氷うさぎ

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「日本人なのに日本のことを知らなくて恥ずかしい」について

「日本人なのに日本のことを知らなくて恥ずかしい」 海外経験からそのように感じ、日本の歴史・文化を学ぶ人は多いと思う。   しかし、いくつか疑問が湧く。 文化学習に対する疑問まず文化であるが、例えば着物や和歌や茶の湯をなぜ「日本のもの」と思えているのかということ。 日本人口のうち、それらを嗜む人の割合はものすごく小さいはずだ。 ならば「日本のもの」というより「好事家のもの」と捉えたほうが実情に合っているのではないか。 もう少し正確に言うと「旧時代の上流階級文化」であろう。それ

    • 記事から 移民教育、指示権 2024年5月15日

      原発事故の賠償金のような構造にも見える。 原発が低コストなのは、低額の賠償金を受忍させる限りにおいてだ。ちゃんと支払えば高コストになる。 同様に、移民労働力が低コストなのは、その家族までを含めたケアの提供を怠る限りでだろう。必要なケアをちゃんと提供すれば高コストになる。 国がケアを怠れば、自治体がケアの負担を被る。 もし自治体もケアを怠れば、移民とその家族が負担を被る(日本語ができないことが、就職の選択肢など、生き方を狭める)。 彼らが負担を被れば、社会が負担を被る(移民た

      • 記事から 日本語教育、薬剤師、スポーツ指導、鉄道民営化 2024年5月13日

        「外国にルーツがあり、母国語も日本語も十分に使えない「ダブルリミテッド」と呼ばれる状態の子どもたちがいる。」 「自動車関連工場の多い同市で暮らす外国人の数は当時から増加傾向にあり、来日した子どもたちが授業についていけず、次第に学ぶ意欲を失ってしまうケースも耳にしていた。」 移民で低賃金労働を補填することでその産業を存続させた(短期的利益)。 しかしその子どもたちが日本語を修得できなければ、彼らをケアしなければならないのは結局は日本社会なのだ(長期的損失)。 それを防ぐには、

        • 記事から ガザと世界秩序の再構築 2024年4月29日

           アメリカとイスラエルが自らの思想を固持する根底には、自然法的な感覚があるのかもしれない、などと思った。  人は、自分が虐殺を犯したのではないかという反芻に耐えられるようにはできていない。だから、虐殺を行えば行うほど、自分の為したことは自然法に則っていることなのだと思い込む必要がでてくる。そして、その行為が自然法に則っているとすれば、虐殺は虐殺ではなく正当な防衛であると認識することができる。この、心理的な安全性を確保するためのプラクティカルな要請に応えているのが、「欧米諸国

          自己啓発 vs 社会科学

          自己啓発本では社会的・環境的制約について具体的に書かれていることは少ないと思う。 あくまで自分のパワーアップに焦点があてられており、選択肢が増える未来を思い描くことができる。 だから読後感もよい。 対して、社会科学や社会的話題を扱った本というのは、金銭面でもキャリア面でも生活面でも様々な制約があることを人々に直視させる。 この分野自体にそういう意図はなくとも、読者としては選択肢のない暗い未来を見せつけられる気持ちになることもあるだろう。 また、直接自分に関係がなくとも、暗い

          自己啓発 vs 社会科学

          記事から 人材獲得競争の原理 2024年4月22日

          人材獲得競争は、組織間の制度を平準化する作用を持つ。 弱い組織は強い組織の制度に近づく努力をする。そうしなければ、応募者を振り向かせることができないからだ。   例えば明治時代の場合は、民間が役所の制度に近づこうと努力した。 職務によらない官等給、新卒一括採用、学校成績主義、数年ごとの異動による昇進昇級という年功賃金制、総合的人物評価、定年制、退職金制度。 これらは元は公務セクター(官庁・軍)の制度だ。 採用力に劣る民間企業は、官庁と遜色ない職場であることを応募者に示す必要が

          記事から 人材獲得競争の原理 2024年4月22日

          記事から 高卒採用の地理的変動、納得の技法、政党支持意識の再編成 2024年4月19日

          愛知県の企業は人材を欲している。今までそれに応えてきたのは九州の高校だった。しかし、工場誘致が盛んになってきた九州では地元就職が増加し、愛知への就職が減少。そこで、現在愛知県の企業が熱心にPRするのは岐阜県の高校だ。そのため、岐阜の高卒者が愛知で就職する割合が増え、岐阜県内での就職が減少しているという。 地域産業の変化と人手不足によって、採用活動の地理的変動が引き起こされているようだ。 「地元の人たちと接しながら、コレラに対する偏見を解いていこうと決めました。コミュニティの

          記事から 高卒採用の地理的変動、納得の技法、政党支持意識の再編成 2024年4月19日

          モネ展と美術鑑賞法 ―思考のトレース―

          『木に学べ』(西岡常一、小学館文庫552)という本がある。 西岡常一は法隆寺の棟梁。1995年に亡くなられている。 モネ展(中之島美術館)に行ったあと、この本をパラパラと読みなおした。 ちょっと美術鑑賞の参考になるかもしれないと思ったので、その一節を次に引用する。 「おまえはな、稲を作りながら、稲とではなく本と話し合いしてたんや。農民のおっさんは本とは一切話はしてないけれど、稲と話し合いしてたんや。農民でも大工でも同じことで、大工は木と話し合いができねば、大工ではない。農

          モネ展と美術鑑賞法 ―思考のトレース―

          記事から 国境、ドクさん、マルラオイル 2024年4月15日

          国境なき医師団が直面しているのは、国境だった。 国家安全条例によって外国勢力の干渉を禁じる香港と難民忌避のイタリア。異なる政体でありながら、「国境なき」を掲げる団体への対応が等しく排斥であること。そのことが、国境というものの性質の一端を示しているように思われる。 「ベトナム戦争で使用された枯葉剤の影響で1981年に結合双生児として生まれ、88年に分離手術に成功した」が、その後も後遺症に苦しめられ、入退院を繰り返し、「闘病中の義母を自宅介護」しながら「一家の唯一の稼ぎ手として

          記事から 国境、ドクさん、マルラオイル 2024年4月15日

          記事から 生成AI、ミャンマー、インターンシップ 2024年4月12日

          生成AIは、「従来必要とされていたカメラマン、モデル、ヘアメイク、デザイナーの手配や、スタジオやロケ地での撮影が不要となり、大幅なコストダウンやリソースの削減を実現する」。 人間とロケ地の大量生産。これによる人件費削減は企業にとっては大きなメリットだろう。 政変の経済的リスクの一例。 「人口が約5600万で、平均年齢も20代後半と若者が多いミャンマーは将来情勢が安定化すれば、ビジネスの拡大が見込める」というが、現在の軍政による混乱をとっても、1962年以来の軍政の伝統をとっ

          記事から 生成AI、ミャンマー、インターンシップ 2024年4月12日

          記事から 服、留学、メキシコ、中国、スリランカ、オーストラリア 2024年4月11日

          ファストファッションの定義と問題点。 フランス人のアイデンティティとしてスロー的なものが根付いていることの現れがこの法案なのかとも思ったが、「ファストファッションブランドに急速に市場を奪われ」るぐらいには国民に受け入れられているわけだ。このことをアイデンティティ・クライシスとして受け止める層がこの法案の支持者なのであろうか。 「「(日本の)病院によっては、1年間で休みが5日だけで、毎日深夜11時12時まで働くような環境なので、自分はとても働けないなと……。労働者の権利が重視

          記事から 服、留学、メキシコ、中国、スリランカ、オーストラリア 2024年4月11日