
育児放棄の家庭で普通の恋愛はできるのか。
高校2年生の頃、彼女ができた。付き合ってからは高校生のごとくショッピングモールにデートに出かけたり、映画を観たり、順調に進んでいたが、とある日彼女が言った「Kの家に行きたい」と。
■育児放棄の家庭
小学校1年生の頃に両親が離婚してから、母親についていくことになったが、育児放棄のため母親とは約9年という空白の期間がある。紆余曲折あり、高校3年間は母親と暮らすことになったが、うまくいくはずもなく、毎日のように喧嘩をしていた。
そのため、彼女が家に来ることをずっと拒んでいた。けれど彼女と自分の共通の友人も「なんで、だめなの?」「行きたがってるから良いじゃん!」など、1対多数の構図ができた。無知とは怖いものだ。
結果として、家に来ることになった。運命の当日、どきどきしながら彼女を家に招きいれたが、その日は驚くほど何事もなく終わった。彼女と母親が連絡先を交換するほどに円満に…
■嫌がらせの日々
それは、起こるべくして起こった。彼女への嫌がらせである。自分が母親と毎日のように喧嘩をし、その度に母親は彼女へ電話なりメールなりで、別れるよう嫌がらせをするようになった。
「あなたのせいでKがおかしくなった」「Kと別れてください」…
その嫌がらせをきっかけにまた自分と母親が喧嘩をする、それで母親は彼女に嫌がらせをするループにはまった。
彼女としても彼氏の母親に認められたいという思いがあったのだろう。彼女は、こんな環境にありながらも自分のことを好きでいてくれ、我慢して我慢して我慢して何とか高校生活を乗り切った。
高校卒業後、私は家をでて一人暮らしをはじめ、宅浪をするようになった。彼女もこの母親に認められるという目標は達成できないことを察し、ようやく説得に応じ、連絡先を全て拒否してくれた。そのおかげもあって浪人中の1年間は何事もなく、やっと暗闇から抜け出せた気がしていた。
■彼女の家に○○が
大学受験は無事成功し、1年遅れで大学へ進学することとなった。彼女とは遠距離恋愛となったが、平和な日々は続き高校の頃の悪い思い出を忘れようとしていた。
とある日、0時くらいだろうか…夜に彼女から電話が掛かってきた。
「K、大丈夫??」大分慌てた様子で開口一番心配の言葉をかけられた。
どうやら私が刺されたと警察に通報があったらしい。「警察の人に代わるね」と詳しく事情を聞いた。
「先ほど匿名で警察宛てに○○(彼女の苗字)宅の娘さんがKさんを刺したと警察に通報がありました。そのため、○○さん宅に事情聴取に来ているのですが、Kさん大丈夫ですか?今どこにいますか?」
大丈夫も何も…「私は彼女とは別の県におりますが…普通に寝ようとしてましたが…」状況を説明した。そして、電話の相手は警察から彼女の母親に代わった。
「こんな夜中にごめんね。誰かの嫌がらせがあったみたいで…」
これまで、彼女の意向もあり、母親から嫌がらせがあったことは家族には内緒にしていた。しかし、とうとう相手方の家族まで巻き込んでしまった。これは言うしかないとこれまでの経緯と通報した犯人に心当たりがある旨の説明をした。彼女の母親は、言葉をはさむことなく、最後に一言放った。
「今後付き合い方を改めさせてもらいます」
そりゃそうだ。可愛い娘が傷つく姿を見たい親がいるはずもない。できるならば普通に恋愛をして結婚をして、幸せな家庭を築いてもらいたいと思うのは当然のことだ。わざわざ茨の道へ進むような恋愛はしてほしくない。
■炎はさらに広範囲へ
深夜の警察訪問について、謝罪をしに彼女の実家へ行ったところ、かなり気を遣ってくれたことを覚えている。
しばらく経ったある日、また事件は起きた。夜中、彼女の父方の伯父?祖父?の家に娘と彼氏を別れさせろという電話があったらしい。どうやら番号案内(104番)を使ったようだ。
番号案内(104番)
お名前とご住所からお問い合わせの電話番号をご案内するサービス
住所と名前を言ったところ、彼女の実家ではなく父方の伯父/祖父の家がヒットしてしまったのだ。
再び謝罪に行った。しかし、何も話せなかった。言葉が出てこなかった。普通であれば、「お忙しいところお時間をいただきありがとうございます。この度は~」と切り出し、誠心誠意謝るべきだった。その当たり前ができず、沈黙はかなり長く続いた。何も言わない自分に相当腹立たしさを覚えていたと思う。なんて常識のない人間なんだと…
■おわりに
あの時うまく話せなかった謝れなかったことを今でも後悔している。気を遣ってくれた時も、うまく笑えなかった馴染めなかった。大人との付き合い方が全く分からなかった。
友達の家に行き、親と仲良く話している姿、親と一緒にご飯を食べる姿、それらすべてが自分にはなかったもので、そういった場面に遭遇した時にどうすれば良いか分からなかった。
常識がなかったというのはただの言い訳であることは分かっている。社会人になり、はや3年…ビジネスマナーなるものも多分身に付き、世の渡り方を覚え、振り返ると改めて常識がない失礼な人間だったと思う。
既に当時の彼女とは関係がないが、いつかこの気持ちを伝えられる日が来るだろうか。いまさら謝りに来られても迷惑か…
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