歪曲されたアムステルダムの暴動に見る「反ユダヤ主義」の烙印とニューナショナリズム
11月7日夜(現地時間)にオランダのアムステルダムで、イスラエルのサッカーチームのファンが暴行を受けた事件がありました。
アムステルダムでイスラエルのサッカーファン襲撃-5人搬送62人逮捕 - Bloomberg
X(旧Twitter)で第一報を見た時、嫌な予感がありましたが、あれよあれよという間に『ポグロム』や『水晶の夜』という文字が強調されていてメディアが報道し始めました。
ちょうど1938年11月9日夜から10日未明にかけて反ユダヤ主義の暴動が起き、それは「水晶の夜」と呼ばれています。
「水晶の夜」は、破壊された店舗のガラスが月明かりに照らされて水晶のようにきらめいていたことに由来する悲しい名前です。
この事件の発端は、ポーランド系ユダヤ人青年によるドイツ大使館員暗殺テロ事件でした。ナチス政府による官製暴動の疑惑もあります。
現在は、「水晶の夜」は誇張やプロパガンダに利用されたという意見があり、また事件当時は、ほとんどのユダヤ人は事件の影響を受けていなかったと指摘されています。
メディアの対応と情報操作
毎度ながらメディアは嘘つきで(スポンサーがいるから仕方ないけれども)、今回はイギリスのディリーメールオンライン(例えると日本の「日刊ゲンダイ」みたいなメディア)だけが事実を書いていました。
イスラエルのサポーターの傍若無人な態度が、地元の人を怒らせたことはXを見なければわからなかったと思います。
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ヤフー始め日本のメディアの記事は、オンラインの保存期間が短いので記事内容を要約しますと・・・
「反ユダヤ」は暴発寸前だった...アムステルダム、サッカーファン襲撃事件の背後で起きていたこと|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
気持ち悪いのは、多くの主要メディアがアムステルダムの事件を「反ユダヤ」「反ユダヤ主義による暴動」としているところ。
イスラエルのネタニヤフ首相やその側近が、何かにつけて「反ユダヤ主義」を持ち出し、イスラエル批判を口封じしようとしているのをすぐに思い起こさせました。
私は「これはイスラエル・サポーターが悪いんだな」とわかりました。
そして「ひょっとしてこれは計画されたものかも」とすぐに思いました。つまり、「アムステルダムは売られたのではないか」と言うことです。
ヨーロッパではムスリムが増えたため、「反アラブ」のほうが現在は強くなっていると思うんですよね。
それに歴史的にもアムステルダムは、ユダヤ人によって栄えた街のはずです。(オランダ東インド会社)
オランダのユダヤ人のほぼ4分の3がアムステルダムに住んでいるそうです。
一般人のXポストからわかったこと
試合に先立って、イスラエルのマッカビ・テルアビブのファンが、アムステルダムのアパートの窓に掲揚されていたパレスチナの旗を引き裂いたり、「アラブ人に死を」などの反アラブのチャントをしている様子が撮影されていました。
窓を割られたり、旗に火をつけたりもしていました。
下の動画は試合当日の昼間の様子で、地元の人が警察に捕まっています。
スタジアムでは試合の前に、2024年のスペイン・バレンシア洪水の犠牲者のために1分間の黙祷が捧げられましたが、スペイン政府がネタニヤフに批判的であることから、マッカビファンがチャントとホイッスルを鳴らして妨害しました。
またアムステルダム中央駅で「ガザには子供たちが残されていないため、学校はもうありません。」(子どもは死んでしまったのだという意味)と歌っている様子も撮影されていました。
こちらは試合後の乱闘の様子。
実は前日に攻撃されたタクシー運転手はモロッコ人で(彼は負傷したのかわりませんでしたが)、その仕返しに同じアラブ系移民の数百人のタクシー運転手たちが、マッカビのサポーターを取り囲み、暴行した様子が映っているビデオもありました。
