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「ソウル動物映画祭」(SAFF)でプレゼンターを務めた話①

先日、おこがましくも韓国で開催されていた「ソウル動物映画祭」(SAFF)にてプレゼンターを務めさせていただいたので、その際のレポートを書き記してみようと思います。

上映へ至る過程は、こちらから。

また、ぱくぽ☆いしなかこと岡本和樹監督が、「たぴにつき」というシリーズで書いてくれているので、そちらをお読みいただくと、より多角的に楽しめるのではないかと思います。

さて、「ソウル動物映画祭」は、オフラインとオンラインで開催される韓国を代表する動物映画の祭典です。
会場では、プラスチックやビニール素材を避け、包装も最小限に抑えているということだったので、私達もマイ・タンブラーを持参して参加しました。

当日、私の通訳を担当してくださるフェミニスト兼映画研究者の황미요조(ミヨジョ・ファン)さんと打ち合わせをすべく、上映30分ほど前にメガボックス弘大2に到着。しかしプログラムマネージャーの황연정(ジュン・ファン)さん曰く、彼女は多忙につき、10分しか時間が取れないとのこと。

確かにイベントスケジュールをみると、メガボックス弘大1、メガボックス弘大2、メガボックス弘大3、計三種の上映館で常に何らかの映画が上映されており、ディスカッションなども断続的に繰り広げられている様子。

ミヨジョさんをロビーで待ちながら、私は公式HPやポスターでも登場していたカワセミと魚達の大きな垂れ幕をボーッと仰ぎ見ておりました。

산책 가자(ユン・イェジ)さんによるカワセミと魚達がお出迎え。

このメイン・モチーフは、館内の至る所に変奏されており、売店の上部にあるサイネージなどには、モーション付きの映像も映し出されてました。

イラストレーターであり絵本作家でもある산책 가자(ユン・イェジ)さんのビジュアル・デザインとのことですが、メガボックス弘大という大規模な会場をSAFFのカラーへと変容させ、映画祭のポリシーを視覚的に伝達する効力があったように思います。中継ぎの時間にもお客さんの眼を楽しませることを忘れない主催者の熱量と志に大いに感服いたしました。

サイネージには、アニメーションも。
公式パンフレット。紙は再生紙だろうか。
文字組みが美しく、結構厚みがあります。

レイアウト上の都合に過ぎないとは思いますが、私とローリー・アンダーソンが見開きで紹介されているのも個人的にはツボでした(笑)

まさかのLaurie Anderson and Akari Sōma

また、日本では上映後の打ち上げに時間を残しておくことが多い気がしますが、SAFFでは可能な限り多く映画を上映し、鑑賞を通じて議論を深めるために時間を充てている印象でした。

スタッフの皆さんも忙しそうです。

その後、ミヨジョさんが駆けつけてくださり、軽く打ち合わせをしました。

物腰の柔らかい方ではありましたが、ニューヨークや東京で映画理論や比較文学などを多角的に学ばれた方だけあって、日本語での応答も堪能で、私もリラックスして本番に臨むことができました。

『ねこさがし』上映前のスピーチでは、主に次のようなことを話しました。
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皆さん、こんにちは。
『ねこさがし』を制作した相馬あかりです。

韓国には野良猫はいますか? 日本にはたくさんいます。
しかし、この映画を撮った2021年頃、私の近所には野良猫が一匹もいませんでした。

嘘のようですが、本当の話です。

それで、これは何か変だと思って、私と妻は街に猫を探しにでかけることにしたのです。二人とも猫が大好きだったので。

当時はコロナウイルスが大流行していた時期でもあり、人を集めて映画を撮ることも、映画館に行って映画を観ることもできませんでした。

そういう中で、ほんの気晴らしのつもりで撮った映画でもあります。
映画を見て、一緒に猫を探してみてください。

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プログラムマネージャーの황연정(ジュン・ファン)さん、映画研究者の황미요조(ミヨジョ・ファン)さんと会場で記念撮影。

舞台挨拶は無事終わり、いよいよ映画が始まります。

カメラは、デビュー当時から使っている友人のおさがりの古いカメラなので、大きなスクリーンでは画質が持つだろうかと岡本さんも私も気が気でなかったのですが、不思議とまったく気になりませんでした。

あっという間に上映が終わり、後方からパラパラと拍手が聞こえます。(実はワールドプレミア)

安堵も束の間、閉会式では、より多くの観衆の前で、より多くの言葉を費やさねばなりません。
ジュンさんやミヨジョさんという心強い味方がいるとはいえ、まだまだ緊張は続きそうでした。

しかし、僅かですが収穫もありました。

それは、『ねこさがし』と同時上映だったTodd Bieber監督の『American Cats: The Good, the Bad, and the Cuddlyが観れたことです。

内容は、猫の爪の手術を巡って医療業界の腐敗を明らかにするという、サムネイルの印象とは裏腹の硬派なドキュメントなのですが、映像を観ながら私が感じていたのは、それが殆ど破綻のないプロフェッショナルの映画だということでした。

そして、このようなクオリティが担保されているならば、閉会式での私の発言にも一抹の説得力が生まれるはずだと、淡い期待を抱くようでもあったのでした。

(続く)


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