに改善を繰り返すアジャイルな仮説検証
という特性にある。
正確に言えば、2の要素は無形サービスに限られる。製造業の商品ならば、翌日にも商品改良して市場投入はできない。でも、2はなくとも、1のダイレクトな手触り感は、顧客との直接接触があるBtoBでは大きく、無形サービスでなくとも喜びと面白さは大きい。
顧客の成功を求め、個人が成長するポジティブで持続的なサイクル
自分が経営~上司の立場になると「どうしたら組織の部下達が、自発的に努力し、成長できるようになるのか?」という難易度の高いテーマに直面する。
人は、それぞれ価値観もモチベーション材料も違う。ただ、多様性はあれど、誰もが(と言えるほど多くの割合の人が)、モチベーションの刺激材料として最も持続性が高く、カンフル剤としての刺激が強いのは「顧客から直接感謝され、評価される体験」だと感じている。
これを経験した人は、顧客からのさらなる評価を求め、「顧客の成功」を追求する努力を自発的にやりはじめる。このモードに入った人は、顧客のネガティブなフィードバックに素直に向き合って受け止める勇気、粘り強く改善する強さも出てくる。
こうなれば上司の育成の仕事の8割は成功したと言える。
逆に言えば、(この成功体験がない人に多いのだが)顧客のネガティブなフィードバックに向き合えない人に見えてしまうと、上司は顧客を失うことを恐れ、仕事を任せられなくなり介入するようになる。そうなると、仕事の自由度は失われ、仕事がつまらなくなるという悪循環に陥る。
上司の立場からすると、顧客のネガティブなフィードバックに向き合える人は、独力で解決する能力が足りなくても、不足分は力を貸して!とアラートを鳴らせるので、持ち場を任せやすくなる。当然、任されているから本人は仕事が楽しくなり、努力も増え、成果は出やすくなる。
つまり、僕の経験的な仮説や部下への期待の価値観が滲んではいるが、「顧客のフィードバックに向き合う力」や「顧客の成功に向けて自走できる力」は、BtoBビジネスにおいて、個人が持続的にモチベーションを保って大きく成長するうえで、最も重要な要素だと感じており、それをもたらすのは「顧客の成功に貢献し、顧客から高く評価される経験」だと感じている。
事業成長を続けるにはLTVが重要で、LTVは「顧客の成功」によってつくられる
BtoBビジネスの世界は、デジタル化の影響も含め、この10年で激しいマーケティング強化の波がやってきており、タクシー動画広告のような媒体開発、リード顧客の獲得・育成から営業までを仕組みで支援する、相当数のツールや施策が開発・提供されている。
顧客獲得の投資額を積み増せば、新規顧客を獲得できる手段は増えているが、残念ながらそれだけでは持続的な事業成長にはつながらない。
新規顧客がリピート顧客に転換し、LTVがあがらなければ、既存顧客の数とそれがもたらす売上が積み上がらず、売上は伸びなくなる。LTVがあがらなければ新規顧客獲得の投資も回収できず、赤字を掘るだけで、いずれ事業は行き詰まる。
単純だが、LTVをあげるには、新規獲得の顧客に満足いただき、リピート受注を繰り返すことが必要になる。つまり、LTVを高める鍵は、顧客企業の満足であり、顧客企業が「おたくの商品・サービスが、自社のビジネス成功に貢献している」と感じられるほど「商品・サービスそのものが持つ価値」が磨かれていることが大前提になる。
昨今のBtoBマーケティングのツールと手法は、「商品・サービスの価値を市場・顧客に伝える」施策の効率化と自動化は進んだが、「商品・サービスそのものの価値」の向上は組織のアナログな営みで、ツール類が自動化してくれるわけではない。
そこに現代のBtoBビジネスの大きな落とし穴がある。
商品・サービスの価値を広く伝える投資に負けず劣らず、「商品・サービスそのものの価値を高める」ことを企業として優先順位を高め、組織横断的に連携しながら実現しないと、BtoBビジネスの成長は続かず、階段の踊り場がやってくることになる。
BtoBビジネスの世界は業界内が狭く、表に出ない情報ネットワークがあるため「商品・サービスが良い」となれば、それらの評判が新規顧客を連れてきて、新規顧客を増やす支援にもなる。逆もまた然り。どれだけ派手に広告していても、ユーザーの評判が悪いと新顧客獲得の足かせになる。一般的にBtoBは高額商材となるが、高額商材ほど購入の意思決定は慎重になり、実際のユーザーの評価の声の影響力は増す。
BtoBビジネスにおいて「売ったら終わり」の時代は、実質的に終わりになりつつある。それは「ビジネスの倫理」の話ではなく「経済合理性を欠いている」という意味で終わりつつある。(株式市場の変化により、急成長を志向するスタートアップでも赤字を掘りっぱなしでLTVがあがらないような、新規顧客獲得偏重の事業モデルでは資金調達が難しくなり、この世界でも経済合理性を失いつつある)
BtoBビジネスで、個人~組織~事業が健全に成長するループとは?