この少年のビデオには黒づくめのグループが映っていて、「サポーターの中に雇われ集団が混じっているなぁ」と思っていたら、黒いパーカーが配布されていたそうです。
たまたまビデオを撮っていた人は、誰がパーカーを配布したのかまではわからなかったそうですが、段ボールに「カリバン 」というメーカー名が書いてあったそうです。
Wikipediaには2024年11月アムステルダム同時多発テロ事件 - Wikipediaというタイトルで詳細が記録されています。
あれはテロになるのかなぁ。Wikipediaもかなりイスラエル寄りですよね。
アムステルダムでは、イスラエルが被害者を演じてヨーロッパを脅迫した
アムステルダムでパレスチナ支持集会、デモ禁止令違反で50人拘束 | ロイター
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政治家の反応とイスラエルの影
驚いたのはすぐにオランダ政府から「ユダヤ人狩り」という言葉が発せられたことです。まだ検証もしていないうちに。
その発言をしたのは、反イスラーム主義者で親イスラエル派のヘルト・ウィルダース(Geert Wilders)議員。
はじめヘルト・ウィルダースって誰やねんと思ったのですが、写真を見て「あ~、この人、よく見るわ」と思い出しました。
この人は40回以上もイスラエルに旅行していて「ネタニヤフの使い走り」と揶揄されています。
さらに「我々の街頭でマッカビ・テルアビブのサポーターを襲撃した多文化主義のクズどもを逮捕し、国外追放せよ」とウィルダース氏は書いています。
ここで私の「これはやっぱり変だぞ」アンテナが働きました(苦笑)
政治家は、「反ユダヤ主義」を利用しているなと。
この件ではトランプ氏のコメントは出ていませんが、大統領選挙でトランプ氏が勝利したのも影響していると思います。
アメリカ大統領のコメント
オランダで反ユダヤ主義が増加?
オランダ極右党首、イスラエル外相と会談へ サッカー試合襲撃受け | ロイター
このオランダの極右党首というのは上述のヘルト・ウィルダース氏です。
キドン・サール氏は外相に就任したばかり。
ギドン・サール(Gideon Sa'ar、1966年12月9日 - )は、「新しい希望(ニューホープ)」の党首。
以前はネタニヤフ首相と同じリクードに所属していました。教育大臣、内務大臣を務めた経験を持ち、弁護士資格を有しているそうです。
イスラエル、ガラント国防相を解任 ガザ停戦の実現はより困難に [イスラエル・パレスチナ問題]:朝日新聞デジタル(11月6日の記事)
オランダの首相スホーフ氏の発言
オランダのスホーフ首相は「オランダにおける反ユダヤ主義の増加の兆候だ」と改めて懸念を表明したそうです(11月9日)。
私は「この人、胡散臭い」と第一印象で思っているんですよ。
前首相で現NATO事務総長のマーク・ルッテ氏も胡散臭いです(苦笑)
スホーフ氏は、2010年から2013年まで司法安全保障省の局長を務めていました。2013年からは安全保障とテロ対策(NCTV)の全国調整官でした。
いわゆる諜報機関です。
事件直後のスホーフ首相のコメント
1週間後のスホーフ首相のコメント
イスラエルの反応
ベンヤミン・ネタニヤフ首相
「アムステルダムで起きた国民への襲撃の残酷な映像は見過ごされることはない」「オランダ政府と治安部隊に対し、暴徒に対して強力かつ迅速な行動を取り、国民の安全を確保するよう要求する」
イスラエルの国連特使ダニー・ダノン氏
「オランダの路上で、イスラエル人とユダヤ人に対する極度の暴力行為について非常に憂慮すべき報告を受けている。2024年のヨーロッパでは現在ポグロム(ユダヤ人虐殺)が起こっている」
イスラエルの前首相ナフタリ・ベネット氏
「アムステルダムで計画され組織されたポグロムのようだ」
アムステルダム市長の後悔
アヤックス-マッカビ:アムステルダム市長はイスラエルに利用されたことを後悔している(11月20日付け記事)
アムステルダムの女性市長ハルセマ氏は、11月8日の事件を『ポグロム』と呼んだことを撤回し、政治プロパガンダに利用されたとテレビのインタビューで語りました。
ハルセマ氏は、「国際的な圧力があまりにも大きかったので、マッカビのファンについての事実を知らずに、私は説明をしなければならなかった」と語り、多くのヨーロッパの選出議員たちと同様に(警察の報告を待たずに)非難を繰り返していたと述べました。
ハルセマ氏が最初の発言を撤回したのは、イスラエル政府とオランダの政治家がオランダのイスラム教徒を差別するための「プロパガンダ」として、『ポグロム』用語を使用しているからなのです。
オランダ政府は、アムステルダムのアラブ系の住民(とくにモロッコ出身)の市民権を剥奪しようと動きを始めたため、ハルマセ氏は「私はそんなつもりじゃなかった」と言っているんです。
ハルセマ氏の発言撤回に対し、イスラエル外相キドン・サール氏は「市長の言葉は全く受け入れられない」と述べ、さらに「『ポグロム』という用語は、イスラエルが言い出したのではない。事件の深刻さと反ユダヤ主義的な性質を認識していたオランダの政治家によって利用されました」とコメントしました。
「そっち(オランダ)が先に言ったんじゃないか。こっちのせいにすんな」ということですね。
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オランダ政府「反ユダヤ主義計画」
スクーフの反ユダヤ主義計画は、どの程度実現可能だろうか?- Jonet.nl
22日スホーフ首相は記者会見で、この戦略は「保護と対処」、「予防と意識向上」、「記念と祝賀」の3つの柱で構成されていると述べました。
2025年以降、反ユダヤ主義との闘いに年間450万ユーロが配分されることも発表されました。
「反ユダヤ主義対策タスクフォース」が設立され、今後、反イスラエルデモだけでなく、社会のさまざまな状況や場所でのユダヤ人憎悪のレベルを評価する予定です。
他者を差別することも厳しく罰せられるようになり、反ユダヤ主義に対するより重い罰則を達成するために使用したいと考えています。
もし法案が可決されれば、問題の犯罪に対して課せられる最大拘禁刑も反ユダヤ主義の場合には引き上げられることになります。
「反ユダヤ主義のような差別の側面を持つ重大な犯罪」を犯した場合、オランダ国籍を剥奪する可能性も検討されており、2025年の夏には決定するとしています。
有罪判決を受けた反ユダヤ主義者からパスポートを取り上げるという提案は、オランダ国民から批判されています。
政府内で、暴動の背後にモロッコ人コミュニティがいると非難が高まり、モロッコ生まれのノラ・アチャバール財務大臣は、人種差別的な発言を受けて辞任しました。
ICCのネタニヤフ逮捕状の余波
現在、アメリカとドイツ、ハンガリーはネタニヤフ氏を逮捕しないと明言しています。
オランダは、ヴィルダース氏は逮捕を拒否していますが、スホーフ首相は具体的なコメントはしていません。そもそもウィルダース氏には権限はない。
ところがICCがオランダのハーグにあり、オランダの外交官がICCの逮捕状を支持したということで、イスラエルは予定されていたオランダのカスパー・フェルドカンプ外相との会談をキャンセルしました。
フェルドカンプ外相のイスラエル訪問は内密に進められていましたが、オランダ外務省内部のリークによりイスラエルがキャンセルしたことが暴露されたとのこと。
またヴィルダース氏はICCを批判し、「世界は狂ってしまった」とXに投稿し、近くネタニヤフ首相とイスラエルで会談すると発表していました。
このとき日程は伏せられていましたが、同じく情報漏洩されたため、ヴィルダース氏は警察に被害届を出すと騒いでいる昨日今日です。
そしてICCに制裁するというトランプ氏
もともと古くからの友人という関係もある上に、ユダヤロビーからたくさんたくさん選挙資金もらったから戦争犯罪者の味方もしてしまう・・・・MAGAじゃなくMIGAなアメリカ大統領なのでした。
そのほか、オランダに対するイスラエルの反撃は、NGOの平和推進団体「PAX」の活動家であるトーマス・ファン・グール氏が、ハマスと繋がっている人物として告発されているとのこと。
PAXがどんな活動をしているのか日本語の記事がありました。
PAXが最新レポートを発表!「日本の7金融機関が核兵器製造企業に対して約5.5兆円を投融資」 | 反核医師の会 – Don't Bank on the Bomb
イスラエルはオランダにロックオンしたのかも知れません。
でも攻撃するには遠い国。では、どうするか。
アメリカや周辺国を巻き込み、オランダを「反ユダヤ」の国として経済制裁し、国民の不満を高め内戦を起こさせる(CIAのやり方)。
あるいは親イスラエルのハンガリーやNATOがオランダに侵攻する。
カナダ・モントリオールの反NATOデモ
日本では報道されていないようですが、23日の夜、カナダ・モントリオールで暴動がありました。
Xに上がっていた動画(暴動が起きたとき、トルドーはトロントのテーラー・スフィフトのライブで踊っていたという批判付きで)には、親パレスチナと思われるケファを身に着けた数人が、ショーウインドウを打ち壊しているのが映っていました。
暴動の発端がよくわからなかったのですが、スプートニクによるとNATOに反対しているデモが暴徒化したとのこと。
と書いていたら25日になって記事が出て来ました。
カナダで反NATOデモ暴徒化…そのころトルドー首相はテイラー・スウィフトの公演で踊る(産経新聞) - Yahoo!ニュース
このナチス式敬礼をしている女性のことが話題になっており、「反ユダヤグループによる犯行だ」という見方がひろがっています。
(てか、カナダにはナチスが多く移住してるんだけどね)
実際にユダヤ人が襲われた事実はないので、イスラエル政府は何のコメントもしていないようですが、在カナダのイスラエル人たちは恐怖を感じているようです。
最後に*21世紀のレコンキスタ
この人のとらえ方も興味深いと思いました。
私もこの方と同じように考えています。
もしもシオニストがICCの逮捕状がまもなく出されることを知っていて(いや、知っていたでしょう)、アムステルダムで暴動を起こさせたのだとしら・・・
「反ユダヤ主義からユダヤ人を守るためにユダヤ人の国が必要だ」というイスラエル建国の正当性を誇示するためのシオニストの計画という気がしました。
ネタニヤフ氏の逮捕状を支持する人や国は、アメリカとイスラエルから「反ユダヤ主義」のレッテルを貼られるでしょう。
ホロコーストの呪いから逃れたいヨーロッパは、シオニストが憎むイスラームを追放する動きを始めています。
数年で内戦が起きることが予想されますが、その混乱に乗じてアメリカが連合軍を派遣して軍を駐在させ、アメリカとイスラエルがその土地を支配すると私は想像しました。
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私が「21世紀の新しいレコンキスタが始まる」と何度も書いているので、耳タコ(目タコ?)の方もおられるでしょう。
中世のレコンキスタは、キリスト教を広げるためにイスラム教徒を追放(そのために労働力が足りなくなり経済が後退した)しましたが、21世紀の今度は、国民がアラブ系の移民(日本ではイスラム教徒、クルド人)の追放を望んだから、政府はそれを行ったという形になるでしょう。
そのために、もっと移民とのトラブルが激しくなる(激しくさせる)と思います。ドレフュス事件のように民族意識を高める必要があるからです。
現在イギリスでは、イスラームに寛容すぎる政策を取っているスターマー首相と労働党への国民の非難がピークになっており、総選挙を求める声も高まっています。
スターマー首相もガチの親イスラエル派です。
ではなぜ、スターマー氏はイスラエルが憎むイスラームに寛容なのでしょうか。彼は国民を怒らせすために、そうしていると考えたら腑に落ちます。
これらは一種の映画です。お芝居なのです。
トラ氏を始め親イスラエルの政治家たちが描いている結末は、移民のいない平和世界ではなく、「大イスラエル」なのだろうと私は思っています。
結末は変わらないかもしれないし、大逆転が起きるかもしれない。私たちがどんな結末を望んでいるかで変わる気がします。
ポップコーンを食べながら良い結末を想像しましょう。
今日はこのへんで。
最後までお読みくださりありがとうございました。