書評「ビジネスの未来〜エコノミーにヒューマニティを取り戻す〜」
どーも、消費財メーカーでデータサイエンティストをやっているウマたん(https://twitter.com/statistics1012)です。
個人活動として、スタビジというサイトやYoutubeチャンネルでデータサイエンスやビジネスについての発信をしています。
この度、山口周さんの新著「ビジネスの未来〜エコノミーにヒューマニティを取り戻す〜」を読みました。
この書籍で言っていることは、端的に言うと「資本主義はもう終わった」ということ。
資本主義なんてもうとっくの昔に終焉を迎えているんです。
世界中のほとんどの人が物質的な豊かさを享受できるようになったことにより物質的不足という課題は解消されました。
書籍「ファクトフルネス」でも世界は昔よりも格段に良くなっていることが言及されました。
多くの人が資本主義という妄想にしがみつき、まだまだ経済を成長させないといけないのだ!と奮闘していますが、もう従来のように経済を成長させるフェーズは終わっているのです。
貧困層の課題
ただ、ここで”ほとんどの人”とあえて言っているように一部の貧困層はいまでに物質的価値を享受できていません。
「じゃあさらなる経済成長がやはり必要ではないか!!」
そう反論されるかもしれません。
しかしこれ以上経済を成長させてもそのような貧困層の暮らしを物質的に満足させることはできません。
それはなぜか。
資本主義という枠組み・システムがこの世界を覆っているからです。
資本主義は利益を追求して事業を拡大することが目的です。
そのためにはコストに見合ったリターンがないといけません。
今までは物質的不足が至るところに溢れていたためそこに物質を提供することで多くのリターンが見込めましたが、一部の貧困層にわざわざ物質を提供してリターンが見込めるでしょうか?
そうこれが資本主義が抱える壁なのです。
著者の山口さんはこの資本主義に壁に警鐘を鳴らしています。
多くの人が豊かになった世界で一部の人の貧困の問題を認識していながらもその解決に動き出せない背景には資本主義の枠組みで捉えた時に割にあわないからなのです。
つまりこの資本主義というシステムが世界を覆っている限り、これ以上経済を成長させても、本当に解決すべき課題は解決できません。
格差の拡大
「あれ?でも資本主義が終焉を向けているのにも関わらずGAFAと呼ばれる企業などはどんどん成長しているし、経済成長はまだまだ続くんじゃないの??」
GAFAの企業群はすでに資本主義が役割を終えた世界において、決められた資本のパイを奪い取るゲームの強者です。
物質的課題が多く転がっていた世界では、その課題を解決すれば生活が豊かになり資本が生まれさらに多くの課題を解決できる好循環のループが生まれていました。
しかし、すでにほとんどの課題が解決されている領域において無駄なパイの取り合いをするだけです。
例えばFacebookの収益のほとんどは広告です。
ただ広告費の総数は数十年前とそれほど変わっていません。
広告という構造は変わらず、広告を打つ媒体・手段がマス広告からFacebookなどのデジタル広告にシフトしてきただけの話。
全体の資本はなんら増えていないのが現状なのです。
それでは我々はどうすればよいか?
さて、それではそんな社会において資本主義のシステムを変え、本当に重要な課題を解決し、そして世界中の人々が精神的に幸せになる世界を作るためにはどうすればよいでしょうか?
この状況に対して山口さんはいくつかの提言をしています。
それがベーシックインカムの導入。
多くの人が仕事に対してマイナスの感情をいだきながらも、生活費のために仕事をこなしています。
資本主義が終焉を迎えている世界では必要のない無駄な労働を生活費のためになぜかしなくてはいけない。
そんな構造をまずは変えるべきだと言います。
これにより多くの人が自分の欲求に根ざした真の人間を人間たらしめる活動を行うことができるようになるでしょう!
「そうすると皆働かなくなるのでは?」
そうなんです。そうするとお金を得るためだけの労働はみんなしなくなるのです。
お金のために働くという思考から→自分のやりたいことのために働く・活動するに思考が転換するのです。
しかし、ここで問題が生じます。
この資本主義という終焉を迎えたはずの世界を変えられる・ベーシックインカムを導入できる権力を持っているのは、この資本主義の世界での強者なのです。
つまり資本主義という幻想を変える必要はその人達にとって、ないということ。
ではどうすればよいか?
山口さんは若いこれからの時代を担う人たちに対して資本主義をハックしろと言っています。
資本主義の世界をハッキングし、内部に潜み、内部からこの資本主義の構造を壊すというもの。
というわけで、もうその役目を終えている資本主義という世界を一旦ハックして、その上でみんなが幸せな世界をつくりましょう!