歴史はまったく同じではないが、しばしば韻を踏む*ネタニヤフの場合
冥王星が水瓶座に向かっている今、山羊座冥王星時代の代表者はミスター・オバマだったのだなぁと複雑な思いで感じ入っております。
ネタニヤフ氏の功績(功罪?)を調べてみると、オバマ大統領時代は動きが少ない気がしました。
オバマ政権(民主党)とネタニヤフの確執
なぜかなぁ?と調べると、オバマ大統領がイラク戦争(2003年3月20日 – 2011年12月15日)を終わらせたことに関係しているようです。
イラク戦争は、ジョージ・W・ブッシュ大統領によって始められましたが、当時ブッシュ政権は「サダム・フセイン体制が大量破壊兵器を保有している」というイラク戦争の正当性を示す内容のプロパガンダを流し、情報操作を行っていました。プレイム事件
かねてよりサダム・フセイン政権と対立していたネタニヤフ氏も故意にそれに乗っかって、ネタニヤフ氏が「イラクは核兵器を開発中である」とアメリカに訴えたことを皮切りに、世論も「イラクは悪」という流れになっていったのです。
イランの核開発疑惑
同時に2002年にイランに対して始まったイランの核開発問題では、(この問題には、原発と石油利権がからんでいるので詳しくは省略しますが、複数のイランの核科学者が暗殺されました)、2006年からイランに対して世界的な経済的制裁が行われました。イランに対する制裁
そもそもイランの核開発計画は、1950年代にドワイト・アイゼンハワー米国大統領(共和党)の時代に「平和のための原子力」計画の一環としてアメリカの援助のもとで始まりました。
副大統領はニクソン氏でした。
「平和のための原子力」は、ソ連が原子力発電所のノウハウを東側諸国に提供し、原発建設を後押し始めたことに対抗するためでした。
これにともない、国際原子力機関 (IAEA)が設立されました。
>>>余談
日本に東海村原子力施設が設立されたのは1956(昭和31)年でした。
『鉄腕アトム』が発表されたのは1952年で、原子爆弾で大虐殺された日本国民にも人気となり、現在のTBSテレビでアニメが放送されたのは1957年からだったそうです。
私も子どもの頃に、お祭りの夜店でアトムのお面を買ってもらった記憶があります。アトムのおかげで、子どもたちは原子力を良いものと認識するようになったと思います。洗脳大成功(苦笑)
>>>>>
「イランと石油にまつわるクーデター」の記事に書いた、モサデク首相を失脚させたアジャックス作戦を命じたのがアイゼンハワー大統領です。
このあと、皇帝モハンムド・レザー(パーレビ国王)は、イラン国内に23基の原発を建設する計画を出しています。
アメリカのイランの核開発計画への関与は、イラン革命(1979年)でモハンマド・レザーが失脚するまで続いていました。
(石油が核開発に重要だと言うことがわかりますね)
ホメイニ政権では、ルーホッラー・ホメイニー師が核開発に反対したため計画は頓挫していましたが、1989年にホメイニー師が亡くなると核開発が再開されたと見られています。
イラン制裁
イランに対する制裁では、イランとも対立していたイスラエルは敵対国との関係を禁止する法案を成立させ、イランとの商取引及び渡航を禁止。
制裁に違反した企業に対して罰金を課しました。
日本は独自制裁は科しませんでしたが、2012年1月にイランへの依存を減らすために「具体的な手段」をとると発表し、2011年に東日本大震災が起こったにもかかわらずイランからの輸入を20%減らしました。
イラン核合意
アメリカは武器販売を禁止し、ほぼ完全なイランとの経済活動の禁止を行っていましたが、オバマ氏はイランとの対話を重視する姿勢を打ち出しました。
2011年にはイスラエルがイランを攻撃するとの懸念が高まり、戦争回避のために2015年7月にイランと核合意を成立させました。
ネタニヤフ首相はイランが秘密裏に核兵器を開発しうるとの懸念や、イランが制裁解除で得た資金が武装集団への支援に充てられるとの認識を示し、合意を強く批判しました。
盟友(名優?)トランプ氏との蜜月
第4次ネタニヤフ内閣では、明確にイスラエル寄りの姿勢を表明したドナルド・トランプ大統領との良好な関係が続きました。
トランプ陣営最大の資金援助者は、ユダヤ人シオニストでラスベガス・サンズの会長シェルドン・アデルソン氏(2021年1月11日没)でした。
今回の大統領選挙では、シェルドン・アデルソン氏の未亡人で医師のミリアム・アデルソンさんが大口の寄付しています。
トランプ氏が大統領になって、アメリカはイランの核合意から離脱しました。
エルサレムをイスラエルの首都とする