ここまで長文読んでくださった読者なら、もうタイトルテーマの回収は、頭の中でつながってきていると思う。
BtoBビジネスで、「個人」と「組織」と「事業」が健全に成長するループとは・・・・
個人:「顧客の成功」に向けて、顧客からのフィードバックに向き合う
組織:そんな個人が集まり、部門横断で「顧客の成功」に向けて連携の取れたワンチームになる
事業:その結果、顧客はリピートを続け、LTVは高まり、既存顧客の数と売上が積み上がる健全な事業成長を実現した企業になる
という話になる。事業が成長し、成功した顧客企業は、冒頭の取引先の担当者にポジティブなフィードバックをしてくれる。その結果、個人のモチベーションはさらにあがる。
長文の結論としては、拍子抜けするような単純な話のループだ。
ただ、自分なりに、この話が新しいと思う視点は、
モラル視点ではなく、事業成長を持続させる経済合理性の視点
顧客からのフィードバックが、働く個人のモチベーションを高める視点
組織横断で連携するワンチームの組織づくりの視点
この3つを有機的に連携・統合する発想と、それを実現していく仕掛け・仕組みにあると思っている。(そもそも新しいかどうかは本質的な価値ではない)
この話は単純でありながらも「自社で実現できていますか?」と問われて、胸を張ってYESと言える企業はそうそう無い。ただ、この成長のループを丁寧につくるのが、BtoBマーケティングのテクニカルな施策の根底にあるべき、いわばボーリングの一番ピンだ。
もちろんこんなnoteを書いている自分が関わるグロースXも、まだ道半ばもいいところ。自社のBtoBビジネスにおいて試行錯誤を繰り返し、設立から2年で300社/1万ユーザーの人材育成を支援させていただいた経験を踏まえ、社内の経営陣とメンバーで議論した結果として言語化されたものが今回の話のベースになる。
小難しく書いたけど、個人的には、どうせ仕事するならば、楽しく、周囲を幸せにして、成果だせたほうが、みんないいよねぇ・・という程度の生活者レベルの皮膚感覚も原点にある。顧客から喜ばれ、顧客のさらなる成長のために必死に自分と自社が成長するプロセスは実に楽しい体験だ。
個人も企業も、心身ともに健全で持続性のある成長ができるなら、それに越したことはないし、目指すに値すると思う。
グロースXより新プロダクト「BtoBビジネス&マーケティング」のお知らせ
本日、グロースXとして「マーケティング」「AI・DX」に続く新しい企業向け人材育成サービスのプロダクト「BtoBビジネス&マーケティング」をリリースしました。
このnoteで書いた内容は、企業のBtoBビジネス人材を育成する新規プロダクトを社内でつくりながら「手法ノウハウの解説は充実したけど、何か大事なことが足りない」と感じ、社内で議論を重ねた内容がベースにあります。
新規顧客獲得施策のHackを多用することだけに偏重する焼畑農業的なビジネスではなく、顧客の成功を追求する本質的で持続的なマーケティングができるワンチームをつくりたい。そうお考えの企業の方は、よかったらプロダクト說明のページを覗いてみてください。
P.S
よく聞かれますが、インサイトフォースのブランドコンサルティング、マーケティングコンサルティングのビジネスも順調に成長・継続しております。コンサルティングのご相談は、こちらへどうぞ、と。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?