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エフェクチュエーション ~エフェクチュアルな起業とは。ケーススタディから学ぶ
最近エフェクチュエーション(※1)にとても興味がある。ずいぶん昔からこの感覚は自分の中になんとなくあった。
会社に入ってこの考え方はあまり論理的ではないと、当時は思い込んでいた。やはりコーゼーション(※1)の方が論理的で経営陣にはフィットするような思いがあった。この考えで数十年間サラリーウーマンをすごしてきた。
2008年にバージニア大学ビジネススクールのサラス・サラスバシー教授がエフェクチュエーションを提唱した。
あー、この考え方でよかったんだ。これで進めてもいいんだ。
この考え方を知って「あー、この考え方でよかったんだ。これで進めてもいいんだ。」と思えるようになれたのだ。
エフェクチュエーションとは、成功を収めてきた起業家に見られる、従来とは異なる思考プロセスや行動のパターンを体系化した意思決定理論のことである。
スッキリしてきた。
もっと内容を深めたい。
理解を深めたい。
ケーススタディを考えたい。
そんな気にどんどんなってきている。
偶然見つけた立命館アジア太平洋大学(APU)と大阪公立大学共同、英語で講義「エフェクチュエーション ~エフェクチュアルな起業ケーススタディから学ぶ」
チラシの講義を受けた。講義は全て英語だ。一部日本語訳もしてくれた。
実際の起業家の例を使い、ご本人も出席して、学生からの質疑応答に応えるという画期的な講義だった。
ケースを簡略説明
この実業家は初めは音楽の専門家で、ビジネスも音楽を中心に B to Bで起業していた。しかし突然COVID19コロナ下になり、売り上げは大幅に低下。事業転換を図らざるをえなかった。
どうしようか悩みぬいた後、イタリアなどの海外経験が豊富で、調理人の妹夫婦が帰国することも重なったことにより、本場イタリアの生パスタレストランを始めようと思いつく。資金繰りは苦労の末、コロナ下の補助金制度を利用したり、イタリアでは当たり前のレストランの中に生パスタを作る多額の大型機械を購入し、導入するなど、全く初めての新規参入のレッドオーシャンの中で、再スタートを切ることになる。
周りの反対を受けるなか、至って本人は自信があり、成功すると信じている。動じない。
コロナ収束後、結果的に現在では、沢山のインバウンドが押し寄せる中、特にイタリア人がこの店を何日も連続で利用するなど、Google map pointも4.8であり、大繁盛している。
この実業家は、これはエフェクチュエーションだと意識していたことは毛頭ない。研究している教授からすると、まさにこの事業はエフェクチュエーションそのものだと気づき、授業のケーススタディとして使用したという経緯だ。
印象に残ったポイント
この3点は印象に残った。
1.みんなそれぞれ自分のいろんな経験を持っている。
それをどう生かすのか。それだけなのである。
自分の経験を思い存分に生かそう!
人が例えば外観を模倣したとしても、内容である経緯は模倣できない。
2.成功している事業家は、常に人を巻き込んでいる。
たとえ、自分が全てできるとしても、知ったかぶりをしないで、専門家
や気軽に人へ尋ねながら、ビジネスを進めていることがとても重要な
ポイントだ。
3.「A・S・K」ASKだ。
全てのことを知っている人間は誰一人いない。Askingすることが重要
なのだ。
事例として、コロナ下で売り上げが激減した時デリバリーを考えたが、
手数料が高すぎるのでウーバーイーツは使いたくない。フローズンに
したらいいのだと弁当屋をしている友人が冷凍の仕方を教えてくれた。
すぐにレストランの一部に冷凍マシンを置いた。それが功を奏した。
お金だけではなく人も周りも全て重要な価値である。
助けてくれる仲間がいるということ。大切な要素だ。
エフェクチュエーション
これは、経営だけでなく、人生にも使える理論ではないかと感じている。
エフェクチュエーションについて、もっと学びたい。
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解説 (※1)エフェクチュエーションとコーゼーション
エフェクチュエーションとは、成功を収めてきた起業家に見られる、従来とは異なる思考プロセスや行動のパターンを体系化した意思決定理論のこと。バージニア大学ビジネススクールのサラス・サラスバシー教授が2008年に提唱した。
従来、戦略上の意思決定は、市場環境の大きな変化を想定せず、未来を予測し目標を立ててバックキャスティング的に行われる「コーゼーション」と呼ばれるアプローチが一般的であった。
これに対し、エフェクチュエーションは、未来は予測不能であるという前提のもと、所与の資源や手段を用いて、結果を創り出していくことに重きを置くアプローチである。
短期間で試作品等を製作し市場の反応を見ながら改善を重ねていく「リーンスタートアップ」はエフェクチュエーションを体現化した起業スタイルの1つと言える。