2017年に、トランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都として正式に認めると発表しました。
翌2018年にはアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移しました。
これはアメリカの約70年にわたる外交政策の転換でした。
エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認 - Wikipedia
この決定は欧州連合(EU)共通外交・安全保障政策をはじめとする多くの国際機関・国の首相・大統領によって批判されました。
国際社会はエルサレムに対する主権をイスラエルに認めていないので、これまですべての国が大使館をテルアビブに置いていました。
トランプ政権のこの転換により、アメリカとパレスチナの協力関係は崩壊した。
トランプ氏の大使館エルサレム移転、和平のためではなく なぜか - BBCニュース
第5次ネタニヤフ内閣(2019年~)
イスラエル検察当局が、ネタニヤフ氏を背任、賄賂、詐欺の容疑で起訴する方針を発表するなどで劣勢に立たされました。
ネタニヤフの裁判
イスラエル警察は、2016年12月にネタニヤフ氏の捜査を開始していました。
ハリウッドの映画プロデューサーでスパイのアーノン・ミルチャン氏、オーストラリアの投資家ジェームズ・パッカーとの贈収賄、イェディオト・アフロノス新聞の所有者アーノン・モーゼス(ヘブライ語ページ)との背任と贈収賄など。
ベンヤミン・ネタニヤフに対する2020-2021年の抗議行動
ネタニヤフ氏はイスラエルの歴史上、犯罪で起訴された最初の現職首相になりました。
起訴を理由に首相を辞任に追い込む問題は、まだ法廷で審理されておらず、
2023年4月現在、刑事裁判はまだ進行中です。
ネタニアフの窮地を救うトランプ
2019年3月25日トランプ大統領は国際的にシリアの領土と認められているゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めて、政治的窮地に立たされていたネタニヤフ氏を事実上アシストしました。
イスラエルは、1967年の第三次中東戦争において6日間でエジプトからガザ地区とシナイ半島全域を、ヨルダンからヨルダン川西岸を、そしてシリアからゴラン高原を奪取しました。
これが、オイルショックのきっかけになった1973年のヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)に繋がったわけですが、その間も内戦が続いていました。(消耗戦争、ヨルダン内戦)
1973年10月11日、イスラエル軍はゴラン高原北部からシリア領への逆侵攻を開始し、シリアの首都ダマスカスを長距離砲の射程に収められる位置まで進軍したが、「ダマスカスを陥落させるとソ連軍が参戦する」というアメリカの警告で、それ以上の進軍が中止された経緯があります。
シリアとイスラエルは現在もゴラン高原の領有権を争っていますが、イスラエルはゴラン高原にユダヤ人入植地を建設しており、トランプ大統領がゴラン高原のイスラエル主権を認める表明をしたことによって、イスラエルの実効支配が正当化されることになったのです。
ユダヤ人入植地
ガザ地区等撤退
ヨルダン川西岸地区
ヨルダン川西岸地区の入植地におけるイスラエルの法律
ユダヤ・サマリア入植地規制法
ネタニヤフ氏は、汚職事件の起訴を免れるための免責決議を議会に求めていましたが、2020年1月28日にこの申し立てを取り下げました。
これにともない、検察はネタニヤフを収賄や背任などの疑いで即日起訴しました。
2021年イスラエル・パレスチナ危機(ユニティ・インティファーダ)
2020年末から2021年初にかけて、ファイザーから大量のCOVID-19ワクチンの優先的な提供を受け、国内でワクチンの大量接種を進め、ネタニヤフ氏は支持率の浮揚を図りましたが、2021年5月のイスラエル・パレスチナ危機(ユニティ・インティファーダ)の激化でイスラエルの戦争犯罪が疑われ、国際的な抗議活動に発展しました。
イスラエルが「壁の守護者作戦」と呼ぶ、この紛争は2021年5月6日–21日(2週間と1日)の間に起きました。
イスラエルでは13人が殺害され、パレスチナ人は260人殺害されました。
イスラエルは、200人のハマスを殺害したと述べ、ハマス側は80人の戦闘員が殺害されたと述べました。(つまり死亡者の大半がパレスチナ民間人)
パレスチナ人を支持する投稿をしたインスタグラムやツイッターのユーザーらは、投稿が削除されたり、アカウントが停止されたりしました。
中国、ノルウェー、チュニジアは、5月14日に国連安全保障理事会の公開会合を開くよう要請し(米国は反対した)、安全保障理事会は非公開で2回開かれましたが、米国の反対により声明で合意できませんでした。
バイデン大統領はネタニヤフ首相と会談し、「イスラエルの自衛権を強く支持する」と改めて表明しました。
日本は、当時の中山泰秀防衛副大臣が「イスラエルはテロリストから自国を守る権利がある」と発言し、イスラエルへの支持を表明しました。
最終的にエジプト、カタール、国連が仲介したイスラエルとハマス間の停戦協定が2021年5月21日午前2時頃に発効し、11日間の戦闘に終止符を打たれました。
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イスラエルでは、2021年3月23日に執行された総選挙ではリクードが第1党となったものの、議会は6月13日にナフタリ・ベネット新内閣を賛成60、反対59票の僅差で承認しました。
これにより、12年間首相の座にあったネタニヤフ氏は退陣しました。
連立合意により、ベネット氏の任期は2023年9月までで、その後2年間は中道派政党イエシュ・アティドのヤイル・ラピド党首が首相を務める予定でしたが・・・・
2022年12月
イスラエル総選挙、ネタニヤフ元首相が返り咲きへ 極右の支援受け - BBCニュース
ベネット氏は、アメリカから見ればスタンドプレーが多く(ロシアとウクライナの和平交渉役をしようとした)、結局、イスラエルロビーがネタニヤフに政権を戻したということなんでしょうね。
そういえば、バイデン政権になるとき、途中でお爺ちゃんはいなくなる計画があると言われていました。
アメリカでは大統領が亡くなると、副大統領が繰り上がるシステムなので、かまらんが大統領になったら戦争を起こすだろうという話だったのです。
ところがお爺ちゃんは認知症が進んでいると言われつつ、ここまで持ちこたえたのも当初とは別の力が働いたのでしょうかね。
第6次ネタニヤフ内閣(2022年12月29日~)
2022年の選挙後、ネタニヤフ氏は再び首相に就任しました。
ハマスの奇襲攻撃?
2023年10月7日にハマスがガザ地区より2,000発以上のロケット弾を発射したほか、武装組織がイスラエル領内に侵入しました。
2023年のハマスによるイスラエル攻撃 - Wikipedia
レイム音楽祭虐殺事件 - Wikipedia
クファルアザの虐殺 - Wikipedia
べエリの虐殺
攻撃は、ユダヤ教の祝日で安息日であるシムハット・トーラーの日で、同じく奇襲攻撃から始まった第四次中東戦争(ヨム・キプール)開戦50年の翌日である10月7日に行われました。
10月7日の攻撃は世界的に衝撃を与え、多くの国がこの攻撃をテロリズムとして非難しましたが、一部のアラブ諸国とイスラム諸国はイスラエルによるパレスチナ領土占領が攻撃の根本原因であると非難しました。
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ワシントン・ポスト紙は2023年9月の紙面で、イスラエルが「戦争の瀬戸際にある」と表現していました。
9月13日、5人のパレスチナ人が国境で殺害され、9月29日、カタール、国連、エジプトの仲介により、イスラエルとガザ地区のハマス当局者の間で、閉鎖されていた検問所を再開し、緊張を緩和するという合意がなされていました。
ハマスの奇襲は事前にしられていた
戦争はハマスの奇襲によって開始されたとされていますが、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラエル当局は攻撃の1年以上前に詳細な攻撃計画を入手していたと言われています。
この文書には、侵攻前の大規模なロケット攻撃、イスラエルが国境沿いに配備した監視カメラや自動銃を無人機で破壊すること、パラグライダーを含む武装集団によるイスラエル侵攻などの計画が記載されていたと報じられました。
イギリスの有力紙タイムズ紙によると、この文書はイスラエル軍と諜報指導部の間で広く回覧され、指導部はこの計画をハマスの能力を超えているとしておおむね却下したそうです。
エジプトからもハマスの動きについてイスラエルに忠告があったのを、ネタニヤフ政権は故意に無視していました。
攻撃の数日前、エジプトはイスラエルに対して「事態の爆発(我慢の限界を超える)が近づいている、それも非常に近いうちに、そしてそれは大きなものになるだろう」と警告しました。
イスラエルはそのような警告を受けたことを否定しましたが、エジプトの主張は、攻撃の3日前に警告がなされたとするアメリカ合衆国下院外交委員会の委員長マイケル・マッコール氏によって裏付けられました。
ハンニバル指令
2023年パレスチナ・イスラエル戦争
2023年のイスラエル・ハマス戦争の死傷者数
Friendly fire during the Israel–Hamas war
2024年7月のハアレツ紙の調査では、イスラエル国防軍が2023年のハマスによるイスラエル攻撃で、2014年のガザ戦争の時のように「ハンニバル指令」を使用するよう命じたことが明らかになりました。
2024年9月、ABCニュースは10月7日にハンニバル指令の使用について報じました。
2024年1月、イスラエルの新聞Yedioth Ahronothの調査は、イスラエル国防軍が10月7日正午からハンニバル指令を実際に適用し、ハマスの戦闘員が人質を連れてガザに戻ろうとする試みを「いかなる犠牲を払っても」停止するよう全戦闘部隊に命じたと結論付けました。
この命令の結果、何人の人質がイスラエル軍によって殺されたかは不明のままです。
Yedioth Ahronothによれば、イスラエル兵はガザに通じる道路でヘリコプター、戦車、UAVに攻撃された約70台の車両を検査し、少なくともいくつかのケースですべての乗員を殺害したと発表しています。
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2023年の戦争に対する批判
2023年の世論調査では、イスラエル人の56%がネタニヤフは戦後辞任しなければならないと考えており、回答者の86%が攻撃につながった治安上の欠陥について国の指導者に責任があると考えていることが示されました。
大臣のアミハイ・エリヤフが「ガザに原爆を使うのも選択肢の一つ」と発言したことや、ネタニヤフが本戦争に対しヘブライ語聖書(申命記25章17節)を引用し、「アマレクがあなたにしたことを思い出さなければならない」と発言したことに批判が集まりました。
アマレクはイスラエルの敵を指すため、実質的に「パレスチナ人を皆殺しにする」ようなニュアンスとなります。
12月29日、南アフリカがイスラエルを、ジェノサイド条約違反の疑いで国際司法裁判所に提訴しました。
南アフリカは、ジェノサイドの意図の証拠の一つとして、このネタニヤフの発言を引証しました。
2023年12月27日、トルコのエルドアン大統領は、イスラエル軍に殺害されたガザ住民は2万人以上に上ると報告したことに触れ、「ネタニヤフは1940年代に数百万人ものユダヤ人を大量虐殺したヒトラーと同じだ」と演説しました。
一方で、イスラエル国内では「アマレク」皆殺しへの支持が強くあります。
後半は有料ですが、ネタニヤフ首相がなぜガザを壊滅させ、イランにまで攻撃の手を伸ばしたのかを書きましたのでよかったらご覧ください。
ネタニヤフ氏に逮捕状(が、逮捕されていません)
2024年5月20日、国際刑事裁判所 (ICC) のカリム・カーン主任検察官は、パレスチナ・イスラエル戦争における状況を踏まえ、ガラント国防相、ハマース幹部のハニーヤ政治局長、軍事部門トップのデイフ、ガザ地区指導者シンワル(2024年10月死亡)と共に、ネタニヤフ氏に逮捕状を請求することが明らかにされました。
https://youtu.be/CtQkRd4xlZQ?si=SwGNhonczLNPEezL
上のURLは、ネタニヤフ氏が米議会で演説したときの日本メディアの報道です。(noteでは、演説の動画が表示されなくなっています)
2024年7月24日、ネタニヤフ氏は米国議会の別の合同会議で演説し、抗議者を「役に立つ愚か者」と呼び、ガザでの全面的勝利を誓いました。
アメリカがイスラエル寄りの理由「ユダヤ人が米社会で極めて大きな存在」立岩陽一郎氏が解説「金融・エンタメ中心にユダヤ資本が大きな力」 | 特集 | MBSニュース
新しいホロコースト
ご存じのように、現在も戦闘は継続中で、ガザ地区の一般市民などを中心に多数の死傷者が出ているほか、ガザでは飢餓と疫病により乳幼児が多く死亡しています。
ロシア・ウクライナ戦争が始まったときに、人生でこんなに死体を見ることはもうないだろうと思うぐらい遺体の写真をSNSで見ましたが、ガザやベイルートで爆死した遺体の状態はもっともっと酷いものでした。
体が半分に引き裂かれて人の形をとどめていなかったり、本当につまめるほどの肉片になってしまった家族の体を、ビニール袋や空き缶に拾い集めなければならないなんて・・・
生き残った者に地獄は続きます。
「神がイスラエルに約束した土地」を得るために、非ユダヤ人に対する虐殺が正当化され、黙認される世界は本当に狂っていると思います。
虐殺を許した私たちも、いつか虐殺される側になるかもしれない。
今日はこのへんで。
最後までお読みくださりありがとうございました。