十二月のてんとう虫
十二月としては暖かな第一週の中日のことだった
車のトランクに父のための荷物を詰めようとして
バックドアに手をかけたら、一匹のてんとう虫が止まっていた。
夏が異様に長く、やってきた秋日の陽ざしも強かった
そんな気候のせいもあって、生きてこられたのだろうか
目の前の一匹の虫は私の気配に気づいたらしく、動き出す
誰かに教えたくなって
スマホのカメラを服のポケットから取ろうとしたら
翔んでいってしまった
今週末は寒気団が下りてくるらしい
寒さを凌いで生き残ってほしいと蒼天を見た
すでに姿もなくどの方向へ行ったのかもわからない
今週末、父は施設を移る
その腹を満腹にしているのは
暖かな日々よりも大切な人を亡くした寂しさや悔いなのだ
時間さえも薬にはならないと近年気づいた
冷たい真実だが、たまになでると気持ちがいいときもある
少しの移動時間でも寒くならないように
マフラーと手袋も用意しなきゃと思った。