エフェクチュエーションには以下の5つの行動原則があるとされている。
① 「手中の鳥」の原則 (The Bird in Hand Principle)
既に手元にある資源や能力、知識、人脈等を明確化し、それらを使って何ができるかを考える。目的を達成するために新しいアイデアを考えたり新たに能力を開発したりするのではなく、既存の手段から何ができるのかを考えることによってチャンスを切り拓く。既存の手段は、「自分は何者か(Who I am?)」(自身の特徴、選好、能力)「自分は何を知っているか(What I know?)」(自身の教育、専門性、経験)「自分は誰を知っているか(Who I know?)」(自身のネットワーク)の3つのカテゴリーで分類することができるとしている。
② 「許容可能な損失」の原則 (The Affordable Loss Principle)
期待されるリターンを想定して投資するコーゼーション型とは異なり、いくらまでなら損失を出せるのかを決めてコミットする。はじめから大きなリターンを求めて投資するのではなく、損失を想定してスモールスタートで事業を開始することで、失敗から学びながら次の機会を探ることが可能となる
③ 「クレイジーキルト」の原則 (Crazy-Quilt Principle)
クレイジーキルトとは、形や色などの違う布をパズルのように組み合わせて作り上げる一枚の布のことである。従来のように精緻な競合分析を行って競合に勝つことを目指すのではなく、競合も含めた多様なステークホルダー(従業員・取引先・顧客・政府など)と交渉しながらパートナーとして関係性を築き、パートナーの持つ資源を活用して価値を生み出す。
④ 「レモネード」の原則 (Lemonade Principle)
予期せぬ事態に直面した際、避けたり、無理に合わせようとしたりするのではなく、機会ととらえて梃子として活用することで新たなチャンスを作り出していく。「レモンを掴まされたら、レモネードを作れ」(when the life gives you lemons, make lemonade)という諺をもとにしたもので、困難をチャンスと捉えて成功を導く(禍を転じて福となす)ことを意味する。
事例としては以下のものがある。
・スリーエム社「ポスト・イット」
強力な接着剤の開発を行う過程で偶然できた「よくくっつくが剥がれやすい」接着剤を、失敗作として棄てる代わりに利用し、何度も貼り直しができる付箋として製品化。
・浪花屋製菓「柿の種」
あられを製造する際に使用する金型を誤って変形させてしまったが、そのまま使用してできた商品を販売したところ顧客から形が柿の種に似ているとの声があった。これをヒントに、その後商品改良を重ねてロングセラー商品となった。
⑤ 「飛行中のパイロット」の原則 (Pilot-in-the-Plane Principle)
未来は技術の発展や経済動向などの外部要因が決めるものと考え、未来を予測してチャンスを待つことに労力を使うのではなく、未来は自ら創り出すものと捉え、自身がコントロールできることに集中して行動することを指す。
従来の意思決定の考え方では、コーゼーション的アプローチを用い、未来を予測した上で目標を定め、計画を策定して事業を行うことが一般的であった。
しかし、短期間に環境が大きく変化する昨今では、未来は予測不可能と捉え、すでにある手段を用いて自ら未来を創り出すエフェクチュエーション的アプローチは、起業家だけでなくさまざまな事業で必要な思考として注目されている。
参考図書
世界的経営学者が発見!
戦略や計画よりも重要で、成功に直結する思考法
「手中の鳥」の原則
「許容可能な損失」の原則
「レモネード」の原則
「クレイジーキルト」の原則
「飛行機のパイロット」の原則
を習得できる、日本初の入門書が登場!
【エフェクチュエーションとは】
エフェクチュエーションを発見し、提唱したのは、現在米国のヴァージニア大学ダーデンスクールでアントレプレナーシップの教授を務めるサラス・サラスバシーという経営学者です。
彼女は、カーネギーメロン大学の博士課程在学中に、熟達した起業家たちに対する意思決定実験を行いました。そこで発見されたのは、起業家たちの意思決定における明確なパターンの存在でした。
その論理は5つの特徴的なヒューリスティクス(経験則)に落とし込まれ、
総体として「エフェクチュエーション」(Effectuation)と名付けられました。
2001年に、経営学分野で最高峰の学術雑誌『アカデミー・オブ・マネジメントレビュー』で最初の論文が発表されて以来、エフェクチュエーションは、
アントレプレナーシップや価値創造に関わる分野を中心に、幅広い領域に大きなインパクトを与えています。
【エフェクチュエーションの特徴】
・「目的」ではなく、手持ちの「手段」から生み出せる効果(effect)を重視する
・「予測」ではなく「コントロール」によって対処する
・予測や計画を重視するコーゼーション(因果論)が通用しない、不確実な状況でも有効
・特別な天才の思考法ではなく、どんな人でも学習して身につけられる!