チムニーと女の子.31 濃藍の星ヶ丘
...... 濃藍の街の空
いつの間にか すっかり 陽が落ちてしまい
空は 濃く.... 深い藍色の ……。
夜が やって来ました。
女の子は 街を見渡せる 丘の上に いました。
こんなに美しい 星空が 見えるなんて....
知らなかったわ。
おじいさん が 教えてくれた通り。
ブルブルッと、少し肩を震わせて...
肩に掛けた ストールを 胸の前で 合わせなおして....
そして、すっかり 冷たくなってしまった
右手には 本が 一冊。
これ、この本
あのブックストアのおじいさんが、お隣 の マダムに 渡してほしいって....
( 頼まれちゃったの。)
今日は、もうすっかり遅くなってしまったから、
明日、渡しに行こうかな......。
そろそろ、
立ち上がって 帰ろうと、
お家に帰ろうとしたその時、
「 ニャー.... 」
猫の鳴き声が したような 気がしました。
気のせいかしら ...
いや、でも確か こっちの方で 聞こえたような気が...
「 ニャー... 」
「 シャーッ!! .... フーッ!!.... 」
ガサガサッ ・・・
「 フーッ!! 」
女の子はとっさに
『 ワッ!! コラッ、喧嘩しちゃ 駄目じゃない! 』
『 ヤメなさいってば!! 』
視線の先には、厳つい大きなノラ猫
女の子の声に少しだけビックリした 様子で 動きを止めて
こちらを 見ています。 鋭い視線で...
女の子は 急いで 自分の肩にかけていたバッグをゴソゴソと…。
バッグの中に入っていた
明日の朝食用の クロワッサンを ちぎって
その大きなノラ猫の近くに そっと置きました。
ノラ猫は そのクロワッサンのカケラに 向かうと サッと口に咥えて
素早く茂みの方へと去っていきました。
( このパンしかなかったの... ごめんね。)
猫は あまり パンは 好まないけれど、よほど空腹だったのでしょう。
「 nya .... nya .... ...... 」
そこに 残された 小さな猫が 一匹......。
ねえ、猫ちゃん 見て。
顔を上げて。
空が、綺麗よ。
こんなに 星空で明るく
この夜が
美しい なんて
私、知らなかったわ……。
つづく....