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『グイード・ディ・ピエトロ氏への追慕』【自由詩】

本作品は 2017年にシンガポールのチャンギ国際空港で出会った
イタリアの流浪詩人グイード・ディ・ピエトロ(Guido di Pietro)氏の
自由詩に幾つかの映像素材を組み合わせたものである。
音楽は アグスティン・ピオ・バリオス(Agustín Pío Barrios)の
ワルツ第3番。
バリオスは ニツガ・マンゴレ(Nitsuga Mangoré)の偽名を使って
舞台に上がったり 友人に自作の詩を書き与えていたことで有名だが
もしピエトロ氏の名前が フラ・アンジェリコ(Fra'Angelico)の本名から
とった偽名であるならば 同種の芸術家といっても差支えないだろう。
彼は今 何処で何をしているのだろう?
入国制限が常態化した世界でも あの美しい銀髪を風に靡かせながら
やはり誰かのために詩を書いているだろうか?

グイード・ディ・ピエトロ氏への追慕

鍵と持ち手のピラミッド
シャッターが記憶を下ろす

レンズは初夏を閉じ込めた


とびだし

家と家の狭間に咲いた不協和音

壊れて完成するオブジェの山
プラスチック・ボールが咲き乱れてとびだす

泳がなくなった恋人

何処か遠く
ぼくの知らない場所へ

再び 車両にシャッターが下り 人間を捕まえて沈黙を深める

角が折れ  入口と出口がつながる


電気カマキリの巣

思い出と夢を紡ぐ磔刑像

青海波の凹凸が監視する道
壁は雨の影を刻印して永遠に乾かない


とびだしたあとの景色を含む標識

鍵は見つからず 新規の殺生石が鋭利な居場所を見つける

銀色のボタンをかけ間違えて 錆が悲鳴を上げる

分裂の強調

二股の表皮

木の機械は留まり 濁り その都度過ちを冒す

ぶら下がる解釈


空白の模倣



竹は水滴を絞り出し 風に奏でられる

風が笑い 風が苛立ちを覚える


無音の庭から向う側を想像するが 沈黙が邪魔する

シャッターの裏で


生贄達が友愛を語る
生贄達が夕暮れを学ぶ


緑色の蛸が黄色い爪を曝け出して踊る

空に群がる緑の血


ビニルからのとびだし

大地からのとびだし

Ricordo di Guido Di Pietro


